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最強へと至る者  作者: 源 義景
読むにあたって。
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プロローグ

遥か昔

神に祝福された五人の人間がいた。その五人は一人一人が国一つを滅ぼすことのできる力を有していた。


「こわーい」

「ははは、確かに怖いなあ」

 二人分の声がする。大人と子供の声だ。

子供に御伽噺を聞かせているようだ。


 五人は常に行動を共にし数多くの伝説を残してきた。その実力を、力を欲した皇帝がいた。自分の治めている国が衰退し隣接している国々から領土を狙われていたからだ。皇帝は五人を英雄として国に招待し国賓としてもてなした。

 

「こくひんってなーに?」

「とても大切なお客様ってことさ」


 皇帝は五人に対し、是非我が国に属してくれないかと頼み込んだ。しかし五人は自分たちは兵器やお飾りではない。どこか一つの組織に属することはない。と断った。

 五人に対する勧誘は毎日行われた。冒険者ギルドを通して、騎士たちと親交を持たせ、様々な手を使って国の戦力として取り込もうとした。それに嫌気がさした五人は国を出ることにした。それを聞きつけた皇帝がなんとしても引き留めようとした。それも力尽くで。その結果騎士たちと戦闘になってしまい、五人は追放されてしまった。


「どうしてー?」

「行きたくない所に無理やり連れていかれるのは嫌だろう?」

「うん」

「それと同じさ」


 追放され指名手配されてしまった五人は皇帝の刺客たちから逃げ回る日々を送ることになってしまった。他国へ逃げ込んだ五人は人目についたとたんに騒がれてしまい、その国の皇帝にも客人としてもてなされ、そして同じように国に属さないかと持ち掛けられた。結果は言わずもがな。

 その国では強引に引き留められることはなかったものの、皇帝は諦めることはなかった。裏で動き、非合法な手段で五人を手に入れようとしたのである。つまり魔法で操り、薬で操り己がモノとしようとしたのである。


「いやなおうさま」

「ははははは、全くだ」


 他の国でも同じようなことになり、五人は人々から隠れて暮らすことを余儀なくされた。魔法で姿を変え、名前を変えて生きることにしたのだ。五人であることと、強大な力を持っているという特徴があることから、怪しまれないために五人別々に生きていくことを選んだ。


「えいゆうさまたちかわいそう……」

「そうだね、可哀想だ」

「えいゆうさまたちはどーなったの?」

「さぁ、どうだろう。幸せに暮らしたのかもしれないし、そうじゃないかもしれない」

「しあわせだといいなあ」

「そうだね、私もそう思うよ」

「おじさんありがとう!またおはなしきかせてね!」

「ああ、またおいで」

「うん!またねー!」


 おじさんと言われた男は髪は白く顎の髭は短く、綺麗に切りそろえられている。目は鋭く濃い青色の瞳で肌は病人のように白い。病人のような肌をしているにもかかわらずガタイは良く、服の上からでもわかるほど筋肉がついている。どことなく野生を思わせる風貌だ。

 手を振りながら走っていく子供を優しく微笑んで見送りながら男は小さく呟いた。


「……本名や姿を変えて生きることは幸せと言えるのかね」


 子供の走り去った方向では日が沈もうと最後の輝きを放っている。街の少し外れ、森に近い丘の上にぽつんと建つ石造りの一軒家の前で、男は夕日を眺めながら物思いにふけるのであった。

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