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人間は神様に勝てない  作者: 永瀬けんと
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最後の一撃

「は?」

「大池がお前を見ていることがオレは許されへんかった」

 リアリスが連撃を開始してきた。大したスピードではない。簡単に避けられる。しかし、一撃一撃に変な力が込められている。何か技が仕込まれているとかではなく、ただ力んでいるだけのように見えた。

「お前、もしかして大池のこと?」

「そうや。やっと気づいたか」

 リアリスはスローテンポの連撃を続ける。

「せやけど、お前には彼女が」

「カムフラージュや」

「彼女のこと、好きやないんか」

「ああ」

 リアリスの目に涙らしきものが溜まっている? おれは動揺してリアリスの一撃を頬にかすめてしまい、ライフポイントを少し削られてしまった。

「理解できん。なんで大池にアタックせーへんねん。もしかして、もうフラれたんか」

「あほか。そもそもオレレベルが障害者のこと好きになるとかあったらあかんやろ」

 人間のクズが目の前にいた。××。醜悪なる人間の本質のひとつ。おれを××し、好きなはずの大池にまで××をしている。目の前のコイツに限った話ではない。世の中にはこんな狂ったヤツが何万何千といて、数に物を言わせて自分たちがスタンダードなどとぬかす。

「学校カーストのトップに位置するお前が、障害者みたいな低レベルの人間を好きになったら、あかん。そういうことか?」

 アロンダイトのスピードが急に上がった。

「そういうことや!」

 アロンダイトがおれの左下腹部を貫いた。リアリスは泣きながら、「お前みたいな底辺の人間はこの世から消えてしまえ」と言って、かん高い笑い声を上げた。

 殺す。絶対に、マジで。

 おれの心の中で膨らんでいった風船。中の歪んだ何かが激しく運動した。赤なのか緑なのかよくわからないそれは形も成さずに風船を割って飛び散った。中から出てきた黒色の汚物に、おれは一瞬にして染められてしまった。込み上げる怒りが全身にほとばしる。

 おれは空いている左手でリアリスの右手首を掴み、右手はヴォーパルソードを放棄して、腰の道具袋に突っ込んだ。

「させねーよ」

 リアリスの蹴り。おれの右手が道具袋から飛び出る。リアリスの行動は遅かった。おれの右手にはさっきもらった上等玉が握りしめられていた。

「地獄がどういうもんか教えたるわ」

 おれは上等玉を割った。リアリスが焦った様子でおれの腹からアロンダイトを引き抜こうとしている。しかし、おれの左手がそれを許さない。次第に黒く染まった左手がリアリスの右手首を握りつぶし始めた。

「や、やめろ」

 リアリスの右手がアロンダイトから離れた。おれは左手でリアリスを引き寄せ、右拳でリアリスの顔面を殴打して地面に叩きつけた。スカッとしない。それどころか、殴り足りない感情が沸き上がった。

 おれはアロンダイトを腹から引き抜いた。景色がかなり赤い。今にもライフポイントがゼロになりそうだ。しかし、そんなことはもうどうでも良かった。

 ぐったりと倒れていたリアリスに、おれは馬乗りになった。左拳をリアリスの頬に向けて振り降ろし、次に右拳を同じく頬に振り降ろす。

「お前らのほうがな!」

 さらに振り上げた左拳でリアリスのあごを殴り、右拳で鼻を殴った。

「よっぽどクズやないか!」

 殴れば殴るほど、脳が焼けるほど熱くなっていく。おれは繰り返した。左拳を、右拳を、何度もリアリスの顔面へ振り降ろした。

「一生懸命生きてて、何が悪いんじゃ!」

 あと一撃だったはず。あと一撃でリアリスを強制退場させられたはず。なのに、おれの右拳が何かに遮られた。左拳を続けて振り降ろしたが、やはりリアリスに届くことなく何かに遮られた。

「浩平! 菜月! あいつだ!」

 神木さん? おれが神木さんを見ると何かの呪術でリアリスを守っているようだった。

 爆音がした。振り返ると、浩平さんと菜月さんがシンジと戦っていた。



 リンリンとトマソンは二人でレンを抱えて、戦場から少し離れた。

「あいつを殺さんと!」

 レンが伸ばした手をリンリンが遮った。

「何か状況が変わったっぽい。とりあえず私たちはレンを回復させる」

 ミーナが回復魔法を詠唱し、ガジュマルが腰の道具袋から回復アイテムを取り出す。

 みんなに囲まれながら、レンはリアリスから視線を外さないようにしていた。

「心配すんな。あいつはおまえがボコボコにしたから、ダウン状態でしばらく動けないだろう」

 トマソンはレンの肩を軽く叩いた。

 激しい爆発音がまた轟いた。シンジはいままで隠していた強力な爆発魔法を惜しみなく使った。浩平と菜月は一旦引いて、神木と合流した。

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