白い本とイケメンな先輩との出会い
私、金森飛鳥は何処にでもいる女子高生だ。
朝は、毎日学校に行き、授業を受け、放課後は図書室で本を読み、下校時刻になると家に帰るだけの生活である。基本的には1人でいる。その方が気楽だからだ。
グループに入れば話を合わせなくていけないし、相手に嫌われない様にしなければならない。そうしなければ、1人になってしまうからだ。私は、そんなことをしたくないため1人でいる。相手の機嫌取りや顔色を疑いながら話をするのには疲れた。周りからは社会性のない人間、協調性のない人間だと思われているだろうが私には関係ない。1人でいることが好きなのだからいいではないかと思っているからだ。
自分のしたいようにして、相手のことを考えなくて済むからだ。とても、気が楽で楽しい。放課後の図書室は凄く好きだ。人が来ることはないし、好きなだけ本を読むことが出来る。そして、図書委員である私は入れて欲しい本があれば入れてくれるため凄く助かっている。
今、私が読んでいる本は変わっている本で、白雪姫、シンデレラ、ロミオとジュリエット、眠れる森の美女の姫様が同一人物で色んな王子様と恋に落ちる物語だ。他の本では味わえない程面白いものだ。なかなか、同じ女性がいくつもの恋愛に落ちるものを一冊で書いているものはないため読み応えがある。
キーコーン、カーコーンと図書室のスピーカーから下校時刻を告げる機械音が鳴り終わった後、校内に残っているものは後片付けをして下校してくださいと機械の味気ない声が繰り返し流れてる。
「急いで帰る用意しないと‼︎ この本を読んでいると夢中になって時間忘れちゃうから困る」
飛鳥は今読んでいる本を直そうと走って本棚に向かうため、席を立った。すると勢いよく風が吹いた。本が風によりパラパラめくれている。
「うわ、凄い風……窓しめなきゃ……」
窓を閉めようと窓を見たら、本棚に座る拓也がいることに気がついた。学校の女子生徒が叫び出しそうなほどイケメンだ。飛鳥は、綺麗に整った顔だなと思いながら拓也を見ていたが、けれどいつの間に入ってきたのだろうと思った。
「僕の顔に何かついてる?」
私の視線に気がついたのか男の人が話しかけてきた。
「……いえ、何もついてないです……ごめんなさい」
飛鳥自身人と話すことなんて久しぶりだから小声になってしまった。
「君には僕が見えるんだね……」
拓也が微笑みながら本棚から立ち上がり、こちらに向かって歩いてきた。
飛鳥は男の人の微笑みに見とれてしまいただ呆然と棒立ちになるしかなかった。
「僕は神城拓也、よろしくね。君の名前は?」
ただ呆然となっている私の前にきて微笑みながら自己紹介をした拓也。
「……金森……飛鳥……です」
飛鳥はうつむきながら小さい声で答えた。うつむいているため拓也のネクタイが目に入った。この学校ではネクタイの色で学年を分けているためネクタイが緑色と言うことは1つ上の先輩なのだろうと考えていると拓也が飛鳥の顔を微笑みながらのぞき込んできた。
「飛鳥ちゃんか~ よろしくね」
飛鳥は真っ赤になりながら、顔を勢いよくあげた。
「真っ赤になって可愛いね」
飛鳥は拓也の発言に顔を赤くてして、目を背けるしかなかった。
「良かったらこの本、読んでみてよ」
拓也は目を背けている飛鳥に持っていた白い本を飛鳥の手に持たせた。
「今夜あたり、飛鳥ちゃんとはまた会えそうな気がする」
拓也は微笑みながらそれだけ言い残して出て行ってしまった。
拓也が図書室から出て行った後、飛鳥は下校時刻を過ぎているため見回りに来た先生に怒られ、急いで本を片付け、図書室を出た。