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東方大精霊  作者: ティーレ
1.目覚メレバ幻トナッテ存在セリ
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妖精と妖怪

改めて自分の文才のなさに泣けた。


と言うか今更ながら思うが原始じゃ原作知識なんかあってないもんじゃん。


――あれから早くも一週間が経過した。


たったの七日では現状に慣れ親しむことなど出来るわけもなく、俺はその日もまた群れを離れて一人特訓に勤しんでいた。群れ、と言う物言いは自虐に近い物を感じるときはあるが、まぁその通りなのである。


今の自分の姿となんら変わりない姿をした妖精――いつまでも羽人と言う呼び方もどうかと思って――達とは別行動をとっているのだ。先も述べたが自分も妖精達とほぼ同じ背格好をしている。


しかし、差がいくつか存在した。特に秀でた特徴の差は髪と目の色である。妖精達は皆緑、もしくは青い髪をしていた。だが自分は違う。髪は白――と言うよりは白銀かもしれない――く、目は茶だった。その差の理由は分からなかったが、自分が前世に近い記憶を持っていることが少なからず関係しているのだろう。多分。


あと他の妖精は皆衣服のような物を纏っているのに自分だけ全裸だ。何故だ。こればかりはどうしようもなく、羞恥心を招いた。仕方ないから原始人のように草で代用することにする。


この七日で妖精達に何度か近づいてみたが、特になんと言うこともなく受け入れられた。その変わりに光りの弾のような物を飛ばされたり追い掛け回されたりした。どうにもそれは日常茶飯事の事らしくなんび――何人か撃墜されるのを見た。だが数分後にはケロリとして飛んでいるのを見てびっくりした。別にそっくりさんと言う訳ではないようだった。


それを通してもしかしたら余り痛くないんじゃないかと思って試しに当たってみたがこれがもの凄く痛くて片腕が飛んでいった。いや、比喩表現ではない。実際左腕がもげて激痛から気絶したのだ。二度目の人生はやくも終わりかと泣く泣くブラックアウトしたが、目を覚ますと再び青空を見ながら四肢が無事な状態でぷかぷかしていた。おいこら、コンティニューか。


以下のことからどうにも死んでも――実際死ぬ程の怪我はしてないが――再生できるようだった。だがそれでも痛いのだけはごめんなので一発も当たらないようになってからそのうち混ざりたいと思う。



――さて、この短い期間でやはりこれが夢ではないと実感しながらも自分は飛行練習に励んでいた。人生を生きてきて羽など初めて生やしたのでいかんせん勝手が分からない。どう羽ばたけばどう飛ぶのか分からないのだ。こう言うところは本能に期待したかったのだが、然もあらん。


何とか形にしていき、無理な軌道も試してみたが宙返りの後に湖にinした。気付いたら湖の上に浮かんでいた。おい、スペランカーか。頼むから最弱の存在として再誕したなどと言う事は勘弁して欲しいものだ。ともかく無理な軌道を描かなければそれなりに早く飛ぶことができるようになった。


しかしどうにも自分が他の妖精と個体としての差があるような気がしてならなかった。

他の妖精に話しかけたりなんてことは何度もしてみた。しかし帰ってくるのは全て理解ができない言葉だった。自分は日本語で話しているのだから向こうは妖精語でも話しているのか。身振り手振りではさっぱり話が分からない。


飛行を一通り終えた俺は次にあの光の弾の出し方を練習してみた。とりあえず今はこれを妖力弾――妖精の力の弾――と呼称することにした。この妖力弾は偉く苦労した。出ろ出ろと思ってみせてもうんともすんとも言わず、困難を極めたと言ってもいい。何時間もそれ一つを求めて特訓した。そして、疲労が限界に達し、最後にもう一回と思ったとき、自分の中にある何かが湧き出したのだ。


目には見えないが空気が揺らぐ感覚。今の今まで感じていた疲労が嘘のように消え去った。言うならば、そう。自分の中の秘められた力が……



考えた瞬間顔を覆い隠し厨二病乙と叫びながら俺は空を駆け巡った。痛い。痛すぎる。



とにかく俺はこれを妖力と仮称し、訓練に用いることにした。これを身に纏ったりしている間は身体能力的なものが増強されるのだ。界王拳と叫んだ俺を誰が咎められよう。


妖精達には少し冷たい目で見られたけど。


そうして訓練訓練と時間を食いつぶしてみると腹が減らないことに気付いた。眠気もない。どうも人間の欲はカットされてしまっているようだ。しかし疲労はある。然もあらん。


だが状況の変化にストレスを感じるのが人間である。一度心のまま泣き叫んで暴れまわってみたがなんと言うことか。小山が一つ丸裸になってしまった。住んでいた小動物の皆さんすいません。


そうして一週間と言う一つの区切りを迎えたとき、それは唐突に現れた。





















それはいつも通り、寝覚めの体操をしていた時のことである。体が柔らかくなっており、柔軟がやりやすくなった、と言うのは簡単な余談だ。



「? なんだ?」



聞こえたのは妖精達のざわめきである。自分も一つの妖精コミュニティーとして所属しているからか他の妖精の状態をなんとなく理解できる。余程の事がない限り気付かないようカットしてあるが。


だがそれはほぼ同時に感じられた。同時に複数の妖精達が撃墜されていった。目を向けてみるとそこには人並みの大きさの鳥がいた。いや、鳥ではない。自分達と同じように背より翼を生やした物。容赦ない攻撃を妖精達にばら撒き、楽しそうに笑っていた。


はてさて、自分はこの時どのような行動をとれば正しかったのか。


いくら再生するからと言ってあれほどまで容赦のない攻撃をする理由はない。アレは娯楽で妖精達に攻撃を仕掛けているのだ。コミュニティーとしての繋がりから悲鳴が届く。



痛い。痛い。怖い。怖い。イタイ。コワイ。イタイ。コワイ。



気付いた時、自分はその場へと急行し、横槍をいれていた。正確には小さな妖力弾をソレに向かって撃ち放ったのだ。何故かと聞かれて正義心と答えることは無い。延々校長のありがたい話を聞かされるよりうっとうしいそれを遮断したかったから、としか言いようが無い。一応他人事とも言えない訳だし。


まさか予想を越えた反撃をもらうとは思わなかったのか、不意を突かれたように間一髪で避けていた。そしてこちらを見たとき、一瞬驚きからか目を剥いたが、すぐに怒りを滾らせたものへと変化した。



「……妖精風情が私に攻撃を仕掛けてくるの?」

「こりゃ失礼。手が滑りましたよっと」



こちらを鋭い眼光で睨んでくるその者の姿形は女性だった。背中に黒い翼を生やしており、言うならば昔話の天狗、が一番それに近いかもしれない。鼻は長くないが。こんな状況じゃなければ紳士的に話しかけてよい関係を築きたいとも思ったけれども今となっては仕方ない。


そして、なんとなくだが分かった。向こうの潜在的な力量はこちらとは比べものにならない。元々こっちはちっぽけな妖精だ。言っては悪いが腐るほどいる。



「失礼ながら、俺達に攻撃を仕掛けてきた理由は?」

「理由? 弱者を圧倒し、屈服する。その工程に理由なんてあるの?」



明らかにこちらを見下した言動。どうにもやっこさんは自分が一番じゃなけりゃおさまらない気質らしい。そう言うことならば選択肢は絞られる。元々対話は得意分野じゃないし、まぁ喧嘩が得意と言うわけではないがガチンコで勝負したほうが今は助かる。



「そうですか。んじゃ、試してみますかい? 窮鼠が猫を噛む瞬間ってものをさ」

「ほざけ妖精!! お前程度のちっぽけなものがあやかしに挑むなど。身の程を知りなさい!!」



それが始まりの合図であるかのように女は手から俺の妖力弾に似た何かを放出する。それも一つや二つの話ではない。数え切れないほど無数の弾だ。


いきなりのことに驚きながらも妖力全開で光の弾をかわし、逸らしていく。一つ一つはそれほど早い訳でもなく、ギリギリながらも回避することができた。



「おのれ、ちょこまかと!!」

「……これしか能がないもんでっ!!」

「小賢しいぞ妖精風情が!!」

「おうおう。天下の妖さんはたった一匹の妖精も打倒できないんで?」

「っ、きっさまぁぁぁぁぁぁ!!」



弾を撃つのを止めてこちらに殴りかかってくる。流石に手をパンパンと叩きながら挑発したのは拙かったかもしれない。しかし逃げ場所が広い限りは攻撃に当たる気がしない。殴り合いに慣れているわけではないが、恐らく当たらないだろう。ほぼ紙一重と言える差で避けていく。危ない橋過ぎて今からでも渡るのを止めにしたい。今顔掠った。怖い。



「さっさと落ちなさい!」

「痛いのはご遠慮でござんす」

「落ちろ!!」

「だが断る!」

「死ね!!」

「何故に飛躍されたし」



初めてと言ってもいい戦いに興奮しているのか。我ながら無駄に口が回る。おかげで今更何を言っても敵さんは止めてくれる様子はない。余計なことを口走りすぎたかもしれない。これを終わらせるには疲れるのを待つか、それとも勝つかの二択しかないだろう。前者や逃げるなどと言う選択肢は自分が先にスタミナが切れるのが落ちだろう。我ながら推奨できない。


そう来ると反撃以外の手が残されていないが、自分には攻撃方法も一択しかない。即ち、妖力弾。威力は保障済みだ。なんせこれ一つで木をへし折るほどの力があるのだから。


チャンスは一度。二度目以降は相手に避けられるだろう。となればカウンター気味た攻撃になる。博打もいいところだ。あまり俺は好きじゃない。


――好きじゃないが、嫌いでもない。



「落ちなさいって、言ってるじゃない!!」

「絶対――やだねっ!!」



殴りかかってきた瞬間に妖力を集中し、素早く女の視界の外へと脱する。そして手に溜めた力をそのままがら空きな頭に叩き込んだ。まるで石と石がぶつかったような音が響いた。ぐらぐらと揺れるその体はやがて静かに落下を始めた。俺がハッとしたのは大きな音を立てて湖に落ちた瞬間で、俺は慌てて湖に突っ込んだ。


だんだんと沈んでいく女性を抱え込んで浮上し、一番近い陸地に下ろすが、目を閉じたままピクリともせず死んでしまったのではないかと思った。しかし、正常に上下する胸に安堵の息をもらした。よく見ると女性は美人だ。見た目は二十歳に届かぬだろう黒い髪に整った容姿。よくいる黙っていれば綺麗な人に違いないと思った。





















――目を覚ましてすぐさま殴られた。痛い。


彼女曰く鬱憤が溜まっていてそれを妖精で晴らしたかったのだと言う。まぁ妖精死なないみたいだしね。でも痛いから勘弁してあげて、と言うことだけはそれとなく伝えた。流石に頭が冷えたのか黙って話をしていた。



「それにしても、アンタホントに妖精なの? アンタみたいなのは初めて見たよ」

「どうにも妖精みたいですね。他の皆より若干恵まれてそれが幸か不幸かを左右してますが」

「ふぅん。あたしは烏天狗の真可まか



その問いに答えようとして浮かんだのが人としての名だった。よくよく考えてみれば第二の人生(?)など言いながら名前の一つも考えてはいなかった。まぁ今まで必要なかったと言う理由もあるが。



「どうしたの? まさか名前がないのかい?」

「……お恥ずかしながら」

「仕方ないね。じゃああたしが考えてあげるよ」



ご遠慮します。と言いたかったがまた殴られそうでなかなか言えなかった。変な名前だったら嫌過ぎる。しかしこの女性も話してみれば中々気さくなものだ。最初は貴様! っとか妖精風情が! っとか言われたのに。



「よし、アンタは舞風まいかぜだ。風みたいに舞うように攻撃を避けてたから」

「そんな安易な……いやいやいやいやいや。文句なんてないです。全然ないです」



よし! 笑う女性は年齢不相応に幼く見えた。


こうして妖精である俺、舞風に始めて妖精以外の知り合い、真可ができたのであった。













よく他の東方SSで何千年生きたりする作品があるけど、人間の頃の記憶残して置けるとか無理ではないだろうか?


まぁ妖怪だから頭の中身がとんでもなくなってると言う解釈もとれるのだけれども。


今回、主人公は妖精です。妖精ってなんだかんだですぐ攻撃してきたりするのであまり頭がよくなかったり、もしくは記憶力がかなり悪かったりするんだろうなぁと思いました。


文中のコミュニティーですが、妖精が死なないのは湖のなにかの加護を受けているからだと言うことで自己完結しました。


これからも能力なりなんなりで自己設定飛び出しますが、温かい目で見てやってください。


因みに「But,refuse」の意味については適当にググってみてください。


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