幻想力学<1>
21世紀の黒死病騒動と後世に伝わることになるコロナウィルス流行が治まった日に日本政府は本腰を入れてマイナンバーカードの強制的な発行付与を行い携帯所持を義務付けることとなった。
これには非常時における国民の管理統制という面と行政による諸手続きの簡略化を行えるようにするためのものであり、政府・省庁・自治体の行政機関が反省を活かすために断行したものだ。
無論この時に国民世論は反対の声が大きく、野党勢力によって「国民の権利の侵害」「自由の侵害」と反政府キャンペーンが行われたが、国会における多数決によってこれを押し通したのである。
これによって税務管理、年金管理、銀行口座管理もマイナンバーカードに情報登録が行われるようになり、財務省・国税庁は不透明なカネの流れや脱税などの摘発に大いに寄与することでニンマリとしていたが、逆に年金情報も把握出来る様になったため年金の適正運用や将来の受取額などがわかりやすくなったことで年金機構への国民の目はより厳しくなったのであった。
また、従来の住民票の移動や郵便局への届け出などもカード情報によってオンラインで手続きできるようになり、役所まで出かけての作業をする必要がなくなったのである。同様に本人確認さえ出来れば役所にあるデータベースにアクセスし、必要な書類や情報を確認発行出来る様になった。
結果としてマイナンバーカードの強制発行付与は国民の利益と合致したのである。だが、無論、時代に乗り遅れた高齢者や機械音痴な一定層は従来通りの役所による手続きが可能であったが、彼らは二度手間三度手間を繰り返すことが多く窓口を占拠する事態が続いていたが、政府など行政機関はこれらの層を殆ど見捨てることにしたのである。
「彼らは自分で出来ることすら出来ないのだから見切りを付ける必要がある……行政はいつまでも面倒を見切れない」
この行政側の判断は弱者切り捨てと批判されるが、概ね、現役世代からは好評であった。
「やっと行政が老人優先をやめた」
無論、行政側はコストをかけて高齢者や機械音痴な層にもわかりやすいガイダンスやチュートリアルを用意していたが、彼らが殆どそれを利用することはなかったが、かつての書式がわかりにくいという批判の反省もあり、オンライン手続き画面はシンプルにつくられたのである。
マイナンバーカードとオンライン手続きが完全に普及し日常利用出来る様になった2030年、某ゲームメーカーにおいてゲーム企画会議が開かれていたことがとある事件の発端となるのである。