舞風と冥界
更新に時間がかかりすぎる……誰だ一週間措きなんて言った奴。俺だ。
前回の更新から一週間と四日くらい経過したか。最近は授業が難しくなり、残される回数が倍増。気付けばクラスの半分がいないというそれなんてこわい。
時系列が曖昧になってきました。一気に数百年経過させたりする表現が分からない。だって私ただの人間だから気持ちが分からないんですもの。数百年の友人とはどれほど大切なものかなんて想像もつかない。
さて、今話でございますが、『舞風と死姫』のあとがきをお読みになり、尚且つ作者の浅い考えに渋々ご理解をいただけた後に読んでいただけると助かります。
――冥界に存在する、とてつもなく広い庭園を持つお屋敷、白玉楼。
そこには死霊の管理をまかされた西行寺家の者が住んでいる。
また冥界には罪の無い死者が成仏するか、転生するまでの間を幽霊として過ごす魂がある。
荒涼とした地獄とは異なり、四季も豊かで、春は美しい桜を、秋は素晴らしい紅葉で染まる。
その景色はあまりにも美しく、成仏や転生を忘れて見入る幽霊も多いという。
見ることが出来るならば一度は見たいものである。
『幻想郷縁起5代目』より一部参照。
「――で? なんで俺が冥界に行くことになる訳?」
一つの間を挟み、妖怪と妖怪とが対面する。間であるテーブルの上には客人に出した茶がほかほか湯気を上げるだけ。勿論、片方は俺こと舞風である。では、反対側は?
「幽々子の頼み。としかいえないわね」
そう、俺と向かい合って胡散臭げな笑みを浮かべたまま肩を竦める八雲紫とその隣でこちらを睨む藍。朝早く、珍しくもいきなり尋ねて来たかと思ったらこれである。
返事までに一拍子空いたので、ついでに欠伸ををしておいた。眠気アピールである。
「貴方、幻想郷に引っ越してからまだ一度も白玉楼に行って無いでしょう?」
「行って無いも何も、行けないだろ。冥界と現界の間にはそれを閉ざすための結界があるんだから」
冥界には幽霊が溢れかえっている。それこそ白玉楼の広大な敷地を埋め尽くすほどに。そんな幽霊達が誤って現世に行ってしまうのを防ぐための結界。それは逆にこちらから向こうへ行くことも不可能にしているのだが、ある意味当然の措置である。
生きている奴が冥界に行っても仕方ないのだし、逆も生者の場所をとるだけだ。
それを聞いた八雲が怪訝そうに眉を潜めた。
「貴方、一度行ったところには行けるんじゃなかったの?」
「転移結界か? あれは直々に術式を刻む必要があるから前行った時はやらなかったんだよ。いや、やれなかった、が正しいか」
「扱いづらいわねぇ……」
「仕方ねえだろ」
あんなことが在ったのだし、と心の中で呟く。
西行寺幽々子の自害。西行妖の暴走。そして封印。俺が久方ぶりに封印についた時のことでもある。
それを思い出したのか、紫の表情もやや苦々しいものへと変わっていた。それに気付いた藍の射殺すような視線もまた怖い。
「しかし、白玉楼か……そう言えばあいつはどうした?」
「あいつ、と言うと?」
「ほら……なんだっけ? こん……こん~~」
「魂魄?」
「そうそれ。魂魄」
初めて訪れた際、白玉楼の番をしていた男。やたらと顔が怖かったのと後ろに浮かぶ白いのが印象的だった。名前は、もうさっぱり思い出せない。
「魂魄妖真なら既に隠居。今は消息不明なそうよ」
「……うおーい。予想の斜め63度くらいの返球が来た気分」
あの男が、あのお嬢様を誰かに後を任せ隠居などと言う事をするようには思えなかった。同時にあの西行寺を理解してやれる者が他にいるとは思えなかった。
「そうなると、今屋敷には誰がいるんだ」
「魂魄の孫よ」
「へぇー孫……孫?」
「どうしてそんなに不思議そうなのかしら?」
不思議と言うか……なんとも時の流れは長く感じるものである。あの男が子を成し、その子まで子を成すとは。
そうか……ん? なにかを忘れているような気がしてならない。重要ではないが、今の話に違和感を感じる程度には。
「……ああ。そういえば魂魄ってなんなんだ? 長生きするところを見るとやっぱ人間じゃないんだよな?」
「人間よ。半分は」
「半分?」
「ええ、半人半霊だもの」
聞いたことがない種族である。聞く限りでは半分人。半分霊らしいが。そうか、あの白いのが霊か。
「へぇー。じゃあ不死なのか?」
「あら、どうしてそうなるの?」
「いや、だって半分死んでるんだし、死なないんじゃないの?」
それを聞くと紫は(ついでに藍も)呆れたかのようにため息をついた。その反応はない、と流石にムッとした。
「……あのね。半分霊でも半分人間なのよ。確かに人に比べれば寿命は長いかもしれないけどそれでも限界はあるわ。最後にあったときなんてすっかり爺だったし」
「あれがか……元が白いから色は変わらないんだろうな」
「どうしてそんなことを気にするのかしら」
「いや、あの顔は禿げはなさそうだなぁ、と」
紫がプッと噴き出した。魂魄の禿面でも想像したんだろう。いつかこいつも紫婆から白髪婆になるときが来るのかと俺は思うだけにしておいた。
「まぁいないならいいか。でもよくもまぁ、何も知らんだろう孫に預けて旅をすることにしたんだか」
「……貴方。さっきから人間としての意識で話しているでしょう。あれは妖怪と思いなさい。妖怪強面爺」
「お前魂魄嫌いすぎだろ。それで、どういうこと?」
「簡単よ。あの時点であいつの孫は既に生まれていたわ」
「……あうち。その事を全く視野にいれてなかった」
確かに、あの時の魂魄妖真は若々しかった。しかし、結局それは人間に区切ればである。俺や紫のように、相当歳食っても見た目変わらずの同類なのである。
――そして、俺はあの時点でのあいつの年齢を知らない。
「ま、その孫については私達の事を深くは知らないそうよ。ただ西行妖の存在とそこに在る物を知っているだけ」
「肝心の封印した人物は知らないって事か。下手して情報が漏れればアウトだからな」
「そういうこともあって、西行寺幽々子にとって八雲紫はあの後に友人になってることになっているから、頼むわよ」
「はいはい……余計な気苦労増やすんだから」
嘆息し、ため息をつく。これはまた大変なこと(主に面倒事)になりそうだと思った。
と、ふと聞き忘れに気付く。すっかり話が変わったが、肝心の行く理由について聞いていない。
「それで? 肝心の行く理由はなんなんだ?」
すると紫は面白いくらい目を逸らした。ものすっごい逸らしっぷりである。ついでに藍を見てみるとそれにも逸らされた。主従揃って凄まじい逸らしっぷりである。
そして、紫が徐に口を開く。
「……誕生日よ」
「は?」
さて、生命には逃れられない工程が存在する。即ち、『生まれる事』、『生きる事』、『死ぬ事』である。生きる命と書くくらいであるから当然である。
そして、誕生日とは生における記念日である。無論、生まれる事が良き事だと前提された上での記念である。これの対義語に命日がくるのかは定かでは無いが、まぁ意味が反対であると言う意味で言えば確かだ。
俺が言いたいのはだ。生まれる、生きる、死ぬの工程を終え、命日を迎えたまでの人間の誕生日を祝うのは果たしてありなのか、と言う事だ。
「――まぁ俺は誕生日なんてものすら覚えてねぇんだけどもね」
「なに言ってるんですの?」
隣を俺と同じ速度で歩く禍屡魔が眉を潜めた。赤い髪が風によって桜の花弁と共に揺れる。
時間の流れがおかしくなってしまいそうな時の中、毎年毎年西行寺のお姫様は誕生日を欠かさないらしい。日にちは偶にずれるらしいが。
しかも今の西行寺の誕生日は生前の命日である。つまり人間として死に、亡霊として生まれた日。こう考えれば俺の前言は撤回できる。果たして生きていると言えるかは分からないが。
「変わらず、桜だけはすげえよなぁ……」
「前着たときからこうだったんですか?」
「ああ、ところでアキ。どうしてベリーはあんなにびくびくしているんだ?」
「さぁ? 冥界だからじゃないですか?」
そう、三人で一斉に視線を向けてみる。肩を張り、今から死地に赴こうとでもするかのようにその顔は険しい。かと思えば一気に崩壊してふにゃらと情けない顔になったりする。
今に始まったところではないが、ベリーの顔は百面相とでも言うかのようにころころ変わる。それはアキにとっては弄るネタになるらしい。あと、俺がその話題を出したら貴方が『あの子が百面相なら貴方は千面相ね』と言われた。どういうことだ?
「おいベリー。考え事なんてやめて右を見ろ。何が見える?」
「……桜だ」
「そうだな。じゃあ左を見ろ。何が見える?」
「桜だ」
「うん。それじゃあ前を見ろ。何が見える?」
「馬鹿面だ」
「そりゃそう――っておい。どういうことだそれ」
「そのまんまですのよ……」
こっちがせっかく場を盛り上げようって気を張っているのに。なんて奴だ。これだから日々家に篭ってる奴――は禍屡魔だった。間違えた。
そこまで考えて、あれ? 割とベリーって社交的じゃね? と言う考えに至る。まぁ交流はあの二人くらいだろうけど。
「むぅ……なんだなんだ。なんでお前ら着いてきたんだ」
「おいしいご飯があると聞きましたの」
「そりゃ誕生日だしな」
「俺は亡霊の姫に興味があるから」
「求愛はやめとけよ? 一瞬で死に誘われるから」
「やはり、舞風の友人関係くらいはしっかりと把握しないといけませんから」
「お前は俺のお母さんですかと。あれ? 前も言わなかったっけ?」
どいつもこいつも心から祝う気ではないと言う。こんなのばかりに囲まれた誕生日会はさぞ寂しいものになるだろうに。そんな事を思いながら嘆息した。
そのまましばらく歩いていくとようやく白玉楼の門が見えた。紫め。送ってくれると言ったはいいが何故白玉楼より遠ざけた場所に隙間を開いたというのか。全く嫌な奴である。
さて、その門は遥か昔、魂魄妖真が守っていた門。それを思い出させるかのように、白髪の男が剣を携え、腕を組みながら立ち尽くしていた。数秒前から気付いていたか、その目は鋭くこちらを射抜いていた。僅かな警戒。向けられているのが俺で無いのは虚しいが。
「――この白玉楼に、如何な用で参られた?」
その見た目は人間で言えば二十代後半。もしくは三十代前半辺りか。いずれにせよ、それだけの生では出せぬであろう、鋭い声をこちらに向けた。やはりと言うかなんと言うか、その背後には白い霊――半霊と呼称しているらしい――がぷかぷかと浮かんでいた。
ここは山の主の威厳の見せ所。直感で理解した俺は顔を引き締め、腕を組み、見るからに高飛車な態度を心がけてみる。
「我が名は舞風。幻想郷にある山の主。八雲紫の友人としてこの度貴殿の主の誕生日を祝うために参った。通してただけるか?」
「舞風……確かに話は聞いている。しかし聞いていたのとは違うようだ」
「ほう? なんと言われているのだ?」
不遜な態度を崩さず、威圧的に聞いた。見上げる立場となってるのは、この際我慢しよう。
あとお前ら、後ろで含み笑いするな。聞こえてるから。
魂魄はなにやら考えたかと思うと徐にメモ用紙のようなものを取り出し、それを読み上げるように口を開いた。
「子供。妖怪。不真面目。騒がしい」
「おいちょっと待て。誰だそれ言ったの」
「貴殿の言う八雲紫殿だ」
「……あいつ~~ッ!!」
俺のカリスマを返せと。ちょっとした意気込みを返せと言ってやりたい。
って言うかその紙はなんだ。メモか。メモなのか? 一体何が書かれてるんだ。無駄に気になるぞ。
「……はぁ、それで? 通っていい?」
「まぁ、貴方はいいでしょう。しかし後ろの者達については別だ」
「こいつら? こいつらは俺の部下件山の同居者だが?」
「部下になった覚えはありませんの」
「口を挟むなややこしい」
「ふむ……」
魂魄は何事かを考える素振りを持った後、徐にを頭を下げた。
いきなり何をするのかと思った直後、視界がずれる。ずるりと暗転する。ふむ、と俺は一瞬思考に頭を走らせる。しかし、それも叶うことなく、意識は失せた。
最後に見えたのは落ちていく視線といつの間にか刀を持った魂魄。
――――ふむ。
「――いきなりなにをするのかしら」
「む、やはり妖怪であったか。となると貴様、何者だ」
「何者もどの者も舞風に決まってるじゃない。いきなり首を落とすなんて、初対面の者にやることでは到底無いわ。私じゃなかったら死んでたわよ?」
視界が戻ったとき、事情を把握すると共に嘆息する。
いきなり、そう一瞬で。私の首が落とされたのだ。本当に。私だからよかったものを。
一瞬の間で何があったか、魂魄は皆に取り囲まれていた。そりゃあ知り合いがいきなり首落とされれば誰だって怒るだろう。妖怪なら。
しかし、魂魄は尚仏頂面で刀の頭を撫でた。
「なに、先代には何事も斬れば本質が分かると言われましてな。その通りにしたまで」
「それ、下手したら取り返しがつかないことになるわよ?」
「今回は取り返しがついたのですからよしとしていただけませぬか?」
「するわけ無いでしょう」
この男、初めのほうは別の意味で不穏な空気を纏っていたが、今のこれは嫌悪。妖怪か、それとも人外に対するものか。本来こんなことをしでかす男が番など出来まい。
理由については考えるだけ無駄だが、流石に知り合いの従者にまで手を出す余裕も義理も無い。さっさとここは通してもらおう。
それにしても……魂魄め。息子に何を教えたのか。孫まで受け継がれているぞ。
「……まあいいわ。この返しは西行寺の食事に期待しましょう」
「分かりました。それではより一層腕を振るいましょう」
「……貴方が作るの?」
「生憎と。この屋敷にはお嬢と俺しかいないもので」
……まぁ、わざわざ幽々子が料理を作るわけも無いか。そうなるとこの魂魄も大層忙しいであろう。番をし、料理を作り、庭師も兼用か。もしかすると私の首を落としたのも一種のストレス発散だったのか。だとしたら少しは許容……やっぱ無理。流石に首を落とされて簡単に許すほど優しくはなれない。
「……まぁ、とりあえず通してもらうわよ。お客を待たせるのは貴方にしても本意じゃないでしょう?」
「それは確かに」
どの口が、とでも言うかのように歪んだ顔の後に現れたのはその言葉。まるで気持ちが篭っていないが、友人の従者のことを後で主に報告してやるのも優しさだ。お仕置きされろ。
魂魄は門を開く。私を除いた者達は警戒を残したままそれを潜った。アキに関しては向こうを殺しかねない目である。
最後、私もそれを横切るときにその顔を見る。能面のように感情が失せた顔と目は静かにこちらを見ていた。それを気にしないふりをして、俺は口を開く。小さい、魂魄にしか聞こえない声で。
「――妖怪じゃない。大精霊」
「――――っ」
その言葉の真意は分からないだろう。ただこちらが妖怪でないと言うことさえ理解されればよい。
……それにしても、死の気配が濃いここではやはり力が出ない。
通り過ぎ、背後から門が閉まる音が聞こえるまで無言であった。門から100間程度の間があいてからか、俺が一息つくと同時に三人の目は一斉にこちらを向いた。
「舞風。どうして処罰を与えないんですの?」
「処罰? 他所の従者に勝手に罰なんて与えられないでしょう」
「だからって……」
「生きてるからいいのよ。ただ……もう少し白玉楼に近付いていたら、拙かったかもしれないわね」
三人の目が意外そうなものへと変わった。これはあれだ。私にも弱点なんてものがあったのか、という顔なのか。嘆息しつつ、ため息をついた。
「私の再生能力は妖精に起因するもの、と言う話はしたわよね?」
「いや……まぁ確かに元妖精って話は聞いたけど」
「そうだっけ? まぁいいわ。妖精の力ってのは自然の力なわけ。妖精が蘇るのはその元、例を挙げるなら湖の妖精は湖の恩恵を受けているから死んでも一回休みで済む。でも、場所がその恩恵を外れる場所では話は別。死が存在する、冥界なんかは特にね」
死なない妖精にとっては、数少ない本当に殺す方法。その元の力の届かない範囲で徹底的にその存在を消し去る。その精神を徹底的に叩きのめす。もしくはどこかに閉じ込め遠ざけてしまうのも一つか。穴一つ無い場所に囚われようものならいつかその精神は磨耗し、死に至るだろう。
「――と、そんな事話している場合じゃなかったわ。早く行かないと紫も幽々子も待ちくたびれているかもしれないわ」
そう言って再び足を止めた三人を歩かせる。まぁ、皆が眉を潜めるのも当然なのか。
私は今、『冥界なら私を殺すことが出来る』と言ったこととほとんど変わり無いのだから。
「――あら、随分遅かったわね。それにその姿」
「性質の悪い門番さんにこれされちゃってね。久しぶりに浸っただけだからもう戻るわ」
白玉楼の前で口元を隠し立つ紫にそう返答するとくいっ、と自分の首をはねる仕草をした。
その片手間で封印の腕輪を複製すると腕に押し当てた。奇妙に腕を通り抜け、それが二の腕に収まると『私』は『俺』に変異する。
「ふぅ……」
「残念ね。私ももう少し貴方の変わった姿を見ていたかったのだけど」
「あの姿はそれだけで消耗があるから。力の供給が少ない場所で使うのはいいことだけじゃないんだよ」
実際、今の自分の力は無限では無い。ギリギリまで注いだ杯を僅かに呑んだ程度。余裕ならあるが、最悪の場合なんていつでも起き得るものだ。
そんな事を思いながら周りを見回す。僅かに声が聞こえるのは白玉楼の中庭か。
「客人は皆集まったのか?」
「ええ、元々それほど呼ぶつもりもなかった訳だし、幽々子してもまだかまだかと駄々を捏ねているところよ」
「それは申し訳ないな。しかし、料理は魂魄が作ると言っていたが?」
「藍にやらせているわ。間に合わせでは在るけどね」
それはよかった、と言いながらも無理に紫に命令されている藍を想像して心の中で笑う。
そんな会話のキャッチボールをしながらも白玉楼へと立ち入る。いつ見ても立派な屋敷である。いつかこんな屋敷でも作ってみるか、と思考の奥底で考える。
「これが白玉楼か……」
「大きいですのね。流石に」
「冥界の管理を頼まれてる西行寺家が住んでるらしいから、大層お金持ちなんでしょうね」
紫に着いて行くその後ろで聞こえる声。流石に新鮮なんだろう。桜の多い綺麗な場所でもあるわけだし。
しかし、全く話もしないで三人を連れてきてしまった訳だが、何も言わない辺り大丈夫なんだろう。そういうことにしておく。
「――――と」
足を止める。何事かと紫が振り返り、後ろを歩く三人がこちらを見る。
そこにあったそれは桜。ただの桜ではない、花をつけない、一際目立つ桜の樹。
西行妖――そんな名の桜の樹。前見たときとなんら変化しないまま、その姿を晒していた。
「……咲かないんだな」
「そういう封印をしたのは貴方。それに私よ。当然じゃない」
「だな……もう二度と咲かなきゃいいが」
僅かに過去を懐かしみながらそれを見納め、お客人が待っているだろう、縁側へと向かう。花を咲かせずとも妖怪桜。他の桜とは一線を引くそれに皆も気を取られているようであった。
西行妖。それは紫の友の墨染桜。二度と咲くことを願えない桜。
「――――あら、いらっしゃい」
縁側に座り、ひっそりとそこに存在している少女はとても死んでいるとは思えないほど生き生きしている。実際死んでるが。
「やっ、西行寺。元気か?」
「元気よ? 病気も無いし、怪我も無いですもの」
「そりゃ死んでるからなぁ……」
そもそも霊が病にかかったりするのだろうか、なんて思いながら俺は西行寺幽々子を見る。
やはり前見たときと変わらない姿のまま、おっとりとした笑みを浮かべている。
「んじゃ形式だけでも。此度は誕生日おめでとうございます。西行寺幽々子殿」
「あらまぁ、これはご丁寧に」
「因みに何歳?」
「舞風。女性に年齢を聞くのは感心できないわよ?」
横から口を出してくる紫にうるせいと見、それもそうかと答えを聞かずに撤回する。初めて会ってから四百年……いやもうちょっとか。
しかし、やはり死者に誕生日とは如何な事か。どう考えても命日だろう。そんな事を思いながら回りを見回してみる。
――――誰もいない。
「紫。他に来てないのか?」
「来てるわよ。ここにいないだけで」
「いやだから誰が来てるんだよ」
「その内分かるわ」
そう言って、結局教えてくれる気は無いらしい。これ以上聞くのも無駄だと判断して、縁側に座ってみた。するとベリーと禍屡魔とがやや離れた場所からこっちを見ていることに気付く。
それに首を傾げながら続いて隣に座ったアキに尋ねてみる。
「なぁ? なんであの二人はあんな場所から見てるんだ?」
「貴方が西行寺さんの隣に座ったからじゃないですか?」
まぁ、わざわざ離れて座る必要もなかったから。まさか、西行寺が怖いのだろうか? ベリーは分かるが禍屡魔まで……
結局こちらに向かってくる様子もないので立ち上がり、二人のほうへと向かう。
「何やってんの?」
「いや……お姫様を遠巻きから眺めてみようかな、なんて……」
「ちょっと舞風。なんですのアレは。聞いていたものと全然違うじゃないですの。いや別に怖くなんて無いですのよ?」
目を逸らしながら言うベリーと真っ直ぐとこちらを睨みながら言う禍屡魔と。言葉は正反対の二人であるが結局幽々子が怖いだけだろ。
まぁ幽々子の能力、’死を操る程度の能力’は生者には辛すぎるから。対抗策がなければ凶器を持った者に近付くようなものである。そして、面識がない二人は彼女がどんなじんぶ――亡霊か知らない。
「……はぁ、はいはい分かりましたよ」
そうして、俺は二人に能力阻害の結界を張ってやる。俺がいつも張っているものだ。解除の力技で砕かれない限りはそれは他者の能力の影響を受けない。
それに気付いたか、二人は先程に比べればややマシそうな顔を浮かべ、硬い面持ちで西行寺の方へと歩んでいった。それを見送り、遠巻きから眺めてみる。
ベリーはベリーでカチコチに緊張したまま上擦った声で挨拶しているし、禍屡魔はない胸を張って威圧(?)しながら何事かを言っているし。それでもなんだかんだで馴染んでいる様である。
と――――
「もし、そこの貴方」
「はい?」
背後からの声。振り向いてみればそこには人二人。色々と小さい緑髪の少女と色々と大きい赤髪の女性。全く、気配のないまま近付かれた。
少女は小柄ながらに紺色の袈裟を纏い、同色の特徴的な帽子を被っており、その手にはなんらかの棒。見たことの無いものなので何とは言えぬが、何らかの文字のような物が刻まれているのが分かる。
対称的な女性は赤い髪を頭の後ろで二つに分けており、その身は青白の着物で包んでいる。が、その胸の大きいこと大きいこと。少女と比較対象になってどうしようもない。また、その肩には背丈ほどもある巨大な鎌を担いでいる。
「貴方、色々と失礼なことを考えていませんか?」
「いやいや。そんなことはないですよ。それで、貴女方も西行寺に会いに来たんですか?」
少女は俺が幽々子を西行寺と呼んだことをどうも驚いたように見る。そりゃあこの冥界でもっとも偉いだろう存在を呼び捨てで呼ぶようなのだから当然か。パッと見ただの妖怪が。
「……ふむ。確かに私は西行寺幽々子に会いに来ました。ただし、決して遊びに来た訳ではありません」
「へぇ……そう。せっかくの誕生日なんだから祝ってあげたら?」
「それをしている暇はありません。って言うかなんでいきなり言葉遣いが適当になったのですか?」
面倒くさくなったから、とは口に出せないだろう。自然体が一番である。
それを知らずか、その顔の幼さのわりに妙に凄みの効いた顔で睨んでくる。
「なんでもかんでも……因みにどちら様?」
「! そうでしたね。私としたことが自己紹介を忘れていました。私は四季映姫。幻想郷の死者の処罰を担当するものです」
「処罰を担当する……?」
「つまるところ、閻魔です」
「閻魔さまぁ?」
それはなんとも、人は見かけによらないと言う奴である。全く。この少女が閻魔といわれるよりだったらまだ八雲のほうが……いや、あれは胡散臭いからダメだな。そういう意味では典型的な真面目タイプであるし、向いているのやもしれない。
それでも予想外すぎてしばらく呆けていたが、閻魔の後ろの女性がウィンクしたところでハッと我に返る。
「閻魔……様か。それはそれは、どうも初めまして」
「ええ、それで貴方は?」
「あいや、申し遅れた。私は舞風。幻想郷の小さな山を治める妖怪にございます」
「舞風。覚えておきましょう。それでは」
すると少女は俺の傍を横切り、縁側で茶を飲む西行寺の方へと歩いていく。まさかこんなところで閻魔と出くわすとは思ってもみない俺はやや思考に頭をめぐらせていた。
「いやはや、上司が迷惑をかけるね」
「ん? ああ……上司?」
声をかけてきたのは鎌を担いだ女性。申し訳ないと言うよりこちらの反応に対するものであろう苦笑いを浮かべている。鎌、と言うと連想できるのは一つくらいなのだが。
「ああ、あたいは死神の小野塚小町。まぁ親しいものはこまっちゃんと呼ぶよ」
「そうか。じゃあこまっちゃん」
「あたいとアンタは親しく無いだろ?」
「ザ・理不尽」
地に膝をつき、手を叩きつける。そんな心境である。小野塚はケラケラと笑う。
「冗談さ。それで舞風って言ったよね? 本物かい?」
「偽者がいるみたいな言い方だな」
「いやなに、風の噂で大妖怪の舞風って名を聞いたもんでね」
「ふむ、さぁねえ。同名かもしれないし、俺かもしれないし」
まぁ十中八九俺だろうが、一体何処から情報が漏れたというのか。
「まぁそれは置いといてだ。その身で山の主ってことは相当苦労してそうだね」
「ま、それなりにはね」
それは割りとどうでもいい話だったのだろう。肩透かしと思うほどあっさり変わった話に応答する。あの固い閻魔の部下と思えぬほど気さくである。いや、上司がああだから部下がこうなのか。
とにかく、見た目どおり、このこまっちゃんは絡みやすい死神だということは分かった訳である。
「――ん? ねえ、あれってアンタの知り合いかい?」
「どれ?」
小野塚が指を指す。その先が俺の背後であるのだから振り向いてみれば、何事かを言い争っている閻魔と禍屡魔がいた。その傍ではどうすればいいか分からないベリーがおろおろしていた。
何をやっているのかと白い目を向けているとだんだんと閻魔が諭す様になり、禍屡魔の顔は見るからにうんざりしたものへと変わっていく。元々説教など嫌いな性質だろうに。
「ありゃあ四季様に目ぇつけられたんじゃないかい? ご愁傷様」
「目をつけられると何かいやなことでも?」
「積極的に説教されるようになる」
「そりゃ確かにご愁傷様だ」
あはははと軽快に笑う小野塚。しかし閻魔の部下がそんな事を言っていいのか。って言うか多分、いや絶対こいつ目をつけられてる側だろ。勘だが。
すると笑い声が途絶え、ため息をつく。
「四季様もね、いきなり『目を離したら貴女はサボるだろうから着いてきなさい』なんて言って、いきなりここに来ることになるし。上司に振り回される部下は大変だよ」
「自業自得ってことはひとまず置いて、振り回される部下が大変ってのは同意だな」
「分かってくれるかい? そりゃあ私はちょくちょくいなくなるかもしれないけど、サボってるだけじゃないよ? たまたま休憩したときに四季様が来るだけなのさ」
「ああー、あるある。でもそういう時ってもう少しなら大丈夫だって思ったときなんだよな」
「分かる。分かるよその気持ち。アンタとはいい酒が飲めそうだ」
愚痴愚痴と上司――俺の場合は元上司――のことばかりを話している。視界の端ではおっとりした西行寺に閻魔が説教をしている姿が見えた。
……はて? 俺は何をしにここに来たのだったか。
「――そうだ。誕生日じゃん」
「んー? どうかしたのかい?」
「いや……まぁいいか」
知らぬ間に西行妖の傍でこまっちゃんと酒盛りを初め、遠距離から閻魔様の行動を眺めている。
先程まで西行寺に冥界の管理者のなんたるかを長々と話し、その次は紫を捕まえてなんらかを長々と話している最中である。西行寺が終始笑顔であったことは素直に尊敬できる。紫なんか話しかけられた瞬間『うわ、面倒くさい奴に捕まったな』的な顔したし。
「結局閻魔様って何しに来たんだっけ?」
「冥界の管理のことを再三に渡って説明に来てるのさ。数年置きにね」
「へぇー……ご苦労って言うか生真面目って言うか。じゃあなんで紫は説教されてるの?」
「隙間妖怪は説教をされる理由があるんだろうさ。境界を操る彼女の力じゃ四季様に頭が上がらないかね」
「あの紫がねぇ……」
頭が上がらない、とは言うが実際はそうでも無いんじゃないだろうか? 確かに閻魔って聞くと凄まじいモノに聞こえるが、妖怪の賢者とも呼ばれるあいつがそうそう遅れを取るとは思えない。確かに、あの閻魔もそれなりの実力者であることは分かるが。
「閻魔様に直々に説教をされる、か。まぁそれも特別なことなんだろうよ」
「それもそうだね。罪人にだってそうそう説教をする訳でもないのに。あの人が説教をするのは本当に必要だと思ってるからなのさ」
「で、こまっちゃんは毎日説教されてると」
「毎日じゃないよ。せいぜい五日に四回程度さ」
それはもうほぼ毎日と言っても過言じゃないんじゃないだろうか。
って言うかそこまで来るとあの閻魔も説教好きじゃないのかと思えてくる。
と、ようやく紫への説教を終えたのか、こちらへと振り返る。正確には用事を果たして帰るところなのだろうが、果たしてその顔は歪む。まぁつれてきた部下が酒盛りしてれば怒りたくもなるか。ずんずんと鋭い足並みでこちらへと歩んでくる。
「――小町ッ!!」
「はいっ!! どうかしましたか!?」
「サボらないように連れて来たと言うのに、どうして堂々と酒盛りをしてらっしゃるのですか!!」
「舞風に誘われたからです!!」
「ちょおま」
実に誤解である。暇を持て余したアキが酒を持ってきてくれたので、ただ場の雰囲気で飲んだだけである。しかし、それを真に受けた閻魔の目がこちらを射抜く。この身には辛い圧力である。
「……舞風、と言いましたね。八雲紫に聞きました。一時期彼女の式として働いており、それが理由で山を与えられていると」
「え? ちょ、え?」
「貴方も元は彼女のために働いた存在なのでしょう。しかし、統べる立場となって変わったのか。慢心ですか?」
「いや、だから一体なにがどうなってそうなって……」
さすが閻魔。話を聞く気が無い。
このままずらずらと説教を聴くのはいやだ。面倒。
「――――ああもう! 知らない知らない知らないっ! 大体っ! なんでこんな日に閻魔のお小言をいただかなきゃならんのさ!!」
「貴方の行いがあまりにも悪すぎるからです!」
「知ったことか! 閻魔だったら神様の一柱だろうが! 神は年長者を敬うくらい出来んのか!!」
「――――は?」
面食らったように目を白黒させたまま首を傾げる。やはり、気付かない。どいつもこいつも俺を弱い妖怪、小僧だと思う者ばかりである。実際、俺より長生きしている妖怪の方が少ないであろうに。
「えっと……今なんと仰りましたか?」
「年長者は尊重するものだといった」
「……貴方がですか?」
「私がですよ! 悪かったな!! 見た目子供で!!」
この状態が一番力を食わないのだから仕方が無いだろうが。心の中でそう吐き捨てる。
『閻魔王』と言うものが言る。それは遥か昔から存在する十人の閻魔。一体いつからいるのか、気付けばいたので定かではないが、それはどうでもいい。閻魔は元々その十人しかいなかった。
しかし、人口の増加に伴う死者の増加でやがては十人では手が足りなくなり、各地の地蔵を新たな閻魔として採用したらしい。したがって、今や閻魔の名前を持つものは多数いる。この四季映姫とやらを見る限り、そのうちであるだろう。
だからといって、その見習い閻魔に説教されてばかりでは叶わない。隠すまでも無いが、ごちゃごちゃと水を差されるのは嫌いなのだ。
「そ、そうですか……では貴方も」
「貴方もってどういうことだよ」
だと言うのに、その閻魔からは同情するかのような視線が送られてきている。何故だ。俺はなにかこいつの同情を引くような事を言ったか?
こほんと咳払いをすると閻魔はその手の棒を胸の辺りまで持ってきて一礼する。
「失礼しました。これでも人を見る目には自信がありましたので、つい勝手なことを」
「……分かればいいさ。どうせいつものことだし」
勘違いされるのは本当にいつものこと。だから慣れる。しかし勘違いされたままあーだこーだ言われるのは嫌いだ。だってそれは自分ではないから。押し付けがましい何かを感じるから。
「閻魔だから、仕事柄そういうもんなのかも知れないけど、今くらいは別にしようや。せっかくの桜だってのに」
「確かに……それにこの桜の傍で騒ぐのも流石に悪いですか」
「そりゃそうだ。一応故人が眠っている訳だし」
まぁその故人は亡霊となって向こうで騒いでいるが。そう視線を向けながら思う。
すると閻魔は何事かに違和感を感じでもしたか、首をかしげて西行妖と俺とを見比べ始めた。やがて、なにやらを納得したかと思うと体ごとこっちに向き直る。
「そう言えば、確かここの妖怪桜を封印したのは八雲紫とその式と聞きました。もしや、貴方ですか?」
「……さて、そんな事をしたような気もするよ」
さぁ? と言えれば良いものを。見栄張ったせいでぼけることも出来ない。
それを肯定と受け取ったのだろう。閻魔の顔が歪む。封印だけならばいい。しかし、問題は紫が行った反魂。本来ならば禁忌である。それが真に正しいことかどうかなど、閻魔から見れば考えるまでも無いのだろう。
だが――――
「――そっちの論理に当てるな。人の範疇にも、妖怪にも、神にも当て嵌まらない。俺をそっちの都合で縛るな」
「――ッ! なんと身勝手な……」
「結構だ。それに、当の本人にちゃっかり冥界の管理を任せるそちらに言われる筋合いはない」
西行寺のことを理解した上で彼女を冥界の管理人仕立てると言うならば、その結果に至った理由も意味も、否定するな。いいところだけを見るなんて、それこそ身勝手だ。
「俺は舞風。俺を縛るものはこの大地だけでいい。だから俺は俺で在れる」
「――――っ。帰りますよ。小町」
その顔はどんなものに歪んでいたか、見ていなかったがために分からなかったが、その言葉に滲んでいたのは悔しさ。名も知らぬ、存在すらも知らぬそれを自己の判断だけでとやかく言えるかが分からない故の、今回限りの妥協。
傍を横切り、黙々と進んでいく。すぐ近くのこまっちゃん――小野塚は冷めた目、とはまた違う感情を消した目でこちらを見ていた。恐らく、それは観察か、見極めか。やがてはやや申し訳なさそうに苦笑いし閻魔の後へと着いて行った。
「――まさか閻魔に真っ向から喧嘩を売るとはねえ」
「なんだ? まずかったかのか?」
「まずくなったのは貴方の立場くらいね。幻想郷には被害は無いでしょう」
「ちょ」
ようやっと本格的な宴を始めることが出来る。そう言ったのは誰であったか。
……ああ、そうだ。閻魔がいなくなってようやく現れた伊吹だ。見つかると面倒なので霧になっていたらしい。それ以外には誰もいないかと聞いたが紫は瞳を伏せて首を振った。
まぁ、いないならいないで別に良いだろう。下手に風見幽香でも現れようものならベリー辺りが大騒ぎしそうであるわけだし。しかし紫とは顔見知りだろう。幻想郷にいるくらいであるし。
「花見を兼ねて……祝う側にしても祝われる側にしてもいい事だな」
「ええ。西行妖が咲いていないのは残念だけど」
「いやあれは咲いちゃダメだろ」
冗談ですわ、と口元を扇子で隠す西行寺を見てため息をつく。毎度ながら、このお嬢様の言うことは嘘か誠か見分け辛い。いや、西行妖が咲いたらいい、と言う部分だけで言えば本音ではないかと錯覚するほど。
紫もまた同じく、僅かに肩を落としているようであった。友人としては西行寺に対し苦労が耐えないと言うことであろう。この紫まで言うのだ
「――しかし、まぁ綺麗ではあったかな」
西行妖はもう咲かない。枯らしたのも咲かないようにしたのも自分達だから。しかし、その時見た西行妖は確かに、この世のものと思えないほど美しかった。
まぁ冥界の妖怪桜なのだから、それも当然なのか。
ふと周りを見回してみる。アキと藍が酒を交わしながら何事かを交わし、先程まで騒いでいたベリーや禍屡魔は酔って縁側にダウン。
やっぱりこいつら誕生日祝う気なかったろ、と再認識した。西行寺が欠片もそれを気にした様子を見せないのは器量が広いからか、それとも取るに足らないことなのか。
「悪いな。うちの奴らがどうも自分勝手で」
「うふふ、いいのよ。宴は楽しくなければ」
「でも、お前の誕生日だろ」
「え?」
「え?」
え?
西行寺が何やらを考える仕草を見せたかと思うとポン、と手を叩く。
「そう言えばそうだったわね」
「ちょ、おまぇ」
なんてことは無い。誕生日を最も気にしていなかったのは当事者だったと言うことだけであるということ。
妖忌は元祖です。なんでも斬ってみようと思う謎の固定概念(笑)
前回の時点で白玉楼にいたのが妖忌ではなかったのは、なんとなく年齢的に難しいんじゃないだろうか? という勘違いでした。誰が半霊半人の寿命を決めたと言うのか。
しかし、公式設定では妖忌は西行妖のことを見たことがあると書いてあります。つまり、あの時点で生きてはいた訳です。そういうことで、こうなりました。
因みに、妖忌が舞風たちに対して不快な態度をとるのは、ぶっちゃけ嫉妬です。幽々子に対して何も出来ない己への怒りと紫、妖怪への嫉妬が相まっております。でも首落としたのは素です。辻斬り乙。
どういうわけか現れた四季様と小町。ここ以外出会う場所ないだろうなと思いました。舞風は基本好かれますが、固い人には当然ちゃらい奴としか思われません。あと身勝手も追加。小町のほうが気が合うでしょう。
しかし、何気に成長しない体に対する同情をもらう舞風さん。公式設定では高身長なのに、どうしてこうなったのか映姫様。
……まぁ可愛いからいいんだけど。
最近ネタに餓えてまして。授業中だろうとネタを妄想する毎日であります。勉強しろとか言わないで。
今回も前回だって正直始まる理由が苦しすぎる。なんだよ誕生日に釣りって……
今後もこのくらいの速度で更新になるかもしれませんが、こんな作者の『東方大精霊』を読んでいただければ幸いです。
※前書きの通り、『舞風と死姫』の回についてご質問があります。しかたない、筋トレの合間に答えてやるか、くらいの気持ちで見てください。
その回では初めから白玉楼が冥界扱いになっています。本来は幽々子の死後、管理を命ぜられてから冥界に行きます。これを修正するか、それとも今作のオリジナル設定とするかどうかです。
ある意味作者のわがままであるので、思ったままのことを書いてください。
「修正しろやks」でも「お前の設定で間違って覚えたわks」でもオーケーです。