素人
「とりあえず、紹介からしておくと。まあ、もうだいたい分かっていそうだけど、このエレガントで小野小町のような美女は山賊の菜月」
神木さんが菜月さんを紹介すると菜月さんはポカッと神木さんの頭を叩いたあと、おれたちに軽く頭を下げた。
「で、そこのでくのぼうが、ロイヤルガードとかいうふざけた職業の浩平」
浩平さんは「雑だな、おい……」とつぶやいたあと、おれたちに「どうも」と挨拶をした。
「そして、この僕が天才科学者の神木です」
浩平さんから「いまは呪術師だろ」とツッコミが入ったが、神木さんは浩平さんを無視して話を続けた。
「ちなみに僕は二十三歳の女です。このルックスだと、性別も年齢も不詳だとよく言われます。ああ、僕らは髪型以外リアルの姿をそのままアバターにしているけど、多分君たちはリアルとは違う姿にしているんだろうね」
リアルの姿だということに驚いた。浩平さんは結構男前ではあるが割と街にいそうな感じ。しかし、菜月さんはボロボロの服を差し引けば、すれ違い様の男が何人も振り向きそうなぐらいスラッとしたスタイルに綺麗な顔立ちをしている。それに何より神木さんの性別不明、年齢不詳ぶりをおれは現実世界で見たことがない。
「さて、早速だけど僕たちがここへ来た理由を」
「敵よ」
「警戒!」
菜月さんとリンリンさんがほぼ同時に戦う体勢をとった。
神木さんは「ったく、人が真剣に話をしているときに」と言って、ため息をついた。
今度の敵は隠れることもなく、ぬるりと地面から現れた。黒い人型のモンスター。身体はゼリー状で、耳も鼻も口も無く、ただ黄色い目だけが頭部らしい部分に二つくっついている。
いきなり、モンスターの頭部が吹っ飛んだ。見ると、菜月さんが小型のボウガンを放っていた。ボウガンは二連式のようで、もう一つの矢はモンスターの右腕を肩の部分から吹っ飛ばした。同じボウガンや弓矢を操る職業の狩人たちでさえ、ここまで正確無比な射撃を二発連続でしているところは見たことがない。それに、冷たい目。というより何の感情も籠もっていない目に変化した菜月さんに、おれは背中に寒気を感じた。
モンスターは反撃とばかりに左手から黒いゼリーを菜月さんに向けていくつか飛ばしてきた。それを全て浩平さんが黄金に輝く円形の盾で防いだ。
モンスターが急に紫色に淡く光って、動きが止まった。神木さんが怪しい呪文をブツブツと唱えている。どうやら先ほどインビジブルウルフが目に見えるようになっていたのも神木さんの呪術ということにおれはいま気付いた。
浩平さんも菜月さんも神速が使えるようで、敵との距離を一気に詰めた。おれたちは三人の完璧とも言える連携を邪魔しないように、ただ戦況を見守っていた。
菜月さんが逆手に持ったアロンダイトでモンスターを横真っ二つに切ると、続いて浩平さんが雷切で縦に四つに切った。
ミーナが動いた。「リンリンさん、あたしを神速であそこに連れて行ってください」と頼んで、リンリンさんとともに第一線に向かった。トマソンもシンジを連れてリンリンさんを追った。
ガジュマルさんとおれは呪術を解いてしまった神木さんに、まだ戦闘が終わっていないことを伝えた。三人がストファンの素人であるため、先程の攻撃で戦闘が終わったと勘違いしたことに、おれたちはすぐに気が付き、それぞれがアクションを起こした。
「ゲッ」
浩平さんが黒く変色して刃が欠けだした雷切を見て、目を見開いた。
「うそ」
菜月さんも雷切と同じ様になっていくアロンダイトに驚いた。
金縛り的な呪術が解かれたモンスターが身体の再生を始める。
「やばいな、これ」
浩平さんがその場に立ち尽くしていると、神速で駆けつけたミーナが、セイントシャワーの魔法を雷切にかけた。
「菜月さん! 水を頭にイメージしてください!」
同じく神速で駆けつけたトマソンが菜月さんのフォローに入った。シンジは得意の氷魔法でモンスターの身体を凍らせて動きを止めた。
アロンダイトに水が滲み出てくると、刃がキレイに再生し始めた。聖水攻撃。アロンダイトは水をイメージすると聖水を纏いながら、敵を攻撃することができた。
「浩平さんは電気をイメージしてください!」
トマソンがそう言うと、浩平さんは目を閉じた。
雷切が黄色く光り始めて、電気を帯びだした。どうやら、雷切は電撃が可能な武器のようだ。
モンスターがシンジの氷魔法を黒く変色させて消滅させてしまった。すぐに、ミーナたちに黒いミストのような攻撃をしかけた。




