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10 適性確認

本日2回目の更新となります。


本日は後1回更新予定です。

 晴れて師匠と弟子という関係となったエステルとステラの2人。


『では最初の授業といこうかエステル君。ちなみにボクの事は尊敬を込めてステラ師匠と呼んでくれていいよ』


「はい。ステラ師匠」


 ステラのそんな言葉に対し、素直に従うエステル。


『……いや、やっぱり止めとこう。呼び捨てのままでお願い』


 だがそんな態度の何がいけなかったのか、ステラは自身の言葉をあっさり取り下げてしまう。


「ではそのようにしますね、ステラ」


『ゴホン、さてと本題に移りたいところだけど、その前に一つ確認していいかな?』


「何でしょうか?」


『いや、君の魔術適性については分かったんだけどさ。それが今の時代でどのくらいの水準なのか知りたくてね』


「なるほど、それは確かに道理ですね」


 ちなみに今のエステルの魔術適性は以下となる。


 ◆◆◆


[名前]エステル・フォン・シュヴァイツァー

[保有魔力]測定不能

[魔術適性]

 光:A

 闇:S

 火:B

 水:C

 風:B

 雷:B

 土:C


 ◆◆◆


 ステラが生きた時代から千年も経っているのだ。当然、魔術師の実力にも変化はあるだろう。それ次第で当然今後の方針も変わってくるという訳だ。


「ですが、私が存じ上げているのは僅か数名だけですね」


 自身の魔術適性を、わざわざ喧伝する魔術師は数少ない。エステルだって自身の魔術適性について他人にわざわざ語ったりはしないのだ。ただ彼女の場合は英雄2人の間に生まれた期待の星であったため、自然に周囲の耳目を集めてしまっていた。そしてそれが仇となり、彼女の無能さは双聖国中に広まる事となってしまったのだ。


『それで構わないから教えてよ』


「分かりました――。ではまずユリウス陛下についてです」


『へぇ、聖王の詳細な魔術適性なんて普通は機密情報なんじゃないの?』


「えっと、大分前にお父様が教えてくれました」


『いいのそれ?』


「……さあ?」


 機密情報の扱いについては今は目を瞑り、エステルは自身の記憶の中にある聖王ユリウスに関する情報を引っ張りだして、紙へと書き記していく。


 ◆◆◆


[名前]ユリウス・ケーニヒ・ユングヴィ

[保有魔力]540000

[魔術適性]

 光:B

 闇:S

 火:B

 水:D

 風:C

 雷:D

 土:C


 ◆◆◆


『ふーん。聖王って割りにあんまり大した事ないんだね。適性だけならもしかして君の方が高いんじゃない?』


「ユリウス陛下の大聖印は疑似化してますから……。それにあの方は剣技なども優秀なので」


 もしそれが真なる大聖印であったならば、ユリウスの闇の魔術適性はもう1ランク上となっていただろう。


『なるほどねぇ』


「では次は私のお父様ですね」


 通称、黒騎士ハインリヒ。大陸屈指の実力者でもある。


『たしか三英雄とか言われてて、この国で一番の騎士なんだっけ?』


「この国という括りなら恐らくアレクシス陛下の方がお強いかとは思いますが、ユングヴィ領に限っての話ならばお父様が最強のようですね」


 その声の響きは、自分の父親を誇る娘のものであった。


『エステルって、もしかしてお父さんの事好きなの?』


 それを聞いて心底意外そうな声で、ステラがそう呟く。


「ええ大好きですし、一人の魔術師としても大変尊敬していますよ」


『……なんか君の以外な一面を垣間見た気がするよ』


「……そうなのですか? ああ、それで確かこんな感じだったはずです」


 続いてハインリヒの魔術適性が紙へと書き記される。


 ◆◆◆


[名前]ハインリヒ・グレイス・シュヴァイツァー

[魔力量]560000

[魔術適性]

 光:A

 闇:SS

 火:B

 水:C

 風:B

 雷:C

 土:D


 ◆◆◆


『親子だけあってか、流石に良く似てるね』


「言われてみれば確かにそうですね。やはり血縁というのは大きいのですね」


 魔術師にとって生まれ持った才能とは、中々に覆しがたい存在であった。そしてそう言う意味ではエステルは恵まれていると言えるのだろう。


『そだねぇ。しっかし闇の適性がSSランクまでいってるのかー。ホントなんで君のお父さんが王様にならないんだろね?』


「まあ色々と政治の世界は面倒なようですよ」


『そっか。やっぱ人間って面倒な生き物だね』


「最後はユリウス陛下の嫡男にして、次期王候補筆頭であるアルヴィス様ですね」


『なんでそんな奴のまで知ってるの?』


 エステルを目の仇にしていたアルヴィスである。自分からは教えることはまず無いと言ってもいい。


『その……時折大声で語っているのを何度も耳にしたので、気が付けば覚えていました』


 自尊心の強いアルヴィスは取り巻き達へと、時折自身がいかに才能溢れた存在であるかについて語っていたようだ。


「……なんか見た目は悪くないけど、凄く面倒そうな性格してるみたいだね、その子」


 エステルの記憶を探ったらしいステラは、げんなりとした声でそう呟く。


『ええ……まあ』


 実際、エステルは何度も絡まれていたせいもあって、彼に対して全く良い印象を持っていない。


◆◆◆


[名前]アルヴィス・グレイス・ユングヴィ

[魔力量]290000

[魔術適性]

光:B

闇:S

火:C

水:C

風:C

雷:C

土:C


◆◆◆


『なんか小さく纏まってる感じ? これでホントに次期王候補筆頭なの?』


「……以前は羨ましく思っていましたが、こうして改めて見てみると確かにあまり大した事はないように感じてしまいますね」


 適性だけを比べれば、ほぼエステルの下位互換にしか見えない。


『ああ、父親と一緒で剣術とかが得意な感じなのかな?』


「……そう言った話は特に耳にした事はありませんね」


 もしそうだったならば自己顕示欲の強いアルヴィスの事だ。間違いなく声高にその事を叫んでいたはずである。


『なるほどねぇ。この国の未来はとっても明るいみたいだね』


「だといいのですけど」


 そんな皮肉めいたステラの物言いに対し、エステルは素直に故郷を憂う言葉を返すのだった。


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