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終末三千年。  作者: 高倉 悠久
第一章
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第一話 ~事の発端は妙なところから~


◇◇◇


 いつもどおりのベージュのコートを羽織って出た街は、真夏らしくうだるような熱気に包まれていた。

 惑星単位でいえば戦争中とはいえ、N国ではたいした被害も出ていない。道行く人々は皆、楽しそうに日常生活を過ごしていた。それは最早、日常生活という名の幻想に縋りついていた、というべきなのかもしれない。今では、大人から子供まで全ての国民が、上空を飛んでいく小さな黒い塊たちなど見えないというふりをしている。


 俺は町を通り過ぎて、オレンジ色のタイルが敷き詰められた公園に来た。整然と咲いている何列ものパンジーは、暑さで少しうな垂れているようだった。

 やがて公園の中心付近の、ベンチに四方を囲まれた大木に辿り着く。この木の内部がエレベーターになっていて、その地下に、地球防衛軍支部があるのだ。

 そのエレベーターは指紋認証になっていて、一般人にはただの木にしか見えない作りになっている。本当に、科学技術とはすごいものだ。きっと、2000年ごろの人間は、こんな世界想像もできないんじゃないか、と思う。

 俺はエレベーターに乗るために、ベンチを跨いで通る。今日は結構朝も早いし、人も少ないからまだいい方だ。一般人が大勢いる中で、こんなに格好も行儀も悪くベンチを跨ぐ地球防衛軍隊員なんて、それこそ頼るに値しないと思われるだろう。

 木の枝を切った後のような中途半端な膨らみに、人差し指を当てる。指の腹で軽く押すと、回転扉のようにしてエレベーター入り口が現れる。

 俺が乗り込むと、エレベーターはいつも、行き先も聞かずにするすると降りていく。なぜならこの支部は、だだっぴろいワンフロアでできているからである。コスト削減なのか何なのか、政府の考えることは、なるほどよく分からん。


 しばらくして、エレベーターの扉が開いた。

 そこには、いつも通り大量の机がきちんと並んでいた。整然とした雰囲気のそのフロアの、入り口付近には、いつも通り金髪ロングヘアーの上官が座っている。

「おはようございまーす、上官殿ー。」

「おお、おはよう。」


 そこまではいつも通りのはずだった。

 目も合わせずに挨拶をすませて通り過ぎていく俺に、上官が声をかける。


「ああ、25番。君の管轄下から、原因不明の警報出てるのよ。」


「はあ?」

 俺はつい聞き返してしまっていた。上官はさらりと言ったが、その言葉はかなりの非常事態を指しているはずだ。しかも原因不明、というところが尚異様なのだった。

「まあ、即刻被害が出そうな感じでもないしー、まあ、急がなくてもいいんじゃない?」

「とは言いましても…」

 急がなくても良い警報、とは一体どういうものなのか。

 まあ、上官の指示は常に的確だから、今回のことも、きっと信用できるはずだ。そこまで焦る問題ではないだろうな。まずはその警報とやらを確認、それから考えるとしよう。


「後でいいからさー、ちょっと現場確認してきてくれない?」

 しかし、その言い方じゃあ、まるでパシリみたいじゃないか。

 俺はため息をつきながら、自分の机のパソコンを立ち上げた。




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