幕間
最近ネタに走りすぎな気がする。後悔と反省はしている
自動車教習の路上でエンストは軽く焦る。
――能力が開花し、一躍山の中で五本に入った俺は超有名人に……なんてことはなかった。
寧ろ周りの目はひどくなったような気がする。真可のおかげで軽減はされているのだろうが、やはり厄介者みたいな眼で見られるのは精神的にくるものがある。
まぁ、それでも深く気にしないのが俺である訳であって、結局はいつも通りに活動する。
はずだったのだが――
「――どうしてこうなった」
「行くよ、舞風君」
俺の対面に向かい合っているのは口調もとい呼び方で解かるだろうが天正である。早朝の散歩をしていると暴漢から終われ、逃げていたところでたまたま天正に出くわし、助けてもらったのだ。
さすが天正! 分かってる! そこにシビレる! あこがれるぅ!!
……なんて思ったのも束の間、追われていた理由を話すとあら不思議。
おにのてんしょうが現れた。
おにのてんしょうはほほえんでいる。
まいかぜはにげだした!
しかし、まわりこまれた。
微塵も勝てる気がしない。微塵も勝てる気がしない。重要だから二回言った。これから俺に残された選択肢は撲殺、絞殺、滅殺だ。BADEND一本道。クリア不可。最後が分からない? 察してください。
思考を張り巡らせる俺の目の前では天正がニコニコと微笑んでいる。しかしそれに騙されてはいけない。よく見ろ。あの目は心から楽しそうだ。まるで得物を狙う猛獣のようだ。
天正! 信じてたのに! アンタだけは戦いを好まないいい妖怪だと信じていたのに!! 裏切ったな! 僕の気持ちを裏切ったな!!
天正が一歩を踏み出した。心なしか山そのものが震えた気がした。とんでもないプレッシャー。いまそれが俺の肩にのしかかっている。なんでポケ〇ンののしかかりはマヒ効果を催すんだろうと非常にどうでもいいことを考えた俺を許してくれ。
二歩目を踏んだ。その瞬間俺は全意識を天正に集中させた。
「動きを封ず!」
しかし、MPが足りない。
燃費の悪さに全俺が泣いた。
「じゃ、じゃあ足だけを封ず!!」
俺の願いが届いたのか天正の足は止まった。なにやらもの珍しそうに自分の足を確認している天正を見て今こそ逃げるチャンスだと心の底から理解した。強張る足を叱咤し、踵を返して走り始める。しかし、すぐに前のめりに倒れた。背中から何かの衝撃を受けたからだ。恐怖を感じながら振り向く。
そこには足は二歩目を踏み出したままの天正が中に浮かび、手をこちらに向けておられました。
知らなかったのか? 大魔王からは逃げられない。
天正の目がそう語っていた気がしました。それからどうなったのか、私はいまいち覚えていませんでした。
「天正。俺記憶がないんだけど。何で裸でこんなところに寝そべってるか理由だけは聞かせてくれないか?」
「本当に聞くのかい? 後悔するかもしれない」
「いえいえいえいえいえいえいえいえいえ。やっぱりいいです」
山はその日も平和でした。
☆〇☆☆〇☆
――突然だが俺はそれなりに我慢強い人間、もとい妖精である事を自負している。何故ならばと聞かれれば朝起きれば真可と訓練に励み、その後散歩に行けば怖いお兄さん達に絡まれ、その後たまたま散歩中の天正と模擬戦し、帰ると再び真可と訓練し、その後に能力の活用法やら道端の山菜を真可と一緒に模索する。そんな感じで成り立っているからだ。
一日の約五分の四が体を痛めつける作業ってのは我ながら素直に凄いと思う。尊敬するね。自分だけど。おかげで妖力とかは当初の数倍と言っていいほどになるし。訓練すれば増えるんだね。俺妖精なのに。でも最近胃薬が欲しくなって来た。とりあえずこのことから俺が我慢強いことが証明される。
が……
「では、これから話し合いを始めたいと思います。真可くん、舞風くん。頼むよ」
「は、はい!」
「……」
でも、流石にこの状況は予想外でした。天正を挟むようにして俺と真可が立ち、山の妖怪たちに対して作戦の模索を呼びかけようとのこと。でもあたかも俺が幹部であるかのように前に出ていることに大して絶望中。
この山に住むほぼ全ての妖怪が俺の前に集結している。そして過半数以上が俺を睨んでいる。胃がきりきりと痛んできて、やばい泣きそう。天正、後生だから俺を下げてはくれないだろうか。
と、思ったら天正は俺を見てニコニコ笑っている。なんだか嵌められた感を否めない。
真可は……うん。いいと思う。でも俺が代表って明らかにおかしい。確かに一対一で能力ありならもう天正と真可以外に負けないけど……あ、この山では、ね。
しかし、作戦なんて言われても所詮一般ピープルだった俺に戦略など分かる訳がない。そもそも敵の情報が全くないし作戦の立てようがない気がする。
それはやはり他の妖怪たちも同じようだ。今まで山で気楽に生きてきたがためにそもそも戦いの経験がないのだろう。あそこにいる奴なんか作戦ってなに? っとか言ってるし。もう帰っていいと思うよ。
そこで天正が一歩踏み出した。全員話し合いをやめ、天正へと視線を向ける。さながら学校で先生が教室に入ってきた瞬間のようにも感じられた。
「僕達はこれが始めての集団戦だ。皆勝手など分かりはしないだろう。だから一つ勝利条件を決める。これが成功したら勝ちだと思え」
なるほど、そうやって狙いを絞ることで決定力を出そうと言うんだな。さすが長をやっているだけあって考えが出てくる。
「勝利目標は――敵総大将の撃破だ」
無茶だと思いながらも納得したことに俺は涙と敗北感を禁じえなかった。
全員突撃猪突猛進収束攻撃一点突破。めちゃくちゃすぎる。
出てくるのはそんな意見ばかり。どいつもこいつも我が強い奴ばかりなので俺はもう頭がおかしくなりそうです。あーでもないこーでもないと煩さだけならお祭り騒ぎ。勘弁してください。
「舞風君。君は何かないのかな?」
「策なんて言える物俺は知らないよ。天正の能力で一気に殲滅とかできないの?」
「僕の能力じゃ全力で五十体屠るのが限界だよ。こっちがバてちゃうね」
なんて恐ろしいこと苦笑いで言ってくれるこのお方が味方で本当によかったと思います。しかし、作戦がもなくただ突っ込めば勝てる気がしない。
「うーん。それじゃあさ、例えばだけど真可から力もらった俺が封じて天正がトドメ、って感じでいいんじゃないの?」
「え?」
天正が首を傾げる。前から割りと考えていたことである。俺の能力はどちらかと言うより主戦力よりサポート的な役割の方が際立つ。元が封、結界を操る程度の能力なのだ。むしろこれでガチンコ勝負なんて泣ける。その分、真可の力は万能だし、天正の能力は攻撃に向いているだろう。
となると、チームとして戦うならこれが一番いいと思う。俺は最悪盾にもなれるし、鬼の天正に破壊力は並ではない。
「総大将さえ倒せばいいんでしょ? 俺達三人だけで攻め込んで総大将を倒せばいいんじゃない? まぁ穴だらけな案だからおススメしないけど。三人のうち誰かが欠けたら終わりだし、多対多なら囲まれて一網打尽にされるかもしれないし」
「……いいね」
「あと……え?」
「その案もらうよ」
「え゛ぇ!?」
なんとビックリ。僕の穴だらけな策が採用されちゃいました。自分の事ながらサーッと血の気が引いていくのが聞こえる。
「ちょっ、無理だって!! 俺はともかく天正と真可は攻撃もらったらやばいんだぞ!?」
「無論、真可君が無理と言うなら中止しよう」
「そ、そう? 真可、まさかやるなんて言わないよな」
「……やろう!」
「うえええ!? 無茶だって! そりゃ三対一なら勝機あるかもしれないけど敵はもっといっぱいなんだろ? 背中から撃たれるぞ!?」
「舞風くん。三人でできないならそれ以上でやればいい。そうだろう?」
天正は俺ではなく、精一杯引きとめようとしている俺の後ろに向かって声をかけた。それが一体誰にむけて言われた言葉なのか、考えるまでもなかった。
沢山の、まるで雄たけびのように、大地を揺るがすほどの喚叫が響き渡る。ああ、もうダメだ。俺が敵本陣に突っ込むことが決定したようです。
……俺、生きて帰ってこれるかな? 妖精だから死なないか。
へへ、俺、この戦いが終わったら夢のぐーたら生活に身を投じるんだ――
既に今から主人公のスペルカードを考えている自分に絶望した。一体何話先だと思っているんだ俺。
嗚呼、中二病的妄想が頭を駆け巡っていく。
とりあえずレーザーは欲しいよね。