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あなたがいて、私がいた

少しずつ更新していきます

 今、私何やってんだろ。


 いろいろな意味で詰んでるって言うか。


 人生って難しいですね。


 周りの奴らはイージーモードなんだろうな、頭の方もイージーモードでご都合主義、乙。


 遊園地でカップルや家族連れの客を見ながら、缶コーヒー片手にベンチで悪態をつくのは某公立高校に通う高校2年生の女子だ。


 名前は神崎彩芽かんざきあやめ


 彼女は友人の高坂美雨こうさかみうに誘われてWデートの真っ最中。


 しかし、彼女は脚を組みながらため息を吐いている。


 彼女の悩みの種は今、ちょうどクレープを両手に持ちながら来ている彼氏の事だ。


「お前は全てテンプレ通りにしかできねぇのかよ‼︎」


「ーん、どうした彩芽、なんか言ったか?それよりほら、食べるだろ、イチゴ好きだって言ってたし」


 私が好きだって言ったのイチゴじゃなくて、ミカンなんですけど。昨日は言ったんだけど。


「何いつまでも不機嫌にしてるの。せっかく来たんだから、楽しもうよ。一緒にいる高坂さんにも悪いでしょ」


 美雨は今、彼氏と一緒にポップコーンの列の並んでいる。隣にいる男と楽しそうに……


「ほら、クレープ持ってくれよ。食べよう」


 前にいる確か……信一、いや大和、省吾だったような……まぁいいや、が無理矢理持たせてきた。


 そしてパクっ


「……甘い」


 そう、甘いただそれだけ。それ以上でも以下でもない。


 前に甘いの苦手って話したこと忘れてんな、こいつ馬鹿か。


 なぜ、彩芽は彼氏(仮)をこんなにも邪険にしているのかそれは、彼女の生い立ちから説明していこう。


 彩芽は厳格な大学教授と格式高い華道家の母との間に生まれた。


 彼女の両親は当時、多忙を極め彩芽を生んでからはあまり家には居ることはなく、彼女は父方の祖父母の家に住んでいた。


 彼女は親からの愛情は全く受けずまた、祖父母も父親同様に厳格であり、彩芽は幼少の頃から厳しく躾けられた。


 また、3歳年下の妹ができ、仕事が落ち着いてきた両親は妹ばかりに目が行き、彩芽はそれをただ、ただ見ていた。


 両親同様に優秀に育っていき有名私立小学校に入学したが、表情に乏しく、近寄りがたい雰囲気から周りの子たちにいじめられていた。


 勿論、先生にも頼ったが真剣には対処してくれず、彼女の状態は一向に変わらなかった。


 祖父母に迷惑をかけるのも憚られ、彼女はストレスを内に秘めていった。


 エスカレーター式に中学校に上がると彩芽のいじめは加速していった。


 容姿が優れ、勉強ができ、スポーツ万能な彩芽は同年代の女子から格好の標的にされ湯水のように注がれ彼女は不登校になった。


 その頃になると祖父母も彩芽の様子に異変を感じ、今までの態度が一変し優しく接するようになった。


 しかし、彩芽のストレスは解消されたわけではない。


 彼女は性格が捻くれ、物事全てに悲観的になり、生きる希望もなくしていた。


 祖父母は部屋に篭っていたら、世の中に疎い子になってしまうと思い、今まで使わせて居なかったパソコンを買い与えて見聞を広げるように促した。


 しかし、彼女は見聞を広げることはなかった。ある意味では広がったと言えるが……


 パソコンを与えられてから数日後、ある一つのサイトである漫画を読んだ。


「親友よりも、それ以上」


 と言う題名の、


 レズ物のエロ同人だった。


 彼女の体には衝撃が走った。女の子同士それも、親友である子と一線を越えてしまっているその内容に。


 しかし、衝撃を受けた後にはなんとも言えない気持ちがし、この抑えきれないドキドキは彩芽にとって初めての体験だった。


 その日から、様々な百合、レズ物のエロ同人を買い漁り、エロゲーをやり、最後には自分で18禁レズ漫画を描き始めた。


「この部屋、親が見たら泣くだろうな」


 祖父母はまた、意欲的に物事に取り組み始めた孫に前の反省をいかし、好きなことを好きなだけやらせた。その内容を知らないままで。


 ネットの中で同じ、趣味の友達が出来たし、彼女が死にもの狂いで描きこんだ漫画はそれなりの評価を受け、コミケにも出すようになった。


 彼女は順風満帆な生活を2年半続けた。


 その頃になると一つの夢が生まれていた。


「あぁー、高校に言って親友以上の関係の女の子ができたらなぁ漫画みたいに」


 しかし、学校に行ったらまた、いじめられるんじゃないか?社会不適合者の自分を世間は受け入れてくれるのだろうか?と。


 そんな、考えが頭にあり、高校進学を諦めようとしていた彩芽に一つの出会いがあった。


 それは以前、ネット上で知り合った私の漫画を好きだと言ってくれる女性で、話しているうちに気が合いいつの間にか仲良くなっていた人からだ。


 彩芽がその人に○○市に住んでいると言う内容を話すと


「私も○○市なんです。今○○高校に行くために勉強してます」


 その言葉を聞いた瞬間、彩芽は言った。


「私も実は○○高校を目指していて……」


 その時2人は次会うときは入学式の前日に校門の前に8:00と言う約束をして連絡をやめた。


 彩芽は残りの3ヶ月を寝食問わずに勉強した。なにせ、屈指の公立の進学高だったからだ。


 必死の勉強と元々の頭の良さで2年半のブランクをものともせず余裕の入学を決めた。


 孫が再び、学校に通うことに祖父母は涙を流し彼女を見送った。


 今まで身なりなど気にして居なかった彩芽は身だしなみをしっかりと整え、長くなったサラサラの髪を振りながら春の桜が咲く道を思い馳せながら学校に向かった。


 彼女が学校の門に後少しで着く頃、彩芽とは反対の方向から一人の女の子が、歩いてきた。


 そして、約束の時間ピッタリに門の前に2人が並んだ。


 入学式は明日だ。ここにこの時間に来るってことは……。


「おはよう。あなたが彩芽さん?」


 そこには黒のショートヘアがよく似合う可憐で彩芽より小さな女の子がいた。


「えっあ、はい、私が神崎彩芽ですけど……あなたは?」


 ハイでました。2年半の対人ブランクが生んだ。コミ障。最悪、出会いが台無しだよ。しかも、相手の本当の名前知らないし。


「あっ、まだ教えてなかったですよね。初めましてかなぁ?私は高坂美雨です。よろしく彩芽さん」


 ヤベェーめっちゃ可愛い私のモロタイプだよ美雨ちゃん。こんな子と高校に通うのかぁ〜、きっと楽しいだろうなぁ。


 そんなことを考えていると


「あのー彩芽さん、大丈夫ですか?」


「はっ、いえ大丈夫です。なんか、こんな可愛い子と一緒に通えるなんてすごいなぁ〜って思って」


「ふふ、彩芽さんって男の子みたいなこと言うんですね。でもぅ、私より彩芽さんの方が綺麗ですよ」


「いや、滅相もない。美雨ちゃんの方が……」


 あちゃー、今日あったばかりの人をいきなりちゃん付けで呼んでしまった。後、長年男視点で漫画を描いていたから、喋り方がおかしい。どうしよう。


「気にしなくても、いいよ。美雨ちゃんで。じゃあ、私も彩芽さんのこと彩ちゃんって呼ぶよ」


「はい、お願いします」


「そんなにかしこまらないでいいよ、今日からよろしくね。彩ちゃん」


「はい、よろしく美雨ちゃん」


 こうして、彩芽は美雨と高校生活を送るようになった。


 そうして2人は楽しい高校生活を送りました。めでたしめでたしめでたし


 じゃねぇーよ‼︎


 なら、今なんで名前も知らないような男と遊園地に居なきゃいけねぇーんだよ。


 それは1カ月前のこと……


 美雨との高校生活が1年が過ぎ1年生の頃は同じクラスになれなかったが、私はいつも一緒に帰り(家が反対方向だが私が迎えに行き)、いつも一緒に帰り(美雨の家まで送って行き、帰りは漫画の原稿を書くためダッシュで帰る)、休みの日には一緒に出かけて、美雨の家に泊まったときは小さいころの美雨を見てニヤニヤしたりと仲睦まじい様子だった。


 しかし、二年生になると美雨は私よりも先に家を出て、私を避けるようにして学校から帰るようになった。


 私はおかしいなぁと思い、緊張したが本人に聞いてみた。


「あ、彩ちゃん今までずっと言えなくてごめんね。私彼氏ができたの」


 ……なんですと。


 彼氏ってあの彼氏だよな。男の子の。うん、男じゃなきゃ彼氏って言わないよな。てってことは、今まで私が避けられてたのって彼氏と学校に行き、彼氏と帰るためなの。えっ……それじゃあなんで私に言ってくれなかったの、なんで、私たちって親友じゃなかったの、なんで……邪魔なら邪魔って言ってくれれば私は身を引いたし、美雨に嫌われなければそれでいいのに……どうしてなの美雨ちゃん。


「だから、ごめ「美雨ちゃん……」えっ」


 彩芽は涙を流していた。


 自分でも分からない。


 今まで、泣くなんて言う経験がなかったからどうして涙が溢れているかわからなかった。


 そして、止め方も。


 彩芽は走って逃げた。


「彩ちゃん‼︎ちょっと待ってぇー‼︎」


 美雨の声は聞こえていただが足を止めることはなかった。


 なぜなら、泣いている自分の姿を美雨にだけは見せたくなかったからだ。


 美雨に悲しい顔なんて見せたくない。


 笑っている顔しか見せたくない。


 だって初めてできた掛け替えのない友達なんだもん。


 あぁーあ、やっちゃたな。私なにやってんだろ。親友に彼氏ができたくらいで動揺して、挙げ句の果てには泣きながら走って逃げるんだもの。美雨に嫌われるな、きっと。また、あのころに逆戻りか


 その日から3日間、彩芽は学校に来なかった。


 彩芽が再び、姿を現した時には感情を表に出していなかった。昔の彩芽になっていた。


 目は赤く腫れ、今まで泣いていただろうと思わせる雰囲気だった。


 美雨に声をかけられるが差し障りのない返事をして、接した。


 そうしていると誰も話しかけなくなった。美雨は私を気遣って話しかけてくるけど彩芽から彼女を避けた。


 そんな時だろう、一人の男が私に告白してきた。彩芽も自暴自棄になって適当にOKした。


 そして、数日付きあって見て彩芽は彼氏(仮)がナルシストでバカでそれなりに女の子から人気がある事が分かった。


 また、嫉妬と私の態度に腹を立てた連中によるいじめが影で始まった。


 そんなことを彼氏(仮)が知るはずもなく。彩芽に執拗以上に話しかけた。


 そして、いじめは激しくなっていく。


 また、学校に行くのを止めたときに美雨からの連絡があった。


 "最近、学校に来てないみたいだけど大丈夫?久しぶりに彩ちゃんに会いたいなぁ〜今週の日曜に遊びに行かない?場所は○○遊園地でどう?"


「やさしいなぁ、……みうっちゃん、は、」


 彩芽はまた、泣いていた。


 これは前に、美雨の前で見せた涙とは違った。


 温かい気持ちがした。


 私が経験したことがはない、この気持ちは


「やっぱり、そうなのかな」


 そうだ、気づいたんだ、私は自分でも抑えきれないくらいに


 美雨のことが大好きなんだ……


 そして、今度はしっかりと伝えよう。


 そう決心した。


 そうして、二つ返事でOKして、遊園地に行くことにした。


 そして、今にいたる。


 そう、始めは美雨と2人で過ごすはずだった。


 しかし、遊園地に行く途中で偶然にも彼氏(仮)と美雨の彼氏らしき人物が2人でいるのに会ってしまった。


 それから、こいつらも付いてきてWデートの形になっている。


 そうこう、しているうちにもう夕方だ。


 早くしないと閉園してしまう。早く伝えないと。


「最後に観覧車乗ろうよ、彩芽」


 彼氏(仮)が空気の読めないこと言っている。


 そして、私の腕を掴もうとした時、


「彩ちゃん、私と観覧車に乗ろう」


 美雨がそう言ったのだ。


 私の気持ちでも感じとったのかなぁ。


 彩芽はそう思った。


「えっ‼︎美雨ちゃん、そこは彼氏のおれぐぁっぷ」


 彼氏(仮)が変なことを言おうとした時、美雨の彼氏が彼氏(仮)の口を押さえていた。


「美雨、俺らは先に帰るは。今日は友達の彼女と遊ぶ約束をしてたんだろ、邪魔して悪かったな。最後くらいは、2人で乗ってこい」


 美雨の彼氏は彼氏(仮)を連れて足早に帰った。


 やっぱ、美雨の彼氏だなぁ。ちゃんとしたいい奴じゃん。


 私がダメだったとしてもあの彼氏なら、しょうがないか。


 彩芽はそう思い、美雨の手を引いた。


「早くしないと乗れなくなるよ」


 彩芽たちは観覧車へと急いだ。


 ギリギリの時間で観覧車に間に合い、2人隣合い太陽の沈みかけたオレンジ色の中に佇んでいた。


 どうしよう、やっぱり緊張するな


 と彩芽は踏ん切りがつかないでいた。モジモジと何かを言いたそうに。


 すると、いきなり美雨がこちらを向いた。


「多分、彩ちゃんの言いたいことわかるよ」


「えっ」


 彩芽は驚いた。


 美雨の澄んだ瞳を彩芽に向けている。


「だって、その気持ちは彩ちゃんがちゃんと自分の気持ちに気づく前、いえ、初めて校門の前であったときから、私が思っていたものだから」


 彩芽は慌てて言った。


「いや、だって、美雨ちゃんは私を避けてたし、彼氏だって作ってたし、それに「彩ちゃん、聞いて‼︎」っ」


 美雨は真剣な面持ちだった。


「あれは違うのそうだけどそうじゃないの」


 美雨が続けた。


「私はその気持ちに気づいていたの、だけど勇気がなくて言い出せずにいた。もしかしたら、いや、彩ちゃんは私とは違うって、だから、彩ちゃんが離れる前に離れてしまおうって、彼とも付きあったけど、やっぱり違うって」


 さらに続ける。


「美雨ちゃんに本当の気持ちを伝えようと思ったけど、本人を前にすると、テンパって変なこと言って彩ちゃんを傷つけた。彩ちゃんにそっけなくあしらわれるように思った。先に傷つけたのは私なのになに自分で傷ついてんのってね」


 さらに


「そして、やっぱり私の気持ちは変わってなかった。前よりも色濃く分かった。だから、今日は勇気を出して彩ちゃんを誘った。本当の気持ちを伝えるために……」


 彩芽は……


「神崎彩芽さん、私はあなたのことが大好きです。親友なんかじゃない、もっとそれ以上の関係になりたい。私と付きあってください」


 彩芽は涙ぐみながらに応えた。


「はいっ」


 それから、2人は唇を重ねた。


 どれくらいしていただろうか。


 それは淡く、甘い味がした。


 2人は手を繋ぎお互いの温もりを確かめた。


 ギィー、ギィー


 しかし、無情にもその時間帯は長く続かなかった。


 ガンっ‼︎


 大きな音を立てて観覧車が傾いた。


「きゃっ」


 バランスをうしなった美雨は転びそうになった。


 それを支え用と彩芽が動いた瞬間


 バンっ‼︎


 2人の乗るゴンドラが無情な音とともに落ちて行く。


「彩芽っ‼︎」


 とっさに彩芽は美雨を抱き抱え自分を下にした。


 無駄だと分かっていた。


「みっ……」


 その言葉を言う事は出来なかった。最後に美雨の温かさを感じることができた彩芽はそのまま美雨と共に地面に落ちて言った。






これは、以前に書いていたものです。


投稿しないで埋もれていました。


シリアスもの百合作品になると思います。


作者の都合で次の投稿は2月末になります。


温かい目で見守ってください。

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