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7/9

負けたままでは終われません

 「やっぱりあんた弱いわね」


 ココちゃんが負けてしょんぼりと耳を垂らすマロンに言い放つ。

 あれだけ顔にでるんだ、このゲームは向いていないだろう。


 「むぅ~……もういっかい!」


 マロンが場に置かれたカードをかき集めてシャッフルし始める。


 「何度やっても勝てないわよ?」


 「かてるもん!」


 これは新しいマロンの顔を見た。

 いつも素直で聞き分けのいい子だが、友達の前ではそれだけではないらしい。

 

 シャッフルし終えたカードをまた4等分に配り、俺たちの前に置かれる。


 まあ、魔王狩りは手札や引きの運要素もあるゲーム––負け続けることはないだろう。

 

 ♢


 「にゃにゃー……にゃ!」


 勝負は見事に先ほどと同じ展開となった。

 

 「またまけた~」


 どうやら本当にカードゲームが向いていないようだ。

 しかし、マロンはまたカードを集めていく––まだやるつもりのようだ。


 「つぎはかつよ~!」


 またカードが配られていく様をみて、ココちゃんはため息を吐く。

 このままではこの魔王狩りは終わらないな。

 仕方がない。

 

 「マロン、ちょっと」


 「なに~?」


 ココちゃんたちから顔を背け、マロンの耳元で他に聞こえないように話す。


 「勝つための作戦会議だ、静かに聞くんだ」


 「さくせん~?」


 「マロンは顔にでやすい。手を置いただけで魔王かそうじゃないかすぐわかる。その自覚はあるか?」


 「そうなの~?」


 どうやら顔にでていることさえ自覚がなかったようだ。

 

 「それで、だ。次も魔王と数字の残り2枚になったとき、魔王のカードが取られそうになったら悲しそうな顔をして、数字のカードが取られそうになったら嬉しそうな顔をするんだ」


 「それでかてるの~?」


 「ああ、勝てる」

 

 「じゃあ、がんばってみる!」


 顔に出るならそれを逆にとってやればいい。

 これで勝てるはずだ。


 さて、じゃあ第3ラウンドといこうか。


 ♢


 しかし、マロンは引きも弱いな。

 魔王狩りは魔王のカードさえ引かなければ運だけでもある程度勝てるはずなのだが……。


 残ったのはマロンとココちゃん。

 最後の2枚、魔王と最後の数字のカードはマロンの手中にある。

 さっきの作戦を試す機会だ。


 やはりという感じで、ココちゃんもマロンの手札をつまんでは顔をうかがう。

 だが、マロンもよくやっている。

 俺の言った通り、先ほどとは逆の感情表現を見事に演じている。


 「マロン、最後まで残ったあなたの勝率は知ってる?」


 「う~ん……」


 「0%よ!」


 そう格好よく言い放ち、ココちゃんはマロンの手札からカードを引く。


 「やった~!」 


 「な、どうして?」


 どうやら作戦は無事成功したようだ。

 ココちゃんが引き当てたのは魔王カード。

 マロンは作戦がうまくいき、耳をピクピクさせて喜ぶ。

 

 ココちゃんは余程自信があったのだろう。

 驚きの表情をみせ、そのあと先ほどのセリフが恥ずかしかったのか少し頬を赤らめる。


 「じゃあ、いくよ~」


 次はマロンの番、ここであがれればマロンの勝利だ。


 「あ~。また、まおうさん……」


 しかしそれほどうまくいかないのがゲームらしい。

 マロンが引いたのは魔王、また先ほどの状況に戻った。


 「そう。パパの入れ知恵ね」


 ココちゃんがまた顔をうかがった後、俺の方をギロッと睨んで言う。

 なんて鋭い眼光なのだろうか。

 そして、ココちゃんは見切ったとばかりにカードを引く。


 「あ~……」


 「マロン、最後のチャンスを逃したわね」

 

 ココちゃんの手札が場に捨てられる。

 勝負はマロンの全敗で決した。

 

 「もういっかい!」


 「マロン。それはまた後だ、もうご飯の用意をしないと」

 

 マロンがまたカードを集めようとするが、俺はそれを制する。


 「むぅ……」


 可愛くむくれるマロンだが、わかったとカードを箱に直した。


 「部屋に行って遊んでなさい。ご飯ができたら呼びに行くから」


 「は~い! みんなこっち~」


 マロンがみんなを連れて部屋に向かっていった。


 さて、と。

 ご飯の用意をするか、初めてだからちゃんとしたものをつくらないとな。


 ♢


 「こんなものかな」


 テーブルには俺が頑張ってつくった料理が所狭しと並び、その光景になんともいえない達成感を感じる。

 さて、マロンたちが待つ部屋に呼びに行くか。


 「マロン、できたぞ!」


 ん? 返事がないな。

 マロンの部屋の扉前から呼ぶが、中からなにも音が聞こえない。

 どうしたんだ?


 「入るぞ」


 扉を開けるとそこには川の字で眠る、とても可愛い3人の天使が居た。

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