プロローグ
卒業式、そう俺は今中学の卒業式の最中だ。
しかし・・・どうしても眠くなってしまう。
過去2年、祝う側として卒業式に出席してきたが、
校長先生やPTAの話ほど眠くなるものはない。
・・・ああ・・・やっと話が終わる・・・
次は卒業証書だ。普通の中学生ならここで緊張して
眠気を覚ますのだろうが、俺にそんな芸当は
できない。なぜなら、日々のつまらない生活のせいで俺は緊張感というのを忘れてしまったからだ。
もっと刺激があったのならこんなことにはならなかったのかもしれないな。
ああ・・・もう意識が
遠退く・・・せめて卒業証書だけは受け取りたかったな・・・
どのくらいの時間が経ったのだろう。
俺はそのままの場所で目を覚ました。
記憶がぼんやりしている。
根本から思い出していこう。
えーと、自分の名前は、松野 風、よし、覚えている。これで少なくとも記憶喪失ではないことがわかった。うん、大体全部覚えている。
・・・じゃあ俺は今何で此処に居るのだろうか?
居眠りした俺への罰か?それともドッキリか?
「おーい、誰かいないのかー、驚かそうったって無駄だぞー。」
返事はない。
まさか・・・
最悪の可能性を想像した。
「とりあえず暗いな。電気を点けてから考えるか。」
並べられた椅子の間を歩いていく。
「此処だったか?」
壁のスイッチを手で探る。
パチッ
体育館の中がパッと明るくなる。
誰もいない。
これはゲームではない。
あんな可能性はあり得ない。
そう自分に言い聞かせる。
いや、扉を開けばすべてわかること。
風は扉へと向かう。
そしてノブに手をかけた。
ゆっくりノブを回す。
そして押す。
押せない。
可能性は確信へと変わった。
「閉じ・・・こめ・・・られ・・・た・・・?」
その事実が風を恐怖で包んだ。
だが何故だろう。
風は恐怖と共にゾクゾクとしたなんとも言えない感情を抱いていた。
そして理解した。これこそ自分の望んだ感情なのだと。
風はの頭が冴え渡った。今までにないくらいに。その瞬間今までの体育館にはなかったものが目に入った。
「絵に書いたようなパスワード入力装置だな。」
横に3桁ずつ並んだ0~9とEnterのスイッチ、まさしくパスワード入力装置が扉の横にの壁に取り付けられていた。
「自力で脱出しろってか?やってやろうじゃねえか!」
こうして松野 風の脱出劇が始まった。