魔王狩りです!
「あまり広い家じゃあないけどゆっくりしていってくれ」
リビングに案内して言う。
「みんな~! カードやろ~」
マロンは早速遊ぶために部屋からカードゲームを持ってきたようだ。
それはトランプと呼ばれるカードゲーム。
2から10までの数字のカードと、1の役割を持つ勇者のカード、11の役割を持つ騎士、12の役割を持つ女王、13の役割を持つ王様が各4枚ずつ、そして魔王と呼ばれる特殊カードが2枚。
それら計54枚を1セットとして使用するこの世界で一番ポピュラーなカードゲームだ。
トランプの歴史は長く、この限られたカードで様々なルールのゲームが考案されてきた。
「いいわよ、なんのゲームをするの?」
テーブルにみんな座り、何のゲームをするかを決めているようだ。
俺はその様子をソファに座って見守っている。
「魔王狩り!」
マロンがしたいゲームを発言する。
「あんたは魔王狩りが好きね、とても弱いのに」
「今日こそみんなに勝つの!」
呆れた表情のココちゃんにえっへんとマロンが宣言する。
どうやらマロンはこのゲームが弱いらしい。
「こりないわね。まあいいわ、やってあげる」
「わたしもいいにゃよ」
「よ~し!」
みんなの同意を得られた所で、フンフンと鼻歌を歌いながらマロンはカードをシャッフルする。
小さな手でのカードシャッフルはとても拙いが、真剣にしているところが可愛い。
そして、一枚ずつ丁寧に4人分に配り分けられる。
ん? 4人分?
「できたよ~。ごしゅじんさまもいっしょにしよ!」
「ん? 俺もいいのか?」
「うん! いっしょがいい~」
最後の1人分は俺の分だったようだ。
呼ばれたら行くしかないだろう。
ソファから腰を上げ、テーブルに移動をしてマロンの隣に座る。
「よーし! やるよ~」
『魔王狩り』、俺は残念ながら友達と呼べるものがすくないので初めてするが、有名なゲームなのでルールは知っている。
54枚セットのカードをそこから魔王カードだけ1枚抜き取った53枚でおこなうゲーム。
簡単にいうと、順繰りにお互いがお互いのカードを引き、同じ数字を2枚集めて捨てていくものだ。
しかし、魔王カードは1枚しかないので捨てることはできない。
最後にその魔王カードを持っているものが負けになる、そういうゲームだ。
簡単なゲームだが、なぜマロンは弱いのだろうか。
配られたカードからセットになったカードを場に捨て、残ったカードを手札として持つ。
「よーし、そろったよ~」
そしてマロンが俺のカードを1枚引き、どうやら同じ数字のカードが手札にあったようでそのカードが場に捨てられる。
こうして魔王狩りが開始された。
♢
「にゃ、にゃにゃ?」
俺とココちゃんの手札がなくなり、残ったのはマロンとニヤちゃん。
残りのカードはマロンが2枚、ニヤちゃんが1枚。
魔王のカードはマロンの手にあるようだが、まだまだ勝負がわからないのがこの魔王狩り。
だが、残念ながら俺はもうこの時点でこの勝敗がわかった。
––マロンの負けだ。
マロンはとても素直な子である。
それはとてもいいことである。
実にいい子に育ってくれている。
だが、このゲームではそれが仇となるのだ。
「にゃにゃにゃ?」
ニヤちゃんがマロンのカードをつまんではその顔をじっと見る。
それに一喜一憂という表情をするマロン。
もちろん魔王カードに手がきたときに喜び、数字のカードに手がくると嫌な表情をする。
「これにゃ!」
「あ~。まけちゃった……」
その結果、見えずとも内容がまるわかりであり、楽々とニヤちゃんが数字のカードを引き当てた。