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第36話四年前~ブリリアントside~


 ユリウス王子が学園に入学されました。


 物理的に距離ができると以前の平穏な日々が戻ってきたかのような心地です。屋敷も皆にも「お元気になられました」と言われる位なのでよほど私とユリウス王子は合わないのだと思いますわ。両親は薄々察してくれているようですが、国王陛下はどうなんでしょうね。時が解決すると思っていそうで怖いですわ。時間がどれだけ経とうと根本的に分かり合えないように思うのは私の考え過ぎなのでしょうか? どうも、あの方と会話のキャッチボールができません。


 そもそも、ユリウス王子は私と歩み寄る気持ちがないのでしょうね。


 



「お待たせいたしました、ブリリアント様。こちらが以前仰っていました美容法のレシピですわ」


「ベリー伯爵夫人、ありがとうございます」


「いいえ、私も儲けさせていただいておりますので、これくらいお安い御用ですわ」


 ベリー伯爵夫人の美貌とスタイルの維持、健康法などは実に参考になります。シャイン公爵家とベリー伯爵家とで共同で化粧品ブランドを立ち上げたのは正解でした。幾ら人気女優とはいえ、貧民街育ちの彼女を直ぐに受け入れる貴族はいませんでした。貴族の中には彼女のファンはいたことは居たのですが、それとこれとは話が別だと言わんばかりの態度でした。もっとも、非難に晒されたのは最初のうちだけ。ベリー伯爵夫人の話し上手で聞き上手な態度と、業界秘伝の美容方法や化粧方法を話題に出せば御夫人方は食いついてきました。特に、若く見える化粧方法などは御年輩の夫人などは目の色を変えていましたわ。こうして、ベリー伯爵夫人は御自分の特技を生かして貴族社会に認めさせていったのです。


「そういえば、例の案件は如何でしたか?」


「はい、夫も大層乗り気です。ブリリアント様には劇作家の才能が御有りだとしきりに感心しておりました」


 私の考えがどうやらベリー伯爵に受け入れられたようです。

 演劇とバレエとオペラが融合した作品。歌って踊って演じて感動を呼ぶという新しい試みを思いついたきっかけは、ベリー伯爵夫人が毎日実践している美容のエクササイズと発声練習からでした。それを聞くと皆さま「何故!?」と不思議がられるのですが、ベリー伯爵夫人のエクササイズは異国のダンスのような不思議な魅力があったのです。なんでも東方諸国の民族舞踊を参考にしているのだとか。リズミカルな発声練習は彼女独自のもので、まるで歌のようにシナリオを読み上げていたので驚きました。


『実は、これは夫からのアイディアなんです。ブリリアント様は御存知でしょうが、私は後宮に来る前まで文字を書く事も読む事もできませんでした。これは女優としては些か不利だったのですが、私は聴覚だけはずば抜けて良かったのが幸いしました。一度聞いた“音”は決して忘れませんでした。夫はそこに目をつけたのです。舞台のシナリオを渡されると決まって夫が私に全て音読をしてくれていまいした。そのお陰で私は舞台に立つ事ができていたんです。普通に口ずさんで覚えるよりも歌って覚えた方がいいと言って。その方が私には覚えやすい上に声の練習にもなるだろうからと言って……』


 ベリー伯爵夫人が恥ずかしそうに語ってくださった内容は惚気に近いものがありました。夫婦と言っても名ばかり。恋愛感情は互いにないとハッキリ宣言なさっているお二人ですが、もっと深いところで繋がっているのだと実感してしまいました。


 ただ演じるだけではなく、舞台の上で様々な動きを取り入れることにより観客を一掃引きつけるという新しい試みの主役には、ベリー伯爵夫人が演じてくださいます。それだけで成功は約束されたも同然でした。




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