タピス族
「急いで助けられるやつから助けていこう」
ガジュマルさんは目の前にいたタピス族にアイテムを使って、治療し始めた。ウサギ人間であるタピス族たちはみんなCPUなので、ガジュマルさんの行為はアイテムを浪費するだけの行動である。
おれを含め、ガジュマルさんの後に続き、各々そこら中に倒れているタピス族を助け始めた。ミーナは回復魔法を使い、リンリンさんとトマソンとおれはガジュマルさんと同じくアイテムを使い、シンジは水魔法の威力を弱めてまだ燃えている木の小屋を消火した。
ガジュマルさんがまた走った。今度は倒れている三毛のタピス族に近寄ってしゃがみ込み、「大丈夫か!」と声をかける。三毛のタピス族に反応はない。ガジュマルさんは道具袋に手を突っ込み、蒼いガラス玉を取り出し、三毛のタピス族の上で握り割った。蒼いミストが倒れている三毛のタピス族に優しく降り注ぐ。ガジュマルさんは三千アーレもする上級回復アイテムを惜しみなく使った。しかし、三毛のタピス族が目を覚ますことはなかった。
「ありがとう。でも、ここで倒れている者たちはすでに息が……」
真っ白な毛並みのタピス族がおれたちの目の前に現れ、視線を落とした。ガジュマルさんは舌打ちをしながら、ゆっくりと立ち上がった。
「人間の言葉を話すということは、あなたはこの村の幹部のお一人ですか?」
トマソンがおれたちの前に出た。
「いかにも」
「いったい村に何があったのか教えて頂けませんか」
トマソンを含め、みんな表情が暗い。これはあくまでゲームであり、あたりに斃れている白や黒や茶色のタピス族たちはみんなCPUだ。心を傷める必要はない。
「アオです」
「アオ?」
「ここで立ち話も何です、村の奥へ案内しましょう」
白いタピス族は村の奥へと歩き出した。
「あの!」
ガジュマルさんが白いタピス族の肩に手をかけた。
「斃れている者たちを一箇所に集めてあげるとか、我々がお手伝い出来ることがあれば何でも」
「若き人間よ。あなたは心優しい。その気遣いに心から感謝する。しかし、大丈夫です。斃れている者たちはあとで生きているタピス族たちで手厚く葬ってやりたい。今は奥の広場で怪我人の治療に専念している状態です」
ガジュマルさんは幹部の言葉からすべてを察し、「分かりました」と言って静かに目を閉じた。
おれたちは村にある洞窟の中へと案内された。タピス族の村に何度か来たことがあるのはおれだけじゃないと思う。おそらく、この洞窟がタピス族にとっての神域であり、普段は人間たちが立ち入れないことを知っているのもおれだけではないだろう。
思っていたよりも洞窟は深く、中は大型のトラックが一台余裕で通れると思えるぐらい広かった。両サイドには等間隔で松明が焚かれており、揺らめく炎に合わせて、おれたちの影も揺らめいていた。
中へ中へと進むと、一段高くなっていると思われるところに何人かの人影が見え始めた。一人は椅子に座って杖をついており、他の三人は横で立っているようだった。
「冒険者たちよ、そなたたちがここへ来ることは分かっておった」
お互いの顔が確認できるところまで近づいたところで、杖をついて座っていたタピス族が、立ち上がっておれたちに一礼した。
「長老。ご指示通りに、この者たちをここへ連れて参りました」
おれたちを案内してくれた幹部は杖をついていたタピス族の前で膝まづいた。
どうやら杖を持っているタピス族がこの村の長老のようで、おれたちを案内してくれたタピス族と長老の横にいる三人が幹部のようだった。幹部たちの毛並みはそれぞれ白色、黒色、茶色、三毛となっており、どうもそれぞれの毛並みの色の代表が幹部になるように思われた。
「初めまして」
トマソンが長老に深く頭を下げたので、おれたちはそれに合わせてみんなで頭を下げた。
「気づいておると思うが、この場所は人間が立ち入って良い場所ではない。しかし緊急事態。そなたら冒険者たちに頼みたいことがある」
長老の毛並みは一本一本が長く、いかにも長く生きてきたと思わせる印象を与えてた。色は白をベースにところどころ金色に見えなくもない黄色の毛並みが散らばっており、こんな毛並みを持つタピス族をおれは見たことが無かった。
「さきほど、幹部の方からアオという言葉を聞きました。まず、アオとは何か教えて頂けますでしょうか」
トマソンがおれたちを代表して会話を進めてくれた。
「それは私が答えよう」
茶色の毛並みを持つ幹部がゆっくりと近づいてきた。




