続・お気楽少女は何処へ行く
前作『お気楽少女は何処へ行く』の続編です。
誤字脱字等あればご指摘頂きたいです。
はぁい、皆様、ハロハロハロー!
皆様は元気?うんうん、そーかそーか!
あたし?あたしはいつでも元気よん!
……あれ、この感じ見覚えが……?
ま、いっか!
細かいことは気にしないタイプの人間なんです、あたし。
いぇーい、ぱちぱちぱち!……うん。
ってのはさておき。まぁ、元気なことには変わりないのだけれども。
皆様、今大変なことになっているのですよ。
何が大変なのかって?
それはですね。
「嫌だ!婚約者なんているもんか!僕にはサキがいるじゃないか!サキじゃ駄目なのか?」
「な……っ!」
「あらあらまぁまぁ、ラースは本当にサキが好きなのね。」
「うぅむ、サキに嫁いでもらいたかったんだがな、些か隣国と問題があってな……。っち、協定なんか結ぶのではなかったな。」
ちなみに上から第二皇子ラースアルノ様(愛称ラース様)、第一皇子アルトリウム(愛称アルト様)、王妃さま、王様。
あ、サキっていうのはあたしの名前。
うーん、ベリーキュート!うむ。
え、ここであたしはあの定番セリフをいうべきなの?
あたしのために争わないでー!って。
……、いやなんか違うな。争う……?いや、あれ?うん?
…まぁ、とりあえず気ままに傍観しておこう、ってわけにもいかず。色々と問題がありまくりなんですけど!!
あたしを除いて盛り上がってる王様達を眺めながらこうなる経緯を思い出す。
こうなることの数時間前。
あたしはいつも通り、皇子達の執務室で書類の整理や部屋の掃除などを行っていた。
仕事も手慣れたもので、てきぱきとこなしていく。
あれ、あたしできる子?いぇーい!
褒め称え給え!
はいすみません、調子に乗りました。
でも、それくらいは慣れていると思うんだよね。
ここに来て2年半。
そう、2年半だよ?
ここで働かせてもらって2年目あたりに、旅に出ようと思っていたあたしは、思い立ったが吉日、決めたその日に相談に行った。
執務室に誰かいるでしょう、的なノリで行ったら、そこには王様、妃様、第一皇子第二皇子、各大臣とお偉いさん勢揃いしていたのだ。
わぉ、皆さん仲がよろしいことで。
え、違う?
またまたぁ、そんな声揃えて、仲いいアピールしないでも分かってますよ、ふふふふふ。
それに、この執務室、案外他の部屋に比べて狭いじゃないですか。いや、この部屋も広いけれど他の部屋すごい広いし。
そんな狭い部屋で集まって何か企んでません?
あ、もしかして今日のおやつの話ですか?昨日のおやつタイム、皆さんすごい食べてたじゃないですか!
外務大臣と法務大臣なんか、食べすぎて咳き込んでませんでした?高齢なのだから、体は大事にしないと駄目ですよー!
ってなこと言ってたら、あれれ、何故か皆さん目が死んでる。
あれ、あたし何をしにきたんだっけ?…あ、旅についてだ、そうだ、それ話さなきゃ!
もぅ、おっちょこちょいさんめ!うふ☆
………いやほんとすみません調子に乗りました。このようなことは二度と致しません、とは言い切れません。ははは。
なんて、一人で盛り上がる彼女は、王が
「違う、色々と違う……。でも勘違いさせてたほうがいいのか…?というか、昨日のティータイム、そんなふうに思っていたのか…。ティータイムで出されたあのクッキー、君が作ったって言ったから皆の争奪戦が始まったんだよ……?侍女と騎士、側近の目も狙っている目だった、何あれ怖い。王に向かってそんな目する?しちゃうの?しないよね普通。ナニ、アレコワイ。」
なんて呟いてるのを知らなかった。
周囲の人間が彼女のことを気に入り、自身も気に入っている王にとって彼女のお気楽さ、天然さは見ていてとても微笑ましいものであったが、たまに空気が読めていないときがある。そんなとこもまた、彼女の魅力の一つなのだろうと王は思う。
そしてそんな王、それと王妃達に爆弾発言をさらにしていく彼女。
「あ、ここに来て2年なんで、そろそろ他の国も見てみたいです!ってことでお暇させてください。あとお給料、どのくらいあります?それも欲しいし、退職金とか出るって聞いたんですけど、それもお願いしますね!とりあえず、隣国のハバナール国がいいかなぁ。あそこ、べリシュのパイが美味しいって噂なんだよね。」
『!!!???』
べリシュとはもとの世界で言うところの、味が林檎の果実である。
そしてなんと、この世界へ来たときに迷子になっていたあの森にあった、「見た目が林檎で青色の果実もどき」がべリシュだったのだ!
それを知ったときは驚いたよ、うん。
え、え!?って。実物見て2度見して、話を2度聞きしましたね。まじかよ、Oh,Reality?ってなったね、はは。
いやだって考えてもみてよ。
見た目林檎でも青色よ?
うわぁ、美味しそう!いっただっきまーす、カプリ!ってやんないでしょ。もれなく天国に逝っちゃうかもしれないじゃないか!そんな危険なことしたくないよ!
城に来たとき、それが部屋の果物籠の中に入れてあったときは本当にびっくりしたよ。え、何という堂々とした暗殺方法でしょう、毒殺にしちゃぁバレバレですねぇ、って本気で思ったんだもの。
それがまぁ、実際に食べてみるとまぁ美味しいこと美味しいこと。見た目で決めてはいけないんだなぁ、と思ったよ。うん。
そのべリシュを使ったパイが、隣国のハバナール国の特産品でもあるらしい。
別にべリシュ自体はどこにでもあるようなものらしいが、何故かハバナール国で作られたパイは特別美味しいという。
何それ、食べるしかないじゃん!
というか食べたーい!!
ってことで、旅の最初の目的地は隣国のハバナール国!
そしてべリシュのパイを食べるのだ!
いざいかん!待ってろべリシュのパイよ!!
「……って事なので、お給料下s………。」
『待った!!!!』
「?どうしました?なにか問題でもあります?……あと皆さん見事にハモりましたね!さすがです!仲いい〜!ヒュー!」
『仲良くない!』
「あ、ほら。仲良いですねぇ。」
『……………』
しばらく、仲がいいお偉いさん方が見つめ合っていたが、ややあって王様が声をかけてきた。
「まぁ、仲が良い悪い云々はともかくな?隣国、というか他の国に行くのは、まだ、その………早いと思うんだがな?なに、まだこの国にいるというのはどうだろうか?ほら、君の好きなお菓子も沢山あるし、シェフも新作のスイーツを今考えてるって言ってたよ?だから、その……もう少しここに居てはどうかな?」
新作のスイーツ!!え、何それとても気になる!
それにこの前のケーキやクッキー、美味しかったんだよなぁ…。あれが食べれないのは辛いなぁ……。
だがしかし!あたしは決意したのだ!きゅぴーん。
「いえ、もう決めたことですので。何も問題ないですね。お菓子やスイーツは気になるけど、うーん……、あ、そうだ!レシピ教えて貰えばいいんですよ。そしたら向こうに行っても食べられるじゃないですか。ってことで、ちょっとシェフのとこ行ってきますね。たしか今の時間帯だと、厨房に居ますかね……。」
「いやまてまてまて!?」
「そ、そうよ、私と一緒に今度刺繍やるって言ってたじゃない!あれはどうなるの?ほら、まだここにいましょう?」
「そうじゃそうじゃ、ほら、儂らとのカードゲームも決着がついとらんじゃろ!あれはどんなんじゃ!お前さんの負けだと、勝者に貰える高級ケーキ、あれは儂らがもらうぞ?あれはなかなか手に入らなくての、次手に入るのは、はたしていつかの……?ほれほれ、出ていくと悪いことしかないぞ?」
お妃様との刺繍!完全に忘れていたわ……。
お妃様は本当に刺繍が上手いんだよねぇ、うん、あれは人間技じゃないと思うんだ。それに比べてあたしのは……。いや、考えるのをやめよう、うん、人それぞれなんだ、そうだ……。
そしてケーキ、あれも捨てがたい……。
大臣達とのカードゲームで勝者に貰えるケーキは予約しても1年待ち、種類によっては2〜5年待ちのもあるからだ。
最初は材料の収穫時期とかかな?と思ったが、実は人気すぎるからなのだ。しかも1人1個しか頼めないという。まじかよ。
そんなケーキが、何故カードゲームの勝者に貰えるかというと、大臣達に定期的に送られるプレゼント、所謂媚びるための贈り物の中にあったという。わぁ。
どうしよう、うーん、迷う………などと悩んでいると、不意に、執務室の扉がノックされる。そして入ってきたのは宰相だった。
「失礼します。……おや、皆様お揃いでしたか。丁度いいです、先程、隣国ハバナール国から書簡が届き、内容としては、あちらさんの第一王女がそろそろ婚約者を決めたいらしく、第二皇子との婚約願いが出ております。」
「えっ?僕?まだ何も聞いてないよ?」
「ふむ、もうそんな時期なのか……。いや、すまんな、まだ決まっている事柄が少なく、報告するには早いと思っていたのでな。お前の意見を尊重しよう、と言いたいところなんだがな……。」
「1年前に我が帝国と隣国とで協定を結びましてね。国境や貿易に関することやら、細かいところから大きいところまで色々と決めましてね、そのときにより繋がりを強化するため、我が帝国からは皇子、あちらからは王女を出して婚約を結ばせよう、という話になったんです…………、そうですよね、陛下?」
「ああ、第一皇子はすでに婚約者が決まっているし、そもそも年の差がありすぎる。それで第ニ皇子になったんだよ。……どちみち、政略結婚になるのは分かっていたしな。」
へぇ、隣国とはそんなことがあったんですねぇ。
1年前……ああ、もしかしてあのとっっってもキラッキラの馬車で来られた人達ですか?
あれはびっくり通り越して、何も発することができませんでしたよ、はい。あとから騎士さんに聞きいたら、あの時のあたし、口から魂飛び出てるんじゃないかって感じで、さらには目も死んでいたらしいです、ははは。
馬車には宝石らしきものが散りばめられ、馬車の中は少し見えた程度だけど、座ったらもう立ち上がるのが難しそうなクッションが敷き詰められていましたよ。実際、人が座るところを見ましたが凄い沈んでましたよ、いーなぁ、あれに座りたい!って思いましたね。
というか、第一皇子、婚約者いたんですね、びっくりです。
え、婚約者の子、見てみたい欲求が勝つばかりなんですが、どうしましょう、よし、隣国行くの延期にするんで会わしてくださいよ!
あたしの周りの女の人、王妃様と侍女さんくらいしかいないんですよ!
城で貴族らしき女の人や、皇子達の講師らしき女性とすれ違うけど数は少ないし、大人の人やばかりなんです!というか講師の人は大抵高齢の方ばかり!
可愛い女の子が見たい!愛でたい!可愛さに飢え過ぎまくっているあたしです。
「……なのか?」
「ん、どうしたラース?」
「どうしてもその人と婚約しなきゃ駄目なのか?」
「あー、気持ちもわかるがな、色々と問題があr……」
「嫌だ!婚約者なんているもんか!僕にはサキがいるじゃないか!サキじゃ駄目なのか?」
そして冒頭、今に至る。
わぁ、回想が長ーい!
というか、色々と一斉に起こり過ぎなんだよ……。
宰相が執務室に入ってきた時点で抜け出してたら良かったかな……、うん、それが良かったんだ、なんであのときあたし動かなかったんだろ、嫌だ、時よ戻ってくれぇー!
いやほんとに勘弁してよぉぉぉ!
というかあたしの隣国旅行、結局延期になるの!?
べリシュパイ、君のことは忘れない!
いつか食べに行くよ、必ず!うむ!
そして言いたいことがある。
あたしの今の年齢、実は24歳なのだ。
日本でも成人、そしてこの世界の成人年齢は16歳なのでこちらでも成人である。
この世界に来たときは、今から2年前だから22歳。
が、しかし、あたし自身の身長は155cm。そして童顔。
………ねぇ、泣いてもいいよね?中学生の頃から、いっっっっちミリも伸びてないんだよ!?それに加えて童顔という、ダブルパンチである。
これのせいで店に行くたび、中学生では小学生に、高校生では中学生に、社会人になっても高校生に、間違われる。
そしてこの世界でも、来た当時、子供と見間違われる。
まぁ、保護してもらえたからいいんだけどね?結果オーライだよ?
あたしの心はボロッボロだけれどね!?
しくしく、あたし悲しぃぃ……!
…………ごほん。まぁそれは置いときたくないけど、置いておくとして。
なぜあたしが年齢のことを言いたかったのかというと。
第一皇子、今現在、8歳。
第二皇子、今現在、6歳。
うん、いや、………ね?
ちなみに結婚も成人と同時にできるらしく、王妃様が16歳になったときに、根回ししていた王様が、すぐに式を挙げたらしい。
そしてその次の年に出産。まじかよ。
王妃様、頑張ったと思うよ、うん。
王様も頑張ったと思うけど、なんか、ね、うん、ははははは。
まぁ、婚約者云々の話はともかく、第二皇子よ、18も年上の女の人、じゃなきゃ嫌というのはどうかと思うよ。
お姉さん、君の将来が心配でたまらないよ。うん。
王様も王妃様も何とか言って下さいよ、頼みますから。
未だに執務室では、婚約者の件や隣国の件について賑やかに話し合っている。………仲、いいじゃないですか。
そんなこんなでまだこの帝国にいることになったあたし。
……でもしばらくしたらやっぱり旅したいな。
それでも今は。
「……、まぁ、なんとかなるでしょ。」
そう気楽に考えて過ごしたいと思う。
……でも、流石に18も年下の皇子と婚約とかは嫌だからね!?
無理ありすぎだし、そこはなんとかなられては困る!
そもそも隣国との協定で婚約云々の前に年齢差あるよね?何さりげなく、協定のこと大事で年齢気にしてませんよ的なこと言ってるの?
いや、協定大事だけどね?あれ、何あたしが間違ってんの?だれか、常識ある人きてーー!!
むしろウェルカム!カモン!ヘルプミーーー!!!
どうしよ、もう逆に、早々にこの帝国から脱出したほうがいいかな?不安になってきた、よし、今のうちに荷造りしとこう!
そうして、さり気なく始めた荷造りが、役立ってほしくないけれど役立ってしまうときが来るなんて、あたしはもちろん、他の人も、だーれも知らなかったのである。
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その日の夜。
王と宰相は、隠された地下の一室にいた。
「ふぅ、今日は危なかったな。まさか、出て行くなどと言われるとは。……待遇に不満があるわけでもないし、まだ引き止められるカードとなるものは、数多くある。とは言ってもその一つ、隣国の件についてのカードは切ってしまったがな。」
「ええ、全くですよ。……私が『丁度いい』ときに来たからよかったものの、少しでもタイミングがずれていたら、また違うカードを切らなければならなかったわけですよ。」
「はは、すまんな。……さて、このような事がもう起きないよう、前々から立てていた計画を実行するか。」
「そうですね、不測の事態に備えることも大事ですし。」
「これから忙しくなるな。……よろしく頼むぞ、宰相閣下……、いや、我が悪友よ?」
「ふふふ、もちろんですよ。仰せのままに、皇帝陛下、いえ、我が悪友?」
ふふふ、ははは、と、静かな地下の一室で聞こえる笑い声。
今の二人の会話と。
そんな二人の会話を聞いていた人がいる、という事も。
ただ、夜空の月と、静かに部屋の隅で微睡んでいた黒猫しか知らないのである。
小説を書くのが亀並みに遅い……!
伏線もどきを回収出来たと思ったら、気づけばまた新しい伏線もどきを作ってる。
何故だ………!!
そして未だに名前が出ていないキャラがいる、ごめんよ。
また余裕があったら続きを書きたいです。