惹かれた理由
「お前は嫌になったりせーへんの、その足」
大池沙也夏は落とした視線を長年付き合ってきた左足に少し向けたあと、琴平亮の顔を見た。
「あたしは好きやで。もう、生まれてからずっと一緒やし」
大池沙也夏は心がギュッと掴まれるような何かを感じた。
「お前、自分の気持ちに嘘ついてるとか思ったことある?」
「え? 何言うてるん。そんなん無いし」
大池沙也夏はまた心がギュッと掴まれるような感じがしたが、いつも通り無視した。
「お前はそういうのないかもしれへんし、これからも大丈夫かもしれんけど、もし疲れたりしたら、いつでも話相手になるで。マイナスを背負うもん同士、ちょっとぐらいはお前の気持ちが分かってやれるかもしれへんしな」
大池沙也夏は琴平亮の瞳にほんの少しだけ光を見た気がした。
「じゃあ」
ほのかな温かみを残して、琴平亮が去っていく。この時、大池沙也夏はあの光が何なのか分からなかった。
ミーナである大池沙也夏は、いま何となく気づいた。レンである琴平亮は誰かを守ったり、助けたりすることが好きだと言うことを。どんなに深い海の底に沈められたとしても、琴平亮は自分とは違い、抗うとかそういうのではなくて、もともと琴平亮自身が体内に輝くものを持っているということを。
ミーナはパーティー全員に身体能力強化魔法である、フィジカラップをかけた。この魔法は強力な反面、魔力をかなり消費するため、ボス戦のラストスパートに使われる傾向にある魔法だった。
パーティーはみんなモグラの地面からの攻撃を警戒した。レンはヴォーパルソードを鞘に収め、再びワイドプロテクトを発動させてミーナとシンジの前に立った。
「いまのうちに逃げちゃう?」
トマソンは親指でダークラインを指した。
「確かに中距離攻撃が無くなったし、アリかも」
リンリンも同調した。
「いや、他にもわけわかんねぇ攻撃で誰か死ぬ可能性が無いとは言えねぇ」
重傷を負わせたとは言え、相手はダークラインの向こう側の敵。不確定要素がまだ残っていると思ったガジュマルは、モグラを倒してしまうほうが良いと判断した。
「またや!」
レンが急に口を開いた。みんながレンを見ると、またヴォーパルソードが妖しく輝いていた。
「トマソン、発動条件知ってる?」
レンが訊くと、トマソンはかぶりを振った。
「レンぐらいのレベルで、しかも聖騎士がヴォーパルソード握っている動画はボクでも見たことないよ」
「レン、その変に光っている状態でヴォーパルソードを抜刀するとどうなるんだ?」
ガジュマルは地面を警戒しながら、レンに近づいてきた。
「急に目の前にロックオン中の敵のホログラムみたいなのが現れて、一定時間だけ敵がどこにいようとそのホログラムをヴォーパルソードで攻撃すると当たるっぽいっす」
「何だその無敵っぽい技は。じゃあ今抜剣したら、地面の中で潜ってるモグラ野郎も攻撃できんじゃね?」
「お! ガジュマルさん、それいいっすね! やってみます!」
レンは再度発動していたワイドプロテクトを解除してから、ヴォーパルソードを鞘から抜いた。レンがアタッカーとなったので、代わりにガジュマルとトマソンが魔法使い二人の守りに入った。
レンの目の前にまたモグラのビジョンが現れた。モグラは上を見ている。どうやら、誰かに攻撃を仕掛けようとしているらしい。レンはモグラのビジョンに向かって、大きく剣を振り降ろした。
ブギィィィ!
トマソンの下あたりで、モグラが叫んだ。
「オッラァァァァァ!」
レンは構わず、剣を何度も振った。頭、背中、胴体、後足、しっぽ。レンはひときわ敵の反応が大きかったしっぽが弱点だと判断し、硬いしっぽを何度も攻撃して切り落とすことに成功した。
ブギャャャ!
モグラは断末魔とともにその場で消滅した。
「気配が消えた! ナイス、レン!」
みんなの目の前に戦闘終了を知らせる電子ウィンドウが現れた。リンリンがうれしそうに笑顔でレンの肩をグーで叩いた。
「いやいや、ボクのヴォーパルソードのおかげだから」
トマソンがドヤ顔をすると、リンリンは「いや、あんたヴォーパルソード装備できないじゃん」と、呆れた顔でツッコミを入れた。
「いや、まだ終わっていない気がする」
レンは眉にシワを寄せていた。
「どうした、レン」
ガジュマルがレンに訊いた。
「ホログラムで、切り落としたしっぽがどこかへ行くのが見えたんす。前にも同じような敵がいて、仲間を呼ばれた覚えが」
「そりゃマズイな、さっさとこの場からずらかろう」




