救いの手
ボサボサの長い黒髪にはベージュのヘアーバンドみたいなものが巻かれ、不揃いの赤い石が並んだ首飾りに、革と布が混じったようなボロボロの服。アロンダイトを逆手持ちしていたその人物は地中に逃げようとするモグラを蹴り上げて素早く剣を突き刺し、消滅させた。
一方、トマソンを攻撃していたと思われるインビジブルウルフがなぜかぼんやりと紫色の光を纏って見えるようになっており、そのインビジブルウルフに黄金の甲冑を装備した騎士が刀で後ろ足を切り飛ばしていた。
黒い短髪が印象的な黄金の騎士が刀を振る。横一閃に切り裂かれたインビジブルウルフは一瞬にして消し飛んだ。
そして、こっそりガジュマルさんを狙おうとしていたもう一体のモグラがいたが、地上に出た瞬間、ボロボロの服の人物が放ったボウガンの矢で頭部を貫かれて、あっけなく消滅した。
戦闘終了を知らせる電子ウィンドウ。二人の見知らぬ冒険者によって、おれたちは命を助けられた。
「大丈夫かい?」
おれは後ろから声をかけられた。振り向くと変な人物が立っており、おれはその出で立ちから一瞬目を見開いてしまった。白髪混じりの長い髪の毛。白い鉢巻には二本のロウソクが鬼の角のように差し込まれている。幼そうだが少年か少女なのかよく分からない顔立ちで、汚れた白い装束にわら人形を二、三体と釘とトンカチを手に持っていた。
「そんな顔しないでおくれよ。僕だってこんな姿をしたくてやっているわけじゃないんだ」
そう言って、少年か少女かよく分からない人物は頭のてっぺんをポリポリかいた。
「あ、ありがとうございました」
助けてくれたのはどうやら二人ではなく、三人いたようだった。
「とりあえず回復だね」
少年か少女かよく分からない人物は腰の道具袋から上位回復アイテムを取り出すと、「僕は神木っていうんだ、よろしく」と言いながら、おれの下で倒れているミーナに回復液をポタポタと落としてくれた。
「カミキ?」
おれは聞いたことのあるその名前を独り言のようにつぶやいた。
「カミキってまさか、この仮想世界を創ったひと?」
おれは目の前にいる神木と名乗る人物に訊いた。
「そうだよ。ただ、仮想世界自体は僕が創ったものの、君たちがヘッドギアをつけて来ているこのストライクファンタジーの世界は別の人間が構築したものだから、僕にも分からないことは多いよ」
神木は飄々と答えた。
神様が現れた、目の前に。僕の人生を救ってくれた神様が今まさに目の前にいた。
「あ、あの、え、あ」
何かお礼みたいなことを言おうとしたが、何を言っていいか分からない。神木さんは「ん?」と優しく返事をしてくれたが、おれは「あ、いや、何も」としかその場で言えなかった。
「レンのせいで全滅しかけたね」
ムクリと起き上がって、魔法着の砂ボコリをミーナは払った。
「元はと言えば、ミーナが追いかけて来たからやないか!」
「あんなん、ほっとけるわけないやん!」
ミーナの目に妙な凄みを感じて、おれは少し後ずさりしそうになったが負けてはいられない。
「死ぬのはおれひとりで良かったんや!」
「そんなん絶対許さへんし!」
「おいおいおい」
回復してもらったガジュマルさんが熱くなりだしたおれたちの間に入った。
「助けてくれたこの人たちへのお礼が先だろう」
ガジュマルさんはそういうと、リンリンさんやトマソンの回復を終えて集まってきた黄金の騎士とボロボロの服を着た女性らしきひと、それと神木さんに向かって「ありがとうございました。助かりました」と深々と頭を下げた。
「いや、気にしなくていいよ」
黄金の騎士は照れくさそうにした。
「そうそう。あたしたちは運営側の人間になるわけだし、ユーザさんたちを危険から救えて良かったよ」
ボロボロの服を着た人は声色で女性だということが分かった。
「すみません、そろそろあなたが、いや、あなた達が装備されているレアなものたちがどこで手に入るか教えて頂いてもよろしいですか」
どこからともなく何やらスイッチが入ってしまったトマソンが現れた。




