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人間は神様に勝てない  作者: 永瀬けんと
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琴平亮

「これじゃ、防戦一方っすね」

 レンが盾の強化技である、ワイドプロテクトを発動すると、グレートシールドは淡く光って少しだけ大きくなった。そして、できるだけ前に出て、数多く岩石が防げるようにしたが、思ったよりも威力が強く、あるところまで近づくと、それ以上は前に進むことが出来なかった。

 流れ弾がリンリンの腕に当たり、シンジの肩に当たり、ミーナの足に当たる。

 確実に削られていくパーティーのライフポイント。このままでは誰かが強制的に身体が転送されてしまうとガジュマルは思った。

 レンとガジュマルはふと(さや)に収まっていたヴォーパルソードが(あや)しく輝いているのに気付いた。

「ガジュマルさん、剣を抜いても良いっすか」

 剣を抜くとワイドプロテクトは解除され、防御範囲が狭くなってしまう。

「分かった。このままではラチがあかねぇ、その剣に賭けてみよう」

 レンはガジュマルに向かってうなづき、ワイドプロテクトを解除した。必然的に後ろへ流れてしまう岩石の量が増える。レンは急ぎヴォーパルソードを鞘から抜くと、目の前に半透明のモグラのビジョンが現れた。

 半透明のモグラは忙しく前足を回転させている。レンはその前足に向かって剣を振り下ろしてみた。

 ブギィィィ!

「おい、レン、何した? 攻撃が止んだぞ?」

 モグラの悲鳴とともに、急に岩石が飛んでこなくなって、ガジュマルは目をぱちくりさせた。レンは「説明はあとで」と言って、エアウォークの効果が切れて地面に足がついたあとも、どんどん薄くなっていくモグラのビジョンに向かって剣を振りまくった。

 レンが効果的なダメージを与えていると判断したリンリンはモグラへ向かってダッシュした。また、シンジも鋭い氷柱をいくつも生成して、モグラに向かって放った。

 リンリンが思い切り蹴り技を入れようとしたところで、モグラはまた地面に潜ってしまった。

「厄介な敵ね」

 リンリンはじだんだを踏んだ。

「とりあえず、右前足だけ切り落としたんで、あの岩石攻撃はもう敵も無理だと思います」

 レンは切り落としたモグラの右前足を指差した。

「ナイス、レン」

 ガジュマルはレンに向かって言った。

 トマソンの回復を終えたミーナは、レンの横顔を見た。アロンダイトを失って、アイアスの盾まで失っても、レンは戦っていた。あんなに曇っていた目がいつの間にか光を取り戻しているように見えた。


 去年の十二月。テスト期間中に学校から帰っていた大池沙也夏は、友達の小河陽菜(おがわひな)と別れたあと、家の近くにあるコンビニに寄ったことがあった。その時、たまたまコンビニから出てきたブレザー姿の琴平亮とすれ違った。

「琴平くん」

 一度は声をかけるのを止めようと思ったが、思いきって声をかけた。

「おう、大池」

 琴平亮が口を開けると、覇気(はき)のない声と共に白い息がもれた。

「勉強は順調?」

「まあ、いつも通り」

 冷たい風が琴平亮のグレーのマフラーを揺らす。

「琴平くん、世界史得意やもんなあ」

「大池の英語よりはでけへんと思うけど」

 大池沙也夏はとっさに青いタータンチェックのマフラーで口元を隠した。自分の得意教科を知っていてくれたことが嬉しくて、大池沙也夏は(ほほ)を赤くした。

「あのさ」

「ん?」

「ずっと気になってたんやけど」

「なに?」

「琴平くんって、同じクラスの田中くんから嫌がらせ受けてへん?」

 琴平亮の顔が(くも)る。そうなることは分かっていたが、大池沙也夏はどうしても()きたかった。

「別に受けてへんけど」

「ほんまに?」

「ほんまや」

 田中大和の嫌がらせは分かりにくかった。隣のクラスながら、琴平亮のことをよく見ている大池沙也夏も、田中大和がどうも琴平亮に嫌がらせをしているかもしれないぐらいにしか見えなかった。

「あれって、まだ()えたりするん」

 小学校の頃に噂になっていた話。中学になってもそれが原因で琴平は嫌がらせを受けたりしていた。

()える」

「それって、()たくなくても?」

 琴平亮はゆっくりうなづいた。

「お前は悪意が無いって分かってるから答えるけど、誰にも言わんとってな」

 誰にも言わなくても、みんな知っている話。それでも大池沙也夏は今の話を誰にも言うつもりは無かった。

「嫌になれへんの?」

「嫌になれへんっていうか、ずっと嫌やけど」

「しんどなったりせーへんの?」

「慣れてもうたんかもな」

「そっか」

 大池沙也夏は視線を落とした。

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