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人間は神様に勝てない  作者: 永瀬けんと
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続く団らん

 リンリンさんはガジュマルさんの取皿にウィークラビットの南蛮漬けを乗せた。

「お、サンキュー。いやー、俺はこの時間がやっぱ大好きだわ」

「モンスター料理すんのとか楽しい? なんか面倒くさそうだけど」

「みんなが喜んでくれる顔を浮かべてたら、別に苦に感じねーけどな」

「ほんと料理人は天職だよね、おせっかい焼きのガジュマルには」

 料理人は倒したモンスターから食材を手に入れることができ、それを料理することができる。料理人はストファン導入当時にはなく、途中で追加実装されたジョブだった。実装当時は目新しさから、ジョブチェンジするものが多かったらしい。ただ、弱過ぎてレベル二十になるまで相当苦労するようで、料理人はすぐに激減した。しかし、レベル二十になると一時間程度ステータスアップ効果のある料理のレシピを覚え始める。これにより、一気にパーティーに呼ばれる回数が増え、レベル上げが非常に(はかど)るので重宝(ちょうほう)された。料理人はパーティーメンバーをドーピングすることができる唯一のジョブのため、聖魔法使いと同等かそれ以上に高く評価された。

「ところで、ミーナちゃんとシンジはさっきからずっとべったりだけど、付き合ってんの?」

 ガジュマルさんの突然の言葉に、おれは目を見開いてしまった。

「いや、そんなんじゃ」

 シンジは静かに否定したが、ミーナは何も言わなかった。

「あんた、ちょっと!」

 リンリンさんはガジュマルさんの背中をバシンと叩いて、キツイ目で見た。

「痛えー、おれなんか悪いこと言ったか?」

「あんた、ほんとデリカシーないよね」

 リンリンさんは深くため息をついた。

 そんなリアクションをするリンリンさん自身もおれへのデリカシーが無いと思った。今のところは別に何事もなく流してくれれば良かったのに、リンリンさんが変なことを言ったせいで、ミーナとシンジの間を良く思わないヤツがこの中にいることを暗に伝える結果になってしまった。

「ガジュさん、あたしたち魔法使いにおすすめの食べ物、スープ以外になんかあります?」

 ミーナは広げられた弁当箱をきょろきょろ見回した。

「そうだな、その火喰鳥(ひくいどり)の玉子焼きとかいいと思うよ、マジックポイントの回復時間が早くなる」

 ライフポイントやマジックポイントは戦闘時以外にだんだんと回復するシステム。その回復時間が早いというのはとても重要で、回復する時間が短ければ短いほど、より安全で効率的に自分たちの冒険を進めることができた。

「へー」

 さっそく玉子焼きをお箸でつかみ、そのまま口に運んだミーナは、自分のほっぺたをおさえた。

「これおいしー」

「だろ? その味付は俺のアレンジなのよ。ちょっとチーズの酸味とコクを加えたほうが、断然旨くなる」

 ミーナは、「シンジも食べなよ」と言って、シンジの取皿に玉子焼きを置いた。

―――ムカー!

 ミーナがシンジと仲良くする光景を見ておれは、「ガジュマルさん、おれにオススメの料理とかないんすか?」と尋ねた。

―――シンジのゲス野郎……オボエトケヨ、ソノウチボコボコニシテヤル。

「お、レン。お前も意識高くていいね。そんなお前にこれをやるよ」

 ガジュマルさんは道具袋から、何かの葉っぱで丸く包んだものを優しく投げてきた。

「なんすか、これ」

「おにぎり。まあ、食ってみろよ」

 葉っぱを()いてみると、真っ白なお米が顔を出した。

「なんか旨そう」

 おれは思い切りおにぎりにかぶりついた。

「うげっ」

 苦い。おれは顔をおもいっきり(ゆが)めて、ガジュマルさんを見た。

「すまん、すまん。それ、スゲー食材なんだけど、なんかおれのレベルがまだ低くて上手(うま)く料理できねーんだよ」

「まっずい薬みたいっすね……」

「味は悪いけど、効果はスゲーから」

「なんの効果があるんすか?」

「まあ、それはそのうち分かる」

 ガジュマルさんと話していると、トマソンが近づいてきて、おれからおにぎりを取り上げた。

「まさかこれって、青い悪魔が落とす食材では?」

「お、トマソン。よく知ってんなあ」

 トマソンは目を輝かせて、おれの了承も得ないまま、おにぎりをパクパク食べ始めた。

「よくそんなに食えるね、苦くね?」

「レンは若い。ビールは苦いもんだろ」

 トマソンの口はへの字になっていた。

「その苦味を美味しく味わえているように、まったく見えねーんだけど」

「何を言う。ボクは決して、レアだから食べているんじゃない。この苦味が心から好きなんだ」

「いや、ただのレアもん好きやろ」

「決して、違う」

 トマソンは目から涙を流している。おそらく苦すぎて、身体が拒否しているようだった。本物のアホがいる。おれはそう思わずにはいられなかった。

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