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東方大精霊  作者: ティーレ
2.ソレハ空白ノ時ヲ経テ再ビ現世ニ舞イ戻リ
21/55

舞風と月姫


おおよそ一週間ぶりの更新。大学から除籍されたい。


題どおり、ニート姫登場。口調等については悪しからず。


数学で39点取ったぜ!! さて、どうしよう。




「――春……はーるさーきーの――」



妹紅の家に滞在を始め、早一週間。何事もなく過ぎていった時間はやはり俺から見れば一瞬、いや刹那で、もう気付いたらと言った感じである。


さて、この一週間何をしていたかと聞かれたら、ぶっちゃけ何もしていないと答えよう。細かく説明するとしたら、妹紅に付き合っていたらいつの間にか時間が経っていた、としか言えない。とんでもなく恐ろしいものの片鱗を味わったぜ、は数時間前の俺の談。因みに今季は夏である。歌に意味は無い。



「みーずがなーがーれーぇてー」



このままではいけない。このままではニートになってしまう。そう考えた俺は妹紅が目覚めない朝早くに屋敷を後にした。別に家出じゃないよ? 帰ってくるよ?


何はともあれ、珍しく八雲からの収集も無い、安らかな日々は満喫した。そろそろ次に移るべきだ。



「あーめはやーまに、っとぉ。ここかな?」



そう、かぐや姫の元にそろそろ行くべきだ。因みに今の時刻は既に夜である。その屋敷を探し出すのに時間をかけすぎた。


つい先程に何もしていなかったと語ったばかりだが、当然一日中屋敷に篭ってだらけていたわけでもない。俺だって仕事するときはちゃんとするのだ。



……なんて、使用人の噂が嫌々ながら耳に入っただけなのだが。



聞くだけすると藤原不比等のかぐや姫に対する心酔のしようは半端じゃないようだ。こそこそと一流の職人を集め、蓬莱の玉の枝(の偽者)を作らせようと必死になっているらしい。


そうなるとやはり史実通り事実ががばれてダウトになってしまうのだろう。


まぁそれは俺にとっても半ばどうでもいい話だ。妹紅のような人間ならともかく、自分に対して関わりの無い人間に助けの手を差し出す理由も無い。


して、今はかぐや姫だ。月人であることは勿論、帝を魅了するその美貌とやらも見てみたい。それに聞いておくこともいくらかある。



「でも、これは厳重過ぎだろ……」



かぐや姫の住む屋敷は藤原の屋敷より一回り、二周り小さい。元が竹取を生業にしていただけあって屋敷を大きくする必要性を感じなかったのかもしれない。だがそれにしては警備の人数の多いこと多いこと。だが俺にとって問題なのは警備の数なんぞではない。


屋敷を囲む柵。そこから立ち上る結界が問題なのだ。さぞ高名な陰陽師でも呼んだのか。それは恐らく中級でも破れない。八雲なら指先一本で粉砕しそうだが、興味なんて欠片も無いだろう。


無論、今の俺がそれに飛び込んだところで一瞬で消滅。ピチューンが関の山だ。


が、わざわざ結界に対し無策で突っ込むような妖怪ではない。



「ここをちょいちょいっとして、開いた開いた」



封、すなわち結界を操る能力を持つ俺に対し、結界は無意味だ。これに関してだけは専売特許と言っても過言ではない。


やすやすと開いた小さな穴をくぐり、俺は敷地内へと侵入すると自分の気配やらなにやらを含める『存在感』を封印した。


これさえあれば俺に潜入出来ないところは無い。正しくこれは俺の存在感を皆無にする。


……寂しくなんか、ないんだから――ッ!!



「お、団子もーらい」



廊下に積み重ねられた月見団子を摘み取り、口に運ぶ。うむ、美味だ。もう一ついただこうかと思いきや侍女らしき女性が団子を乗せた三方を持っていってしまった。


残念に思ったが、あれに着いていけばかぐや姫の元に行けるのではないかと思い、その後ろをひたひたと歩き出した。


たどり着くまでに約数分。ひたすら暗い廊下を歩き続けた。先程小さい屋敷と言ったことを今すぐ訂正したい。ここも十分でかかった。


たどり着いたそこは障子の前、団子を一旦下ろし、正座をしてから「失礼します」と礼儀正しそうに会釈する。隙ありッ!! 俺の手が団子へ伸びる。


女性は三方を再び持ち、室内へと入る。閉められる前にそそくさと中へ入った。



そこにいたのは一人の女性。腰までもある髪は見るからに艶があり、月の光に照らされながら縁側に腰掛けて足をばたつかせていた。その様はなんと面白い絵になることか。


侍女が入ってきたことに気付くと嬉しそうに笑った。その顔は確かに美人と言ってもいいだろう。



「私のお団子、ようやく来たの。待ちくたびれたじゃない」

「も、申し訳ございません」



そこにいた女性は恐らくかぐや姫だろう。だが彼女は美人と言うより美少女の方が正しいかもしれない。なるほど、容姿端麗とは彼女のためにこそある言葉、と言っても過言では無いだろう。


侍女をからかい、そして急かす。行動もやや子供に見えないことも無い。そして、傍に置かれた三方の上の団子に手を伸ばそうとして止まる。



「――これはどういうことかしら。頼んだより数が少なく見えるのだけど?」

「い、いえ。そんなはずは……」

「昨夜は十五夜だったから今宵はそれよりも多く怖いと私は言ったわ。しかしどうみてもこれは昨日より少ない……貴女、侍女の身分で勝手に手を出したのかしら?」

「め、滅相もございません」



……あれ。なんか罪悪感が沸いてきたぞ。でも今この場で封印を解いて謝罪をするわけにもいかないし。と怒られる侍女さんを横目に俺は思っていた。



「……次に私のお団子に手を出した場合、どうなるか分かるわよね?」

「は、はい! 失礼しました!!」



侍女さんは回れ右をしてそそくさと部屋から出て行く。かぐや姫はそれを見て「まったく……」と呟き、団子に手を伸ばした。


と、俺もついでに手を伸ばす。かぐや姫の傍に座ったのは言うまでも無い。



「……はぁ」



なにやら憂鬱そうにため息をついたかぐや姫。屋敷暮らしは思ったよりストレスが溜まっているのかもしれないと同情した。思うだけ思ってその目は月に向けられていたけど。


割とどうでもいい話だが、俺は華より団子な人間である。かぐや姫がどれだけ美人であろうと、彼女に見惚れるよりは団子に手を伸ばす。


しばし黙って団子を取り、咀嚼を繰り返していたが、やがての結末は、決まっている。


月を見上げながら団子に手を伸ばしたが、手は空を切る。団子がなくなったのだ。そしてそこで、同じタイミングで手を伸ばしたかぐや姫。



――今だから言うが、俺のこの存在感を封印することには欠点がある。それは視覚、聴覚、嗅覚をごまかすことが出来る。しかし、触覚や味覚だけは対応していない。後者には対応する必要性を感じなかったから。前者にはそこまで高度になると無駄に神経を使って気を抜くと全てが解除されるから。



俺が何を言いたいのか。もうお分かりだろう。



「…………」

「…………おろ?」



触れ合う手。見つめる目。やや眠たげ――と言うより胡散臭げ?――な表情は俺の顔に真っ直ぐ触れられている。



「……あなた、誰?」



呆けたように吐き出された声。俺は胸を張り、腰に手を当てこう言った。




「――団子の妖精ですッ!!」




直後、俺の頭が揺れた。初回でアッパーってどういうこと?














☆〇☆☆〇☆


















一体なんだというのだろう?


月見をしながらまったりと団子を食べていて、気付いたら隣には一人の子供。気付けなかったとか、そんなレベルではない。感じることも出来なかった


身なりはそれなりに綺麗に見える。汚れ一つ無い純白の衣を身に纏い、黒く透き通るような髪色をしている。ただその手の枷のような無骨な腕輪が気になったが。



「それで、実際のところ貴方はなんなのかしら?」

「だから団子のようせゲフンゴフンやっぱりなんでもないです。ただの旅人です」

「そう」



これ以上話すのも面倒くさくなり、話をそこで切って団子に手を……



「……そういえばもうないのよね」

「ん? どうした? そんなガックリして」

「貴方のせいでしょ……」



まるで他人事のよう……いや、実際他人事か。ただ月を見上げるだけには味気ない今宵。こうなったならこの子供にでも付き合ってもらおう。



「貴方、名は?」

「人に名を尋ねるときは自分から名乗れって言われなかった~?」

「残念ね、言われなかったわ」

「失望した。かぐや姫の教養方法に失望した」



知ってるじゃない。と頭をゴツンと叩く。なにやら痛そうにさすっているが、そこまででもないだろう……



「実録、かぐや姫は暴力的だった。これは売れる」

「そんなこと言ったところで誰も信じないわよ。どうでもいいからさっさと名乗りなさい」

「あいやや、これは失礼申した。自分、たびする夢見ゆめみ只歩ただあるく、齢はそこそこの旅人舞風でさい」

「長いわ。簡略的に」

「旅人の舞風でぇす」

「よろしい」



ふざけた子供、だが自分をかぐや姫と知ってこんな態度をとる人間など一人もいなかった。その点だけでは暇つぶしの対象になるといってもいいだろう。



「知ってるみたいだけど、私は輝夜よ」

「こんな小市民相手に名乗ってくれるなど光栄の極み、寛大なお心に感謝いたします」

「……貴方、目上の者に対してそういうことを言うときはもっと顔と言葉を協調させなさい。馬鹿にされているようにしか感じられないわ」

「それは失礼。性分でして」



ぺロリと舌を出し、悪びれもせずにその口の回ること回ること。まるで悪戯好きの大人を相手にしているかのよう。


しかし、そこまでの嫌らしい笑みがまるで嘘のように消え、その表情はとても子供のものとは思えない真剣味を帯びた。



「――時に、貴方は何故月を見上げるのか」

「? 別に不思議なことでも無いでしょう? 明かり一つ無い暗闇の世界でたった一つの光を見上げるくらい」

「あい、それだけではありません。ただ――」

「ただ、なに?」

「――貴方は月を見上げて何を思うのか。それが気になりましてね」

「ッ!!」



……まさか、この少年は。そういえばこれの服装は全くと言って見たことの無いようなもの。少なくとも、人が着ているところは見たことが無い。



「貴方、まさか月の……」

「否、とだけ答えさせていただきましょう。多少因縁ありなだけです」

「……貴方の目的は何?」

「何も……いえ、一つだけ聞きたいことがあります。貴方がやがて月に帰るのは、いつになりますか?」



そこまで知っているのか……違うとは言ったが、何の関係も無いようには思えない。しかし、いつか帰ることは知っていると言うのに肝心の帰る時を知らないなんて、妙なことだ。


元月人? いや、それはないか……?



「……恐らく、五年、いや三年程度後かしらね」

「結構。それさえ聞ければ来た甲斐があったというもの――さて、辛気臭い話はここまでにしておきましょうか」

「何を――」



少年の顔が再び先程の悪戯小僧のものに戻り、縁側から跳ね降りて庭に舞った。


一見無様な舞は身に纏う純白の衣により不思議な独壇場と化した。


『風』の様に『舞』う。なるほど、舞風と言うのもただの偽名でもないらしい。


月の光スポットライトに照らされた小さな舞台ステージ。幻想的なその姿は言葉で語るよりもその正体を曝け出した。



「貴女は、この地上が好きですか?」

「……ええ。たった数年しか過ごしていないけど、大好きよ。いえ、月が嫌いだったのかもしれない」

「月が寿命を奪うから?」

「正反対ね。私は地上の穢れが物から永遠を奪い、生物には寿命を与えると聞いたわ。まぁ、意味は同じだからいいのだけど」



踊る。踊る。歌を歌うかのように言葉を紡ぐ。その表情の楽しげなことは至上の喜びにも感じられた。



「俺達は地上に生まれ、地上で生きてきた。月人の祖先もまた然り」

「生憎私は月生まれよ。地上に来るのだってこれが初めて」

「そう。だから『俺』は貴女を受け入れる。受け入れられる。例え月人だろうと。邪な感情を、抱かない限りは」

「もしも、月人が貴方に牙を剥いたら?」



ピタリと舞は止まる。表情は悪戯小僧から三日月のようなにやけ顔へ。背筋が冷えた。





「――無論。美しく残酷に、塵一つ残さずに消滅させましょう。骸など、絶対に残させはしない」





視界がだんだん暗くなっていく。最後に三日月のように避けた口元が過ぎり、意識は途絶えた。














☆〇☆☆〇☆















「……俺らしくも無いことを」



まるで脅すかのような、狂言のようなことばかり口走り、最後に能力で彼女の意識を閉じた。


あそこまでするつもりはなかった。彼女が地上を好いていると言った時点で暗雲は晴れた。されど身に染みた後悔はそれに終わりを与えなかった。



「……アホらし」



からんころん、えっちらほっちらと帰路へつく。嗚呼、三年。もしくは五年。とても長いような気がする。遥か昔を生きた自分にとってはほんの一時だろうに。


月明かり、ほぼ満月と変わらない月の光が纏った衣に反射して無駄に眩しい。








――嗚呼、俺は何処に向かっているのだろう?















あと、帰宅直後寝ずに待っていた妹紅にエルボーを食らわせられたのは、意外と余談である。








完成度は微妙。伝えたいことだけ伝えて終わり感が否めない。区切り方って難しいね。


かぐや姫が登場する竹取物語の成立年は不明。700年代は江戸時代の学者による推測。その論が一番強いと言うこともあり、普通に年代の変更はないです。


正確な年はどうしても分からない為、708~710を目安にして考えてます。


と言うことではっちゃける舞風さん。団子の精霊なんです。これに関しては前々からなんとなく考えてました。


妹紅のエルボー、完全に余談ですね。少しがさつになってきた……?


実は団子を乗せる三方を調べるのに要した二時間。なんでもっと早く見つからなかったし。更に言うなら縁側をド忘れして無駄にした3時間。その時の俺爆発しろ。


そのうちオリキャラの設定集でも出してみようかなぁ? なんて考えてます。勿論オリキャラはまだまだ出できます。


最後になりますが、執筆遅れて申し訳ございません。これからも思うとおりにいかないことが多々あると思いますが、これからも東方大精霊、よろしくお願いいたします。



追伸


スイカを食べているとふと萃香を思い出して……結果病んでるなぁと思うこのごろの作者でした。







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