厳しい戦闘
猛攻。三匹のエンドクラブが餅でもつくかのように、おれに向かってハサミを交互に降り下ろしてきた。おれは仰向けになってそれを盾で受けていた。
なんとか起死回生を狙って、可能な限りで目と首を動かした。ミーナはまだビーストビーと戦っている。顔が紫色。毒を受けて体が重くなっているのだろう、砂浜に片手をついていた。
エンドクラブたちは打撃の乱打を止め、おれの盾をハサミで掴み始めた。おれから盾をひっぺがしてから、もう一度ハサミの雨を降らせるか、一撃必殺に持ち込むつもりだろう。
おれはお望み通り、カニたちに盾をくれてやった。そして剣もミーナのいる方向に投げつけた。剣はミーナに届くことなく、砂の上に止まった。
狙い通り。
身軽になったおれは、転がって、立ち上がって、エンドクラブの間を縫うように袋叩きの状況から脱した。数が多いことも幸いして、ハサミ同士がぶつかり合い、おれへの攻撃が入ることはなかった。
おれは途中で剣を拾い、ミーナを狙うビーストビーに攻撃を開始した。攻撃が簡単に当たる。ビーストビーは多分ミーナの持っていたアイテムによって重力過重状態となっており、動きが鈍くなっているようだった。おれはさっさと頭部を切り落とし、ビーストビーを消滅させた。
「ヒールはもう使えない?」
「いや、まだ最後の一回を残してる」
「じゃあ、自分を回復させといて。毒もあと一分ぐらいで自然治癒するやろうし」
「断ります」
「はあ?」
ミーナはおれに向かって回復魔法を使ってしまった。
「いやいやいや、おれまだライフポイント結構あったし、君の方はギリギリやん」
「聖魔法使いなめたらアカンで」
「いや、別になめてへんし」
いや、なめていたかもしれない。自己犠牲の精神は聖騎士を超えたものがあることを思わされてしまった。
「あっちの岩場までいける?」
「ごめんやけど、おぶってくれていい?」
ドキッとした。おれは全身に鉄を身に纏っているから、感触を感じないにしても女の子をおぶるとか現実でもあり得ない出来事だ。
「分かった」
おれは半ばやけくそでミーナをおぶって岩場まで走った。身体に纏った金属たちがミーナの感触をすべて遮ってしまっていることに残念な気持ちを覚えてしまった。可愛くはない。ストファンのプレイヤーたちは可愛いフォルムを選択している人たちが多いから、ミーナなんて中の下。特に胸も大きくないし、興奮するような身体ではない。ああ、そうか、ピンチだからだ。これはつり橋効果的なやつだ。ピンチに対して動いている心臓を脳が勝手にこの子に対して動いていると勘違いしているやつだ。
アホなことを考えている場合ではない。おれはこの三時間でエンドクラブを十匹は倒さないとドロップしない大きなハサミはもちろん、レベルを2つも上げている。逆戻りなんてマジでごめんだ。
岩場はおれたちの背丈の二倍はあった。この岩場を背に戦えば、後ろから攻撃されることはない。それに、エンドクラブたちは岩が邪魔で、デカいハサミを自由に振り回せない。
エンドクラブたちが再びおれの目の前まで来た。盾はない。攻撃を防ぐことはできない。
再会の挨拶とばかりに一匹がハサミを降り下ろして来た。おれはすかさず前転でそれを避け、うまく懐に潜りこんだところで腹に剣を突き刺した。
「ナイス!」
ミーナの声で妙にテンションが上がる。おれは、「オラァァァ!」と気合を入れて、突き刺した剣をさらに深くいれてエンドクラブ一匹を消滅させた。
「よっしゃ!」
まだあと三匹。一匹は不用意な攻撃をしてきてくれたおかげであっさり葬ることができた。しかし、あとの三匹はそう簡単にいきそうもない。一匹が簡単に消えたのを見て、警戒を強めた。
エンドクラブたちはミーナを狙ってきた。ミーナに避ける体力は無く、武器の杖でハサミを受けきるのが精一杯。
「いける?」
おれは耐えれるかどうかミーナに確認した。
「何とか。いまのうちに」
ミーナはおれの考えていることを分かってくれた。
「オッケー」
今がチャンス。エンドクラブたちがミーナに集中している間に、全て倒す。ミーナのライフポイントは残りわずか。時間はない。
おれはまずハサミを片方失ったエンドクラブの左足を三本切り落し、機動力を奪った。これで、一匹をほぼ戦闘不能にした。残り二匹。
一匹がおれにハサミを降り下ろしてきてくれた。カウンターは聖騎士の得意分野。おれはそれを剣で受け流してエンドクラブの体勢を崩した。
距離があった。砂浜では砂に足を取られてスピードを出せない。これでは懐に入る前に体勢を戻されてしまう。おれは思いきって剣を投げた。剣はうまくエンドクラブの腹に刺さってくれた。しかも急所にビンゴだったらしく、エンドクラブはすぐに消滅して、剣は砂の上に落ちた。
「おっしゃあああああ!!」




