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18 新王の誕生

本日更新2回目です。

続きは夜の予定です。

 ハインリヒとユリウス、双聖国でも屈指の強者である2人の死闘も、ついに終わりの時を迎えた。


「はぁ……っ、はぁ……っ。流石ですねユリウス陛下。十分に貴方の事を評価していたつもりでしたが、どうやらまだ見積もりが甘かったようです」


 全身のあちこちに傷を負い、相当な疲労が窺えるハインリヒ。だが致命傷はなく、剣を構えて両の足で立っている。


「ふ、ふふ……っ。そ、そうか……、王殺しの英雄に……がふっ! そう……評価されるのならば……、わしもそう捨てたものでは、無かったのだな……」


 対するユリウスの状態はそれよりも遥かに悪い。服は血の色が混ざり赤黒く染まっており、放っておけば出血多量で間違いなく死ぬだろう。もはや両の足で立つ事すらままならず、剣を杖代わりにしてどうにか立っているような有様だ。


「感謝しておりますユリウス陛下。出来れば最後まで忠誠を捧げたかった」


「ハインリヒ……この国をどうか、滅ぼさないでくれ……」


「……お任せ下さい。そしてどうか安らかな眠りを」

 

 その最後の言葉を強く噛み締めるハインリヒ。そうして彼はユリウスを苦しみから解き放つべく剣を振るい、その首を刎ねるのだった。


 戦いに勝利したハインリヒは、その遺体を部下達へと預ける。彼にはまだ他にやるべき事があった。


「……遺体の扱いは丁重に頼む」


「「はっ!」」


 部下の騎士達がハインリヒの言葉に従い、粛々と後始末に動き出す。そんな彼らには2人の強者たちへの称賛や、誇り高くそして強かった王への敬意の色が窺える。


 部下達が忙しなく動く中、ハインリヒにもまた試練が降り掛かる。


「くぅっ、儀式無しの刻印に、これほどの負荷が存在するとはっ」


 ユリウスという宿主を失った大聖印が次の宿主として選んだのは、大方の予想通りハインリヒであった。公になっている彼以外の闇の小聖印の所持者は、騎士団長リーンハルトとユリウスの息子アルヴィスの2人となる。だがリーンハルトはユリウスよりも年嵩な為で優先順位が低く、実質はハインリヒとアルヴィスの2人での争いとなる。そうなればハインリヒの勝利は疑う余地もない。

 ハインリヒが新たな大聖印の主に選ばれたのは、成るべくして成った結果なのであった。


 大聖印の継承が始まり、ハインリヒの右手に刻まれた闇の小聖印が 漆黒のオーラを放ちながらその姿を徐々に変化させていく。

 その変化はハインリヒの全身に激痛をもたらすが、どうにか歯を食いしばって耐え抜く。

 やがて痛みは止み、より大きくより精微なものへと変貌を果たした刻印がハインリヒの右手には存在していた。


「……ふぅ、終わったか。我が名はハインリヒ・ケーニヒ・ユングヴィ!」


 配下の騎士達を鼓舞するが如く、闇の大聖印が刻まれた右手を掲げて見せるハインリヒ。

 偽りであるが故、ハインリヒの魔導師としての能力が向上した訳ではなかったが、それでも聖王としての権力を手に入れたのは紛れもない事実であった。


「これこそが次代のユングヴィ聖王の名だ! 新たなる時代の幕開けに喝采をあげよ!」


「うぉぉぉっ!! 聖王ハインリヒ万歳!!」


「新たな王の誕生に祝福を! ユングヴィに栄光あれ!!」


 騎士達が作業の手を止めて、剣を掲げながら口々にハインリヒを称える言葉を口にする。

 誰もが――ハインリヒでさえもその先行きに内心では不安を抱いており、だからこそ彼らはそれを払拭するかの如く大いに声を上げるのだ。


 そんな仮初の熱気に包まれた玉座の間に、一人の闖入者が突如としてその姿を現した。


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