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最強へと至る者  作者: 源 義景
第一章  少年だった者の過去
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1話  過去の記憶

 カーテンの隙間から陽光が差し込む。外では小鳥が鳴き、薄らと風で揺れた木の葉が擦れる音が聞こえている。ベッドから起き上がり一つ伸びをして外に出る。

 朝特有の冷たくそれでいて心地良い空気が肺を満たした。


「さて、そろそろかな」


 男は呟くと家に戻り朝食の準備をする。暫くすると外でキャッキャとはしゃぐ子供たちの声が聞こえてきた。


「今日も元気だなあ」


 ははは、と柔らかく笑いながらテーブルに朝食を並べる。すると玄関の扉がコンコンと叩かれた。


「ディーおじさぁん!あさだよお!」

「はいはい、起きてますよー」


 元気な声に応えて扉を開ける。扉の前には五人の子供たち。人間の子供が三人、獣人の子供が二人。


(うん、見えた通りだ)


 朝食の数と量で足りると安堵しながら子供たちを招き入れる。


「いいにおーい!!」

「またぼくたちのぶんがあるー!!」

「なんでいつもディーおじさんはわたしたちのにんずうわかるの?」

「・・・・・・すごい」

「ね?すごいでしょ?まいにちこうなんだよ!」


 テーブルに用意された人数分の皿、しかも人間が好む料理と獣人が好む料理が人数通りに分けられているのを見た子供たちが嬉しそうに、または不思議そうに声を上げた。

 男は子供たちの服装を見て、今日はピクニックにでも行くのだろうと判断し、声をかける。


「ほらほら、今日は出掛けるんだろう?早く食べてしまいなさい」


 すると子供たちは目を見開き、口をポカンと開けていた。なんとも間抜けな顔だが子供ということもあって愛らしくつい頬が緩んでしまう。惚け面をしていた子供たちはハッと正気に戻ると、目を料理に向け瞳を輝かせる。おそらくこういった男の対応にもある程度慣れているのだろう。未だ惚け面から元に戻らない獣人の女の子に仲がいいのであろう人間の女の子が声をかけていた。


「どうしたの?」

「・・・・・・なんでわたしたちがでかけるってわかったんだろう」

「わかんないよー。おじさんはいつもああだもん」

「・・・・・・いつもなの?」

「うん。まえきたときなんてわたしがおとこのこなかせたことおこられたんだよー」

「・・・・・・あのときのこと?」

「そーそー」

「・・・・・・でもあのとき、あのおじさんはいなかった」

「そーなんだよねー。ふしぎだね?」

「・・・・・・」


 男のことを話しながらも、お行儀よく食べている子供たちを見ながら男は自分の分を食べ終えて皿を片付け、テーブルに戻り子供たちが食べ終わるのを待った。



 子供たちが料理を食べ終えて元気に挨拶をして出ていくのを、ちゃんと歯磨きしなさいよと注意しながら見送り、男は快晴な空に目を向けた。

 深呼吸をして集中力を高める。音、匂い、空気の揺らぎ。視覚以外の全ての感覚を研ぎ澄ませる。子供たちが走っていった方向。徒歩で五~六分程の距離にある村の方から賑やかな声が聞こえる。


「おかえりなさい。ディーおじさんは元気だった?」

「うん!またいつもみたいにごはんたべさせてくれた!」

「あらあら、良かったわねぇ。今度お礼を持っていかなくちゃ」

「わたしもいくー」

「ええ、そうね。二人で行きましょうね」


 先ほど獣人の少女と仲良く話していた女の子の声だ。もう一つの声は彼女の母親だろう。


「ディーは元気だったか?」

「うん。いつもどおりだったよ」

「そうかそうか。明日狩りにでも誘ってみるか」

「ディーおじさんとかり!?ぼくもいきたい!!」

「なら今日も走り込んでおけ。少しでも体力をつけろ」

「はーい!」


 これは獣人の男の子の家だな。親父さんは相変わらずの狩り好きだ。続けて聞こえてきた声に耳を澄ませると、どうやら思った通りピクニックに行くようだ。村中で子供が騒いでいる。保護者としてついていくのは村でも屈指の実力を誇る冒険者のようだ。心配はいらないだろう。


 「ただいま戻りました」


 背後から発せられた声により広げていた知覚を元に戻す。背後へ振り返ると、そこには褐色肌が魅力的な若い女が立っていた。

 





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