おかしな三人組
「いやいや、さっきから言ってるけど、俺らはあんまりこのゲームのことを知らなくて。自分たちに支給された装備品のこととかよく知らないんだよ」
「運営サイドでありながら?」
トマソンはどうやら相手がしらばっくれてるんだと思っているらしい。
「ごめん。ほんとに」
黄金の騎士は本気の困った顔をしている。
「このロイヤルガード様は、ほんとは何でも知ってるんだよー」
ボロボロの服の女性が少し企んだような顔で言った。
「やっぱり」
トマソンが黄金の騎士との距離をさらに詰めた。
「違っ。菜月、てめー、何を言い出しやがる」
「そうだそうだ。ロイヤルガード様はこの世界の王子様に寵愛されているから、もうやりたい放題なんだよ」
神木さんも会話に入ってきて、何やら変な空気になってきた。
「お前ら、見た目とかで与えられた職業のことをブーブー言ってんじゃねーよ」
「だって、山賊だよ、山賊。この汚らしいカッコ見てよ」
「菜月が、格闘と中距離の射撃攻撃が可能な強いヤツってオーダーしたんじゃねーか」
山賊? そんな職業は聞いたことがない。ボロボロの服の女性を見ると、腰に小型のボウガンとアロンダイトがぶら下げられており、武器を二種類も持てる代わりに防具が薄いところを見ると、武術家のような超攻撃型の職業のようだった。
「僕なんて呪術師だよ、呪術師。何でも良いとか言ったらこんな気持ちの悪い職業充てがってくるとか、秀川のヤロー、露骨過ぎだろう。それに加えて、浩平はロイヤルガードとかいうやたらカッコいい職業与えられているところを見ると、秀川王子サマサマヤローはビジネスセンスがおありの浩平君をどうやらだいぶお気に入りのようで」
神木さんはふて腐れた顔をして横目で浩平さんを見た。ちなみにロイヤルガードも呪術師もおれたちが聞いたことのない職業。どうやら、山賊を含めて、まだ実装前の職業をプレイしている時点で、運営側の人間という話は本当らしい。
「たまたまだよ! たまたま! 俺はお前らが攻撃的な役割と特殊援護みたいな役割を果たすと思ったから守備的な職業をオーダーしただけだっての! ていうか、このクダリはさっきもしたし、オレのアロンダイトとかいう剣を菜月の雷切っていう刀と交換して終わりにしようって言ってたじゃないか」
「ら・い・き・りぃぃぃ!?」
トマソンはもう黄金の騎士に接触するんじゃないかという距離まで近づいた。おそらく浩平という名の黄金の騎士がおれたちの中で有名な刀の名前を口にしたことで、トマソンの心がさらに燃え上がったようだった。おれもこれでもかと黄金の騎士に詰め寄りたくなったが、この場はトマソンに任せることにした。
「雷切はボクたち冒険者の中で、噂の域を出なかった業物。それをなぜ、あなたがお持ちなので?」
黄金の騎士は真顔で迫ってくるトマソンの両肩を持って、その場に一生懸命静止させた。
「あのー」
今度は何処からともなくリンリンさんが現れた。何やら様子がおかしく、いつものリンリンさんではないように見える。
「あ、握手をしてもらってもいいですか?」
モジモジしたリンリンさんはおそらく菜月という名のボロボロの服の女性に握手を求めた。
「え? あたし?」
驚いた菜月さんは、自分の鼻を指差した。
「はい」
あの気の強いリンリンさんが乙女の顔でコクリと首を縦に動かした。
理由もよく分からないまま、菜月さんが右手を差し出すと、リンリンさんは優しく両手で握手を交わした。
「お名前をお訊きしてもいいですか?」
「菜月って言います」
「菜月さん……良いお名前ですね」
リンリンさんはそう言うと、足早にガジュマルさんのところへ戻っていた。リンリンさんから「キャー、握手してもらっちゃったー」という声が聞こてくる。そんなリンリンさんの頭をなでながら、ガジュマルさんは少し呆れ顔で「良かったな」と言っているようだった。
しかし、ダークラインを超えた場所でこんな緊張感のない茶番をやってても大丈夫なのかとふと思った。シンジはまたミーナの横にピッタリくっつき、静かに場の様子を見守っていた。
「ちょっとみなさん、いいかな?」
神木さんがこの場にいるみんなを呼んだ。




