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終末三千年。  作者: 高倉 悠久
第一章
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第四話 ~執着と怯え~

 

「あら可哀想に、この子は両足を失ったのねぇ。」

 可哀想に思う気持ちなど微塵も感じられないような声で、金髪の女が言う。

   

 ―――この、腐れ政府め。お前たちの取り立てのせいで、俺たちの生活は日に日に苦しくなっているんだ。


 本当に可哀想なのは、両腕を失うような戦火が降り注いだことではない。

 生き残りたかった。

 生き残るためならば、死んでもいいと思った。

 矛盾しているようだが、俺は本当に、そのぐらいの覚悟で生にしがみついていた。

  

「あなたなら・・・、奴隷以外にも使えるかもしれないわね」

 

 ―――生に貪欲な目をした俺は、悪魔に付け入られたんだ。

 女が顔を上げ、にいっと笑う。その表情はさして汚くもなかったのだが、内面から溢れでる感情は、・・・腐敗している。

 奴隷以外の末路。考えられるものは、いくらでもある。そして、そのどれもがろくな道ではなかった。・・・年若い俺にすらそれだけ思いつくという事は、実際のところ、悲劇はもっとたくさん起こりうるということだ。

 

 俺は、堅く目を瞑った。

 

 それでもまだ、生きていたかった。

 

 

☆☆☆

 

 

 目を開けた。モノクロの夢の中から引き戻されたばかりの、視界がチラつく。

 

 ―――そうだ、そういえば俺は、捕縛されてたんだっけ。


 政府と俺の馴れ初めを夢に見るなんて、最悪な寝覚めだ。これもみんな、俺を捕縛した奴らのせいだ。

 視界にはピンクと黒の派手な壁、体には硬い縄の感触。そして極めつけに、体の下にはふかふかのベッド。

 

 ・・・意味が分からない。俺は、捕縛されたんじゃなかったっけ。

 

「・・・・・・・・・」

 体を捻って方向転換させると、壁でふさがれていた視界が広がった。

 どうやら俺のいるところは、まともな部屋であるらしかった。狭いなりには最低限の家財道具はおいてあったし、俺のいるベッドの横の椅子には・・・・・・

「おい。・・・おい!」

 ワイシャツの上に緑エプロンを着用した男が居眠りしていた。どうやら、俺を捕縛したあの男のようだ。

「あんた、見張りじゃないのか。そんな不用心に寝てていいわけ?」

「う・・・・・・」

 目を覚ました男は、2・3回瞬きをして、俺に目を向けた。

「ああ、目覚めたんか、気分はどうや?」

「むしろこっちのセリフだ」


 ・・・意味が分からない。俺は、捕縛されたはずだったんだが。

 

 男はヘラヘラ笑いながら、能天気に言う。

「いやー、ついうっかり。俺の仲間には内緒にしとってなー」

「あんたの事情なんか知らねえよ」

「俺は河村幸生かわむらゆきおや。よろしくな!」

「そんなこと誰も聞いてねえ」

 どうも、調子が狂う。こっちは拷問ぐらいは受ける覚悟をしていたというのに、この気の抜けた雰囲気は何だ。

「・・・で、俺をこうして捕まえている目的は何だ」

「え?ああ、喋りにくいやろうから、縄ほどくわ」

「そういう意味じゃない!」

「え、縛っとかれた方がいい?もしかしてM?」

「そういう意味でもない!!」

 縄が解け、締め付けられていた腕に解放感が戻る。

 俺は何故か一瞬、安心感に包まれた。拘束が解かれたからではなく、己の未来を知らなくてすむことに対する、安堵。

 

 ―――なんだ、大した目的ではなかったのか。

 

 微かな希望。

 

 ・・・そんなはずがない。異星人の少年を囮に使ってまで、防衛軍隊員の俺を捕まえたんだ。

 俺の日常は、とっくに壊れてしまっていた。それは、俺自身が一番よく分かっていることだ。

 

 

 俺の望んでいるのは、面倒ごとに巻き込まれず、無事生き延びること。ただそれだけだった。


 


(ようやく出てきた主人公の設定!ババン!「M」です!!)

(ひどい)

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