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東方大精霊  作者: ティーレ
2.ソレハ空白ノ時ヲ経テ再ビ現世ニ舞イ戻リ
23/55

舞風と少女と



完成。即掲載!!


中間試験が五問問題。うち二つしか答えられず。60とらなあかんのに!! 俺ワロタ!!


非常にどうでもいい話だが最近の口癖がワロタになりかけている。


20110630。題変更。理由は名前だけで登場人物丸分かりすぎるから。

と、思って変更したら「舞風と少女」はダブってた。更に変更。





――舞風と永琳たちが別れを告げた後、藤原家。





「……何処行ったんだろ?」



私は唐突にいなくなった舞風の事を考えていた。


確かに彼が勝手にいなくなることなどしばしばあったことだが、三日も留守にするのは珍しい。と言うより初めてだ。流石に心配にもなってくる。


迷子やら連れ去られたと言う線は薄い。その身に似合わず強い舞風が誰かに負けることなどないだろうし、この都は何度も訪れた場所。道が分からない訳も無い。


もう都を出てしまったのだろうか? 今まで何も言わずに出て行ったことなどなかったはずだが、気分屋な彼のことだし、ありえないと否定も出来ない。



――そういえば、今日はかぐや姫が月に帰る日だったろうか? とふと思い出す。



そんなこともあり、父上である藤原不比等もかぐや姫の元へ馳せ参じてしまい、残されたのは自分だけだった。行きたいとは言ったが相手にしてもらえなかった。


この頃心配になってくる。私は本当に父上に愛されているのだろうか?



「……って、なに考えてんだろ」



自分らしくも無い、と私は立ち上がって厨房へ向かった。夜も遅い時間だが、おやつくらいならあるだろう。



――と、門の方が騒がしくなり、誰かが入ってくる気配。どうしたんだろう? と進路を変更して私は入り口へと歩いていった。


ガヤガヤと騒がしながらも開かれる門。そこから顔を覗かせたのは従者の肩を借りて引きずられるように歩いてくる父上だった。何事かと焦り近づこうとしたが、途端に感じた刺激臭に足を止める。



酒の匂いだ。



父上は振られた後も尚かぐや姫に想いを寄せていた。職人達に作らせた蓬莱の玉の枝がかぐや姫に偽者とばれた後にも冷めることなく求愛を続けていた。


当の本人は前科持ちを信じることも出来ず、偶にかぐや姫に会いに行けば簡単な会話をこなしてお終い。それだけだ。流石にこればかりは仕方ないと私は思った。


酔ったまま従者に介抱された父上はなにやら唸りを上げて何事かを呟いていた。だがそれは何者にも聞き取れない。恐らくかぐや姫への泣き言だろう、と従者達は取り合う様子をあまり見せなかった。



突然従者達の手を払いのけ、ゆらゆらと立ち上がるとそのままこちらへ――正確には私室へと――歩いてきた。無言で更に半開きな目を見て私は思わず身を固めた。それでも進行上の邪魔にはならないようにと道の脇に逸れた。


半開きの目がこちらをジロリと見つける。紅潮した頬をキッと吊り上げ、そして――





気付けば私は頬への鋭い痛みと共に床に叩きつけられていた。


痛みに顔を歪めながらも父上の顔を見上げる。その顔は今までにないほど怒り狂っているように見えた。


嗚呼、何故気付かなかったのだろう? あそこまで好きになった女が、恥をかいた後もずっと求愛を続けていた女が、いきなりいなくなって残されるのはなんだ?



怒り、それも矛先がない怒り。私は父を見るとき、どんな顔をしていたのだろうか? いや、父上にはどう見えたのだろうか? 私にそんな気持ちがないにしろ、鼻で笑うような顔に見えたのかも知れない。



「―――――!! ―――――!!」

「―――!? ―――!? ―――――ッ!!」

「―――――――――――、―――――――――――ッ!!」

「―――!! ――――――――!! ―――――――――ッ!!」


浴びせられ罵声、振りかぶられる腕。私は私と言う存在を何処か客観的に見てしまっていることに気付いた。ただ呆然として父になされるがままになっている中、頭の中だけで全く別に感じられた。


止めにかかる従者達。両腕を押さえられて尚も私への罵倒を止めない。



「―――――――――!! ―――――――ッ!!」




その言葉を最後に、私の視界は真っ白になった。












☆〇☆☆〇☆














「ふぅ、着いた……」



あの後、かぐや姫達と別れた後、俺は都とは逆の方へと進み始めた。今頃都は騒ぎでも起きているかもしれないし、ほとぼりが冷める程度までは都を離れよう。そんな拙い考えだった。


数日経ってから妹紅に何も言わず、且つ荷物を置きっぱなしにしてしまったことを思い出した。荷物の方は別に未練は無いが、もしかしたら妹紅が心配しているかもしれない。と思った俺は進路を再び都へ向けた。


そしてたった今、着いた所である。


都の中は思いのほか同様は見られなかった。かぐや姫と言う存在がそれほど民衆と遠い存在だったということもあるだろうが、貴族連中は大騒ぎなはずだ。


さて、妹紅への土産はどうしようと大通りに差し掛かったところである。なにやら大きな人溜まりが出来ていることに気付いた。何事だろう? とそちらへ歩を進めた。


それはほとんど入り口と言っても過言ではない位置だった。小さな体を利用し、潜り込むように騒ぎの中心に向かう。


そこにいたのは、



――明らかな侮蔑と怒りと嫌悪を混ぜ込み、石を投げつける人々。そしてただそれを蹲って耐える白髪の少女だった。




「は?」




あまりの出来事に最早ポカンと呆けた。状況その物が理解できないが、それ以上に理解できないものがある。



人々の表情は皆、恐怖と嫌悪を無理矢理混ぜ込んだようなものであったことを。



どうしてそこまでの顔を作れるのだろう? それだけの事を少女をしたから? 普段は乱闘が起きようが傍観に徹する人間達がここまでのことをする理由はなんだ?


ただただ人間達は少女を化け物と呼び、消えてなくなれと罵倒する。化け物? これが化け物? そんな訳が無いだろう。魔力も妖力も、増してや霊力すらも無いこの少女が化け物な訳が無い。



――少女の顔が持ち上がる。額からは血が流れ、怯えが混じったその赤い目は人間達を見回し、そして、俺を見つける。



目を剥いていた。俺と言う存在に対し、まるで助けを懇願するような目をした。




――一つの記憶が蘇る。


髪の色は白ではなく白銀で、それでも他に無いほど似ていて。罵倒されていた。石をぶつけられるなんてものではなく、振りかぶられた手をそのまま小さな体で受けた。


その時の彼は助けなど求めていなかった。怯えてなどいなかった。


だが、助けなくてはならないと思った。見てみぬふりをすると言う選択は存在しなかった。背の翼をはためかせ、――の元に――




「舞風ぇ!!」




唐突に呼び戻される。少女が俺の名を呼んでいた。俺の助けを求めていた。記憶が叫んでいる。見捨てるな、と。だから・・・俺は更に脚を進めた。



近づいて気付く、少女は薄汚れてはいたが身なりのよい服を着ていた。どこかの貴族の娘だろうか? だとしたら何故、こんなにも公衆面前で簡単に手を出せるのか。考えるのが面倒だから後回しにした。


羽織っていた衣の上着部分を取り外し、ばさりと広げる。それが人間達の視界から俺と少女を隠し、そして転移魔術の代用媒介を果たす。


気付けばそこは都の外、都へと至る道の途中。つい最近思う場所に下ろしてくれない八雲に対抗する術が始めて人助けに役立った瞬間……と思ったがかぐや姫のときも使用していたか。


少女は少女で突如場所が入れ替わったことに驚き、辺りをキョロキョロと見回していた。



「さて、事情を聞く前に怪我の治療をするか。さ、脱げ」

「ッ!!?」



セクハラ? 変態? なんとでも言え。と言うより寧ろ言われることを想定しての発言だったが、少女は怯えるように後ずさりしながら俺の顔を見た。


見覚えのある顔、確かにそう思った。だがその前に何かを見落としている気がしている。



――そうだ。額の怪我がない。違和感の正体はそれだった。



恐らくそれが少女が化け物と呼ばれる所以なのだろう。寧ろそれ以外に驚く部分も無い。



「ふむ、再生能力、か?」

「ッ!? どう、して?」

「どうしても、何も――」



少女と目を合わせ、会話をしていると何故かデジャブを感じる。赤い目、白い髪。あったことも無いはずなのだが、視覚的にそれを感じるということはどういうことなのだろう?


結論はすぐに出た。目、髪は確かに変わった。だがその少女の顔を、俺は知っている。何度も面と向かって話したのだから。


そう、その少女の名は――




「……妹紅?」

「!! …………」



少女は、妹紅は、黙ったまま僅かに頷いた。














☆〇☆☆〇☆















「それで、一体どうしてそんなことになったんだ?」

「…………」



妹紅が落ち着くまでの間、黙って隣にいてやった。荷物が無いので大して気の利いたことは出来ない。さっき剥いだ衣の上着部分をかけてやった。それでも大した反応がなかったが。


一刻は経過したが今もこうしてだんまりが続いている。言いたくない内は無理に聞きださない方がいい。長生きの知恵だ。役立つのは結構稀だが。



「ねぇ……今まで何処に行ってたの?」



質問に答えるでもなく、妹紅は聞いてきた。それになんの意味があるのか分からないが、それとなく伝えるべきだろう。



「ちょっと用事を思い出してな。都を離れてたんだ」

「…………」

「あとかぐや姫の別れ際でも――」



話の途中で区切る。妹紅が歯をギリッと食いしばったから。反応したワードは『かぐや姫』。



「かぐや、姫……ッ!!」

「かぐや姫が、どうかしたかい?」

「あいつの……あいつのせいで――ッ!!」



今にも怒り狂いそうなほどとてつもない感情の奔流。それは確かに先日別れた少女に向けられたもの。今までに見た事ない表情。何がこの子をそこまでさせるのか。



「なにが、あった?」



有無を言わせるつもりもなく、問う。長生きの知恵? 知ったことか。このままでは壊れてしまう。


そして、少女の口から吐き出された言葉。驚愕するしかない内容。





「――不老不死の薬を、呑んだ」















「なんてことだよ……」



俺は思わず頭を抱えてしまいそうになった。少なくとも本件はそれに値するものだった。


『蓬莱の薬』、彼のかぐや姫も服用した不老不死になれる薬。かぐや姫がせめてもと老夫婦に渡したその薬が、なんの因果かこの少女の体に収まったのだから。


なるほど、化け物と言う言葉をそれとなく理解する。普通の人間からすれば傷を負おうがすぐに治り、且つ殺しても生き返るような人間は紛れも無い化け物と言ってもいいだろう。あれほどの石を投げられようと傷一つ見当たらないのはそれが原因か。


そして、その本元の理由はなんと言うことか逆恨み。しかも鼻で笑えない、それこそ面と向かって間違ってるともいえない暗く深い内容。


何も考えないまま――いや、もしかしたら何も考えたくなかったのか――浮かんだ復讐心。そしてその結果がこれ。人外への変貌。おそらく、彼女はこれ意向成長することも、そして死ぬこともなく生き続ける。それも永遠に。


それに恐らく未だ気付いていない。今妹紅にあるのは恐怖。化け物と呼び罵倒する人間達への恐れ。


何をどうするべきかも分からず、俺は一つため息をついた。それだけでビクリと妹紅が体を震わせる。



「……舞風は、怖くないの?」

「お前がか? いや、うん。まぁ、怖くは無い、か」

「どうし、て?」

「どうしても何も、妖怪でもなきゃ刃物振り回すわけでも無い人間の何を怖がればいいのか……」



確かに人間から見れば怖いだろうが、生憎人間は遥か昔に卒業した身、たかが死なないくらいよりならそこらへんの野良妖怪の方がよっぽど怖い。大して変わらないが。



「本当に? 本当に私が怖くないの?」

「全く。らしく無いぞ妹紅。つい先日の怒りは何処に行った?」

「ッ! あれは、舞風が私の秘蔵の饅頭を取ったから……」

「そうだっけ? ああそでしたそうでした。だからその恨めしげな目を止めてください」



白けた目でこちらを睨んでいた妹紅はふと真剣な目になり、こちらを見た。



「さっきのは何? 気付いたらここにいたけれど」

「あれ? あれは……なんて言うかな、特技?」

「ふざけないで」

「ああはいはい。言うなれば魔法だよ。暇つぶしに覚えた」

「……嘘だ」

「嘘じゃないし。ホントだし」

「……それは舞風の見た目が全く変わらないのと関係が?」

「それこそ嘘だ。数尺は伸びたろ?」

「いや全く」

「そんなバカな……」



伸びて……ない? 成長がストップしたのか? そんなの絶対おかしいよ。



「まぁ、うん。そうだな。改めて自己紹介くらいしておこうか。蓬莱人、藤原妹紅」

「蓬莱人?」

「蓬莱の薬を呑んだ人間らしいぞ? それはさておき、俺は舞風。一応大精霊を名乗ってる」

「大、精霊? 人間じゃなかったんだ」

「おう。びっくりしたか?」

「したけど、そんなでもないかな。妖怪とかじゃない気がしてたから」

「一応世間には妖怪で通してる。言ったところで分かることでもないからな。自称だし」

「自称なんだ」

「うん……」



大精霊の知名度は低い。何故なら俺しか名乗ってないから。売るような真似もしてないし。



「まぁひとまず落ち着いたならそれでいいや。お前はこれからどうする?」

「私? そっか……屋敷にはもう帰れないもんね」

「家なし子。大変だニャー。可愛い子は旅をするんだニャー」

「舞風も旅してるんだっけ?」

「根無し草の紳士の心、舞風とは私だ」

「そう。じゃあ連れて行ってよ。私も」

「なん……だと?」



目を見開き、言葉を零す。大して妹紅はニヤニヤと顔を歪ませていた。



「やだ」

「紳士なんでしょ?」

「だから?」

「こんなか弱い女の子をこんなところに置いていくの?」

「殺しても死なない奴がよくも言う」

「殺しても死ねないの間違いよ。どうせ当ても無いぶらり旅なんでしょ?」

「……まぁ、否定できないけど」

「それじゃあ決まりね」

「強引な奴は嫌われるって親に聞かなかったか?」

「父上は構ってくれなかった」

「そういう黒い冗談ブラックジョークはいいです」



はたまた、厄介なことになってしまった。そう思いながらも何処か安心する俺。やはりたったの三年程度なれどそれなりに見知った仲を見捨てるようなまねをしたくもなかった。



「でもたまにお仕事で臨時にいなくなったりするぞ」

「その時は待っててあげるから」

「ダメだコイツ。地獄の果てまで着いてくる気だ」

「ほら、地獄ならまた今度一緒に行ってあげるから」

「そしてコイツ俺を地獄に連れて行く気だ。止めろ。俺は舞うから舞風なんだ。楔が出来たら舞えんだろう」

「その時は一緒に舞ってあげるよ」



……どうしようもない。女は怖いとは誰の言だったか。


そのどうしようもない趣のまま道連れ一人。それが幸と出るのか不幸と出るのか。それは分からないが、たまには二人旅も悪くは無いかと妥協した。














☆〇☆☆〇☆

















『小娘が!! 構ってやれば付け上がりおって!!』



――父上にとって、私はただの小娘だったのだろうか?



『滑稽か!? 無様か!? 腹がよじれんばかりに愉快かッ!?』



――そんなつもりはなかった。ただ、私の中ではかぐや姫なんてどうでもよくなっていた。



『この私があれだけ物を送り、あれだけ声をかけたというのに……月の人間めッ!!』



――悪いのは月の人? 本当にそうなの?



『ええい!! そんな目で見るな!! 小娘……めかけの子がぁ!!』



――お願いだから。それ以上言わないで……ッ!!





『妾の子程度が図に乗りおって、出て行け!! 二度と我が藤原家の敷地を跨ぐな!!』




――目の前が真っ白になり、気付けば私は一人月だけに照らされた空の下を歩いていた。


私に父上を恨むことなど出来はしないだろう。そして、かぐや姫を恨むことが筋違いであることは常々理解している。そもそも月に帰ってしまった彼女を恨むことに意味など無い。


分かっていても、怒りを何処かに向けなければ収まらない。


当てもなく、帰る場所も失い。ただふらふらと、そして奪った蓬莱の薬。


あれを呑んだとき『私』が死に、『私』が生まれた。


今の私は不老不死、蓬莱人の藤原妹紅。父に捨てられ、自棄に走った愚かな女の死んだ後。



さようなら、人間だった妹紅。


お願いだから、かぐや姫へのやりようの無い怒りを抱いたまま、思い出にいてちょうだい……












妹紅が黒い。どうしてこうなった。舞風のせいだ。違いない。



暗いような大して暗くないような。藤原家の末娘は名前が不明=……除籍?

と言う結論に至った。バカジャネーノ!!



妹紅同行。俺、女の子を可愛くかくの苦手なんだ。多分そういう成分は少ないぜ?



妹紅を覚えさせないでわざわざ「いもうとこう」と打ち込み変換する俺。





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