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9 師弟

本日更新1回目です。


続きは夜の予定です。

 実は魔力の才能が存在していたことが判明し、静かに涙を流すエステル。


『さてと、そろそろ落ち着いたかなエステル?』


「ええ。お恥ずかしい所をお見せしました。もう大丈夫です」


 その涙も止まり、すっかり元の無表情へと戻るエステル。


『なら良かったよ。そのままボクの話を聞いて貰えるかな?』


「はい。構いませんよ」


『さっきも少し話したと思うけど、元々ボクは君の肉体を乗っ取るつもりだったんだよね』


「確かにそのように仰ってましたね」


 事も無げにそう言うステラに対し、エステルの反応もまたなんとも冷めたものであった。


『結果として君の強い抵抗のせいで返り討ちに合った訳だけど、ボクはまだ肉体を取り戻すことを諦めちゃいないんだ』


「……では再び私の肉体を奪おうとするのですか?」


 そんなステラの言葉を受けて、エステルが身構える。


『いやー。それは止めておくよ。なんか大変そうだし。それに何よりボクは君の事を気に入っちゃったからね』


「そうですか……。ならばどうするのです? 今度は別の人間の肉体を奪おうとでも?」


『まあ可能ならそれでもいいんだけどね。残念ながらボクの器と成り得る素質を持った人間って滅多にいないんだよねぇ。なにせ君がここに来るまでに約千年も待たされたくらいだからね』


「……千年ですか。それはなんとも想像が及ばない年月ですね」


 普通の人間は100年生きれば良い方なのだ。まだ10歳の幼いエステルにとっては尚更の事である。


『だよね? 流石のボクでも結構きつかったんだよ。まあそれでね話を戻すと、別の肉体を探すよりもいっそ本来のボクの肉体を探す方が案外手っ取り早いかなぁって思ったんだよね』


「本来の肉体ですか。しかし千年も経っているのに、まだ残っているのですか?」


 精神の抜けた肉体が朽ちるのに、千年という年月は十分すぎる程に長い時間だ。普通の人間の肉体ならばとっくに大地へと還ってしまっているだろう。

 だがそんなエステルの懸念を、ステラはあっさりと否定する。


『そこは心配ないよ。ボク程の大魔導師の肉体ともなれば、千年どころか億年経っても綺麗なままなのさ』


「そうなのですか。では何故最初からそうしなかったのです?」


『そんなの出来るならそうしてたよ。考えてもみなよ? ボクはずっと魔導書の中に封印されてたんだよ? 肉体を探しにいけるはずなんてないだろ? でもね今は違う。エステル――君さえ協力してくれさえすれば、ボクの肉体を見つけ出す事もきっと出来るはずなんだよ』


 魔導書とは違いエステルは自由に動き回る事が出来るのだ。ならばステラの肉体を見つけ出す事も決して不可能ではない、そうステラは主張する。


「なるほど、お話は大体分かりました。ですがこちらも一つだけ条件を出しても宜しいですか?」


『条件、ね。まあなんとなく想像はつくけど。いいよ。言ってみなよ』


「ありがとうございます。ステラ、どうか私に魔術を教えては頂けませんか?」


『ふふっ、構わないよ。ボクとしても宿主が弱いと色々と困るからね。いいよ、君をこの大陸で2番目の魔導師に育てて上げてみせるよ』


 予想通りのエステルの願いに対し、自信たっぷりにそう返すステラ。


「1番目では無いのですか?」


『残念ながら1番はこのボクさ。そう決まっているからね』


「……では当面は2番を目指すとしましょう」


『ふふっ、まあ頑張るといいよ』


 1番を諦める気など欠片も見えないエステルの態度に、苦笑を漏らすステラ。

 こうして古の大魔導師と落ちこぼれと呼ばれた少女の師弟関係がここに成立したのだった。


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