ごしゅじんさまはにんげんです
マロン視点です。
☆★
がっこうのじゅぎょうちゅう。
いまはじぶんのかぞくのおえかきをしています。
ココちゃんとニヤちゃんとせきをあわせてがんばってかいています。
でもわたしには、パパもママもいません。
かぞくはごしゅじんさまだけです。
なのでごしゅじんさまをかいてます!
「俺のパパのツノはすっごいかっこいいんだ!」
そういってきょうしつをはしりまわってみんなにみせてるのは、シカのじゅうじんさんのジオくんです。
パパのおおきなツノがとてもかっこいいです。
ジオくんにはツノはないけれど、おとなになるとこうなるのかなぁ?
「私のママはとても優しいわ」
ココちゃんもかけたみたい。
さすがココちゃん、とてもえがじょうずです!
「ニャーも描けたにゃ!」
ニヤちゃんもかけたみたい。
パパとママといもうとちゃん、みんなえがおです!
わたしもはやくかかないと、じゅぎょうがおわってしまいます。
でも、じょうずにかけません。
ごしゅじんさまはもっとやさしくてかっこいいのです。
「マロンのパパはなんで人間の耳なんだ? マロンは犬の獣人だろ?」
ジオくんがわたしのえをみていってきます。
ジオくんのいうとおり、わたしのごしゅじんさまはにんげんです。
わたしのごしゅじんさまは、わたしのパパじゃないからです。
だからパパはごしゅじんさまなのです。
「言っていい事と悪いことがあるわよ?」
「な、なんだよ……」
ココちゃんがジオくんをこわいかおでみています。
ジオくんはちょっとこわがっています。
きっとわたしをまもってくれているのです。
ココちゃんはつよくて、かしこくて、たよりになります。
みんなこわいっていうけど、わたしはだいすきです。
「ココちゃんいいの。わたしのごしゅじんさまはせかいいちのごしゅじんさまだから! ね?」
「お、おう、かっこいいな!」
やっとかきおわったので、ジオくんに、じまんのごしゅじんさまをみせてあげました。
つぎはほんとうのごしゅじんさまをみてほしいです。
「マロン……あんた相変わらず絵が下手ね」
やっぱりココちゃんのことばはささります。
でもしんぱいはないのです。
♢
「ごしゅじんさま~」
おうちにいっしょにかえって、えをわたします。
「お、マロンが描いたのか。俺かな? じょうずだな」
そういって、いつものようになでなでしてくれます。
やっぱりごしゅじんさまはやさしいのです。
「さあ、手を洗ってきなさい」
「は~い!」
わたしのごしゅじんさまはにんげんです。
ごしゅじんさまはほんとうのパパじゃないです。
でも、わたしはごしゅじんさまがだいすきです。
ほんとうのパパはもう、ほとんどおもいだせません。
でも、とってもやさしかったのはおぼえています。
パパもパパのごしゅじんさまがだいすきだっていってました。
かっこよくて、やさしくて、すごいんだっていっていました。
だから、わたしのごしゅじんさまはごしゅじんさまなのです。
パパのごしゅじんさまにも、きっとまけないひとなのです。
リビングにもどってきたら、わたしがかいたごしゅじんさまのえがかざられています。
やっぱりあんまりじょうずにかけなかったけれど、きっとこれもわたしのごしゅじんさまなのです。
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