籠城戦<1>
屋上にある天文台。ここに光輝と朔夜は身を隠している。
だが、ここにいることはいずれ追手にはわかることだろうと二人は理解していた。
朔夜と話しながら室内の様子を確認していた光輝は会話を中断すると天文台にある机や椅子、段ボール箱や動かせるものを階段に持って行く。
「ここに逃げ込んだのは良いが……追手がここに気付かないはずがない。抵抗出来る時間がいくらか伸びる程度だ……貴様を巻き込むわけにもいかんから私が囮になって打って出る。その間に逃げる算段をしたらよい。討ち死にしても貴様のことを恨んだりはしない」
数分後戻って来た光輝は一息ついてからそう言った。
「落ち着きなさいな。あなたが出ていっても、私の方の問題が解決するわけじゃないのよ? それこそ討ち死にするまでの時間が5分や10分増えるかどうかよ。そんなの誤差に過ぎないわ」
「だが……私と貴様は別の幻想戦をやっているのだぞ?」
「……あなたの敵に私が巻き添えで殺されることだってあるのよ? その逆でだってあるってどうしてあなたは気付けないの?」
心底呆れた様子で朔夜は溜息を吐く。
「今、私たちの敵は同盟を組んで私たちを標的にしているの。つまり、私たちが今ここで同盟を組んでも何の問題はないの。個別に戦わないといけないというレギュレーション的な義務はないの。わかったかしら?」
「それは……アリなのか?」
「アリに決まっているでしょう? レギュレーションに同盟に関する項目はないわよ。いつ組んでも、いつ解消しても問題にならないわ……多分……」
そう言うと朔夜は顔を赤くしてそっぽ向く。
自分で言っておきながら自信はなかった。そうだと信じたいという思いが大きかっただけにいざ光輝にそう言われるとバツが悪いのである。
「そこにいるのはわかっているんだ!」
「出て来い、ミツナリ!」
「出てこないならこっちから行くぞ!」
階段を上ってこられないように雑ではあるがバリケードを作っていたこともあり、男子学生たちは階段を上るのに苦戦していた。
「乗り越えられるのは時間の問題だが……」
「去年の大舞闘会と同じで行きましょう。私が支援攻撃するから、あなたは盾と近接戦をお願い出来るかしら?」
「わかった。貴様の案で行こう……実際それしか活路はないからな」
頷くやいなや扉を開け飛び出た二人はすぐに術式を発動する。
「布都御魂剣」
「飛鳳」
光輝の布都御魂剣によってバリケードごと男子学生の一団を屋上の地面に叩き落した後、朔夜は飛鳳で体勢を立て直そうとする男子学生たちを精密射撃を食らわせる。
「お前たち卑怯だぞ!」
「正々堂々と戦え!」
男子学生たちが下から文句とともに遠距離攻撃系の術式を撃ち込んでくる。
だが、それらは尽く叩き落されていく。
「八岐大蛇」
「危ないわね、梓弓! 三成君、これは貸しよ」
「一つ撃ち漏らしただけだろ。それ以外を防いでいるのだ。そっちこそ貸しだと思うがな」
階段の上でギャーギャー騒ぎながらも二人は敵の遠距離攻撃を全て防御し、逆に朔夜の飛鳳による精密射撃で半数を討ち取っていた。
「ちょっと! なんであんたたちが朔夜と戦っているのよ! 朔夜は私たちの獲物よ!」
「は? 馬鹿を言うな。今俺たちが戦っているんだ邪魔するな!」
壁が邪魔をして視界が限られていることもあって完全に把握出来ないがどうやらクラスメイトの女子学生たちが屋上に現れた様だ。
「なぁ、日登……貴様の敵とは貴様の友人たちなのか?」
「ええ、そうよ……先週、あなたと戦う前に”虐殺”したお礼参りだそうよ」
「……だから言っただろう……」
「……仕方ないじゃない……」
階下では男子グループと女子グループが争いを始めていた。




