表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/14

先輩の正体

「話が長くなりそうだから場所を変えさせてもらったよ」

 拓也は椅子と机がある方に歩き出した。

「突っ立ってないで、こっちにおいで飛鳥ちゃん」

 拓也が椅子を引いて待っている。

「……はい」

 飛鳥は拓也が引いてくれた椅子の所に行き、腰掛けた。

「何もしないからそんなに警戒しなくても大丈夫だよ」

拓也は飛鳥が腰掛けたことを確認すると椅子を押して、もう1つの椅子に腰掛けた。

「まずは僕のことを話さないと飛鳥ちゃんの警戒は解けないみたいだね……」

 拓也は飛鳥に警戒されていることに悲しいのか悲しそうに笑っている。それに対して飛鳥はどうしたら良いのか分からず拓也から目を逸らすようにうつむくしかなかった。

「ごめんね。困らせるつもりはなかったんだけど……」

 拓也も飛鳥から目を逸らしうつむいてしまった。

「いえ……そんなことはないです……私の方こそ困らせるような態度を取ってしまい、すみません」

 飛鳥はうつむきながら深々と頭を下げた。

「そんなことはないよ。僕の方こそ出会ってすぐに説明すれば良かったんだから……今からでも僕の言うこと聞いてくれる?」

 拓也は飛鳥の両頬を手で包み込むように触り、飛鳥の顔を拓也の顔が見えるようにあげた。そこにあった拓也の顔は今も不安そうな顔をしていた。

「……はい」

 飛鳥もなるべく拓也を不安そうな顔から変えたくてうつむくことをしないように意識して拓也の目を見た。

「やっと、僕のことを見て答えてくれたね」

 拓也は嬉しそうに微笑んだ。

「じゃあ、まずは僕のことから話そうかな……」

 拓也は飛鳥の両頬から手を離した。

「僕はこの本の付喪神なんだ」

「……エッ」

 飛鳥はあまりのことに固まってしまった。

「まあ、信じられない気持ちは分かるよ。けれど、最終的には理解してもらうと思うから。時間がないから話を進めるね」

 拓也の口調は焦っていていつもの拓也と違うことが飛鳥には感じ取れた。

今の状況なんだけど……飛鳥ちゃんは僕が放課後渡した白い本を読んだよね?」

「はい。けれど、途中で白紙のページが続いていて……」

「そして、最後のページを見たら文字が書いてあり、その通りの方法で願ったと……」

「その通りです」

 飛鳥は何故そんなことを知っているのか驚いた。

「白い本に書かれていた所までの物語は、本を読むのが好きな女子高生が好きな本の世界の主人公になり物語を体験していく話ではあるけど、その体験前に話は終わっていたよね」

「はい」

「そこで、飛鳥ちゃんにお願いなんだけどこの本の続きを作ってもらいたいんだ」

「続きを作る?」

 飛鳥は言っていることがよく分からず首をひねった。

「そう……白い本は飛鳥ちゃんの体験で作られるからね。だから、白い本を完成させるためにも協力してもらいたいんだ」

 拓也は飛鳥の机の上においている手を握った。

「分かりました。協力させてもらいます」

 飛鳥には拒むことなど出来るわけがなかった。

「ありがとう。飛鳥ちゃんが入りたい本の世界って放課後、読んでいた本の世界だろ」

 飛鳥は驚いた顔で拓也を見た。

「一応、付喪神だからね。それぐらいのことは分かるよ」

 拓也は椅子から立ち上がり、飛鳥の側まで来た。

「では、お姫様行きましょうか」

 拓也が飛鳥に手を伸ばしてきた。飛鳥は拓也の手を取り、立ち上がった。拓也は飛鳥から手を離し、飛鳥をお姫様だっこした。

「神城先輩」

 飛鳥は拓也の予想外の行動に顔を真っ赤にさせた。

「なに? 飛鳥ちゃん」

 拓也は嬉しそうに飛鳥を抱えて、扉の方に歩いている。

「……重いと思うので降ろして下さい」

 飛鳥は手で顔を隠した。

「重くないから大丈夫だよ」

 拓也と飛鳥は扉の前に着いた。

「飛鳥ちゃん、入りたい本の世界のことを思い浮かべながらこの扉を開けて」

 拓也は飛鳥をゆっくりと降ろした。

「分かりました」

 飛鳥は拓也に言われた通りに放課後読んでいた本のことを思い出しながら扉を開けた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ