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第15話七年前~ブリリアントside~


 花が咲き乱れる園遊会。

 優雅な調べの中、紳士淑女たちが歓談を楽しんでいました。

 私は王太子の婚約者として、また、シャイン公爵令嬢として出席をしていたのですが、その最中に事件は起きました。


「無礼者!!」


 近衛騎士に取り押さえられているのは見目麗しい青年。

 絹糸のような金の髪、宝石のような青い目、人形のように整った顔立ち。見る者を魅了せずにはいられない容貌。この美し過ぎる青年の顔はどこかで見たような?


「アランっ!!」


 悲鳴と共に駆けつけてくる一人の女性。

 彼女は青年によく似た作り物めいた美貌を真っ青にさせていた。


 この顔、どこかで見たような。


 美人はどこかに通っているといいますが、この二人は恐らく姉弟でしょう。実によく似た容貌です。ただ、私としてそれ以外に気になる点がありました。その疑問が解けたのはお母様の一言が切っ掛けです。


「これはこれは、シュゼット側妃。この狼藉者を御存知なのですか?」


「私の……弟でございます」

 

「それはそれは」


 思い出しました!

 ユリウス王子!!

 何処かで見たことがあると思った筈です。

 この二人はユリウス王子の御生母と叔父にあたる方のようです。

 それにしても、この醜態は何事でしょうか?

 

「一体何があったのでしょう?」


 私の問い掛けに答えてくれたのはお父様でした。

 

「先程、この男が帝国に対して侮辱的な発言をしたのだ」

 

「それはまた命知らずな」


 お母様が珍しく怒り狂っている筈です。それにしても、小国が大国を侮辱するなんてユリウス王子の叔父は頭の悪い方なのですね。帝国皇女に向かって発言するなど死刑を言い渡されてもおかしくありません。

 現に、お母様は今にも斬り殺さんばかりの雰囲気を醸し出しているのですから。その雰囲気に場が呑まれて誰も口を開くことが出来ずにいる中、シュゼット側妃が地面に跪きました。

 

「申し訳ございません!どうか弟の非礼をお許し下さいませ!」


 深く頭を下げ、何度も謝り始めたのです。

 

「弟は年若く、分別がついておりません!どうか、どうかお許しください!!」


 額を地面に擦り付けながら懇願する姿は哀れでもありました。


「シュゼット側妃、謝罪は不要です。その前に、貴女は自分の弟が如何なる理由で拘束されているか理解しておいでですか?」

 

「そ、それは……」

 

「分かっていないにも拘らず謝罪を繰り返す。その行為自体が不愉快極まりないわね」

 

「……も、申し訳……ありま……せん」

 

「お黙りなさい。貴方の耳障りな声など聞きたくもない。口先だけの謝罪など意味はありません」


 お母様の言葉には“容赦”というものが存在していませんでした。普段、貴婦人然とされている様子からは想像も出来ないほどに冷たい声音。その言葉に周囲の人間たちは息を呑み、中には卒倒しそうな女性までいる始末です。


 シュゼット側妃は恐怖で震え上がっていますが、殺気を向けられたのは初めてなのでしょうか?

 後宮は女の園。そこでの熾烈な戦いは有名です。シュゼット側妃は皇子を産んでいますから他の妃達からの嫉妬と妬みは凄まじいはずですのに……。


 

「謝罪一つで済むとは思わないことよ」


 お母様の剣幕に押されたシュゼット側妃は泣き崩れ、必死に首を振っていますが、それは逆効果というもの。公爵家の護衛兵から剣を渡されたお母様が利き腕で大きく振りかぶった瞬間―――

 

「ルキウス、何の真似ですの?その手をどけてちょうだい」


 止めに入ったのはお父様でした。

 

「落ち着いて、レオノール。こんな愚者の為に君の美しい手を汚す必要はない」

 

「いいえ、私は帝国皇女としてこの者達を罰せねばなりません」

 

「君の怒りは尤もだ。だが、それは私に任せてくれないか?国王夫妻も直にくる。その時に彼らの罪を明らかにした方がいい。この場での処刑では、後に禍根を残すことになるかもしれない。何しろ、若い伯爵は貴族どころか王国人としての自覚が全く無い愚か者だからね。これが王太子の実の叔父だとは嘆かわしい限りだ。後々の憂いを断つ為にもこの場で処断するのは控えるべきだよ」

 

「……分かりましたわ」


 お父様に諭されたことでお母様は落ち着きを取り戻し、剣を収めてくださいました。





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