倒れていく仲間
シンジの氷柱魔法がおれの身体を囲んだ。ガジュマルさんは手持ちのソースっぽいものなどを一生懸命そこらじゅうに振り撒いている。リンリンさんは地面を確認して、敵の足跡を探している。トマソンは道具袋から回復アイテムを取り出して握りしめている。
このままではみんな死んでしまう、自分の判断ミスで。ゲームぐらいのことで大事な大事な命が消えてしまう気がした。
おれは敵によってシンジが生成した氷柱が砕かれた瞬間、その方向に剣を振ってみた。
ザクッという感触。おれの攻撃は見事にヒットした。すると、ヴォーパルソードの効果なのか、与えたダメージが大きかったのか攻撃が当たった敵が姿を現した。白くてデカい犬、インビジブルウルフだった。
みんなが一斉に姿を現したインビジブルウルフに攻撃を仕掛けた。インビジブルウルフは思った通りライフポイントが低かった。見えなくて、速くて、火力が非常に高い代わりに普通の敵より柔らかく、トマソンの軽い連撃と、リンリンさんの強烈な蹴りが腹に入ったところで、あっけなく消滅した。
「よっしゃあ!」
ガジュマルさんのガッツポーズ。まだ敵はいるが、みんなの顔に生気がみなぎった。歴戦の勘から勝機がやってきていると感じたんだと思った。
おれがまた氷柱が砕かれた方向に剣を振ると、また別の敵にヒットした。
「っしゃあああ!」
ダメージを受けたインビジブルウルフがまた姿を現す。すかさず、シンジがインビジブルウルフの背中に氷柱を突き刺す。リンリンさんが頭を蹴る、トマソンが後ろ足を切り落とす。
一見、順調に見えたこれらの行動が間違っていたことにおれたちはすぐに気づいた。おれたちはバカだった。まさか、敵が陽動を仕掛けてくるなんて考えてもいなかった。おれのデコイアピルの効果はすでに切れていた。にも関わらず、一匹のインビジブルウルフはわざわざおれの周りを囲む氷柱を砕き、攻撃を受けた。
「うぐっ」
おれの隣で人が倒れた。杖を持っていた右腕は斬り離され、背中には肩から腰にかけて致命的と思われるぐらいの深い傷が刻まれていた。
「ミーナ!」
おれはすぐにミーナの身体に跨り、守る体勢を取った。ガジュマルさんは道具袋から回復アイテムを取り出して、おれたちに向かって走った。
「がはっ」
今度はモグラだった。無防備で走るガジュマルさんに向かって巨体のモグラは鋭い爪をガジュマルさんの左腹部に突き刺した。
戦況が一気に暗転した。敵の数は最低でもインビジブルウルフとモグラの二体はいる。対しておれたちは回復役と精神的支柱を失いつつあった。
「ガジュマル!!」
リンリンさんが悲壮な顔で道具袋に手を突っ込みながら、ガジュマルさんの元へ駆けつける。トマソンはすでに回復アイテムを手に持っておれたちのところに向かってくれた。二人とも武術家の技である神速により五メートルぐらいを一瞬で移動した。
敵は巧妙だった。神速は短い距離を一瞬で移動できるが、移動後に二秒ほどその場から動けなくなってしまう。その二秒を二人とも狙われてしまった。敵はリンリンさんとトマソンがケガ人に向かうことを読み、神速で動きが止まったところに無情の爪撃を浴びせた。リンリンさんは右足を失い、トマソンは両足を失った。シンジは一生懸命、氷柱で敵を攻撃するが当たらない。せめて、自分に攻撃が向くよう「お前らの相手は、僕だ!!!」と叫んでいたが、敵はシンジを無視した。
絶望的だった。いつもなら、三時間の努力がムダになることへの悔しさが溢れ出す。しかし、今回はいままで感じたことのない漆黒の絶望感がおれの脳から生まれた。
「やめろ、やめてくれ、あかん……やめてくれ!!!」
おれは叫ぶしかなかった。全く耳を持たないモンスターたち。おれのことをチラリと見ることもなく、モグラは鋭い爪を倒れ込んだリンリンさんの背中に突き刺そうとした。
「リーン!!」
ガジュマルさんの叫ぶ声。おれは全てが終わったと思って目を閉じた瞬間、甲高い金属音がいきなり鳴り響いた。
目を開けると見覚えのある剣を持った人物がモグラの爪撃を弾いたようで、モグラの体勢が崩れたところに激しい斬撃を浴びせていた。
聖剣アロンダイト?




