リアリス
「上や」
三人組の闇魔法使いが安物の杖を天に掲げた。すると、空にくじらの大きさほどの黒い雲が瞬時に生成された。
「おい、あそこ!」
ガジュマルさんが指差した方向に鋭いクチバシをもつ小鳥たちが十匹ぐらいで群れを成していた。
「来るぞ!」
おれはまた魔法使い二人の前で盾を構える。今度は目に見える相手なので幾分かは防ぎやすい。ただし、全匹に狙われると防ぎきれない。すばしっこそうなので、剣を当てるのも難しい。
リンリンさんとトマソンの攻撃が空を切っている。武術家でも当てにくいとなると、いよいよおれの攻撃は当たらないと思った。
「うぐっ」
シンジがおれの後ろでいきなり倒れた。
「レン! シンジが小鳥に刺された!」
ミーナは急ぎ回復魔法の詠唱をし始めた。おれは剣で小鳥を攻撃することを止め、盾のカウンター技で落とすことにした。
アイアスクラッシュを当てれば、恐らく一発で落とせるはず。おれは頭上でホバリングしている小鳥に集中した。
見ていた小鳥が猛スピードで一直線に降りてきた。どうやら狙いはミーナらしい。おれはすかさずアイアスクラッシュを発動させた。
感触あり!
「よっしゃあああ!!」
キュンという音とともにおれは小鳥を一匹消滅させた。ここに来て初めてのモンスター撃破。嬉しくてついガッツポーズをしてしまった。
「レン!」
シンジがおれを呼んだ。なんと、小鳥はもう一匹ミーナの頭を目がけて直進していた。アイアスクラッシュの連発はできない。おれは握りしめていたアロンダイトを前に突き出してみたが、これでは間に合わない。
次の瞬間、軽い轟音とともに強烈な光が目に差し込み、おれは視界を一瞬失った。その後、次々にその轟音が何度も鳴り、おれの視界が戻る頃には地面に落ちた小鳥たちが消滅していっているところだった。
「おいおい、俺にも一匹ぐらい残しとけよ」
リーダー格の男がにやにや笑っている。
「リアリスのことや、小鳥の翼をちょん切ってから、足ちょん切って、クチバシ折って、バタバタしてる小鳥見ながらケラケラ笑ったあと、首を切り落とすんやろ。そんなん可愛そうやから、全部一発で倒しといたわ」
三人組の闇魔法使いも趣味悪そうに笑っている。それにつられてか、三人組のもう一人である戦士もケタケタ笑っていた。
おれはいま何が起きているのか、全く理解できなかった。
「シンジ、あの魔法は?」
ミーナの問いかけに、シンジはかぶりを振った。
魔法? 魔法であのとんでもなく厄介な小鳥たちを一瞬で全滅させた? しかも、あの弱そうな三人組が?
「まさか、まさかとは思うけど、君は古来魔法を使えるのか?」
トマソンが三人組に向かって訊いた。
「おお、自分よく知ってるやん。あれは古来魔法の“カミナリ”や。つーか、俺の名前は君やなくて、シュー太郎。要チェックやで」
「しゅうたろう? トッププレイヤーの中にそんな名前はいなかったような」
トマソンが首をかしげた。
「魔法使いのこいつがシュー太郎、んで戦士のこいつがソウルナイト。全然魂こもってへんけど」
「あほか、めちゃめちゃ魂こもってるちゅうねん。俺の一撃一撃半端やあれへんで」
ソウルナイトはへらへらしながら、リーダー格の男にツッコミをいれた。
「いまの戦闘、お前見てただけやん」
「いやいや、あちらさんを温かく見守ってたんや」
「見守ってた割には、あちらさんがやられてるのを楽しそうに見とったやん」
「リアリスほどやないけどな」
ソウルナイトとリーダー格の男が目を合わせてゲラゲラ笑っている。向こうと対照的に、おれたちは誰も笑ってはいない。
「ああ、オレの自己紹介を忘れてたわ。最後に、オレがリアリス。職業はギャンブラー。海賊王になるのはオレやから、ヨロシク~」
リアリスと名乗るリーダー格の男はおれたちに向かってピースをした。
「いやいや、お前は心汚れきっててルフィーとか100パー無理やから」
シュー太郎がそうツッコミを入れると、ソウルナイトだけがゲラゲラと笑ったが、おれたちのほとんどが眉をひそめていた。そんな中、トマソンだけが視線を落として、「ギャンブラー? そんな職業、聞いたことないぞ……」と一人で呟いていた。
三人組がひそひそと話し出し、一人がおれに指をさしているように見えた。すると、リアリスがおれに近づいてきた。
「ちょっと貸せよ」
リーダー格のリアリスはそう言うと、おれのアロンダイトを鞘から抜いた。




