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東方大精霊  作者: ティーレ
2.ソレハ空白ノ時ヲ経テ再ビ現世ニ舞イ戻リ
19/55

舞風と隙間


サブタイが『妖精』から『舞風』に変化。だってもう妖精じゃあらへんもん!!


インチキゆかりん登場。未だに妖々夢のファンタズムどころかEXすら行けない作者が書き上げます。参考は他の作者と永夜だけ。


思ったりはやく投稿。しかし次からは本当に遅くなるであろう。




――寝惚け、だろうか。いまいち頭が上手く働いていないように感じる。目覚めた時、ただぼんやりと綺麗な月を見上げていた。僅かに覚醒した時はあそこは月人の文明が蔓延る場所であることを思い出して顔をしかめたが。


さて、未だに抜けきっていないようだがわがままも言えないだろう。あの封印から一体どれだけの時間が経過したのか。確認する必要がある。


どうするかと考えながらふと横を見てみれば一人の少女がぽかんとしてこちらを見ていた。その手には自分が愛用していた剣が握られており、封印が解けたのは彼女のおかげだと言うことに気付く。


それとなく感謝の言葉を伝えると、その少女が妖怪、しかも大妖であることに気付く。その事には素直に驚いた。あの剣にはそれ単体で作用を起こす結界術式が刻まれており、並大抵の妖怪では進入すらできないと言うのに。


名を、いや、存在を問われ、俺は答えを返す。未だ語れるのは名くらいのものなのだから仕方が無い。妖怪としては何かと断言できる存在でも無いので曖昧にしか返せない。


別に、自分が何者かなど大して重要でも無いだろう。



「舞風……? そんな妖怪……いえ、そもそも貴方は本当に妖怪なの? 妖力なんて感じられないのだけれど?」

「能力だ。使い勝手はともかく便利な能力が……ああ、すまん。少し待て」



不思議そうに頭を傾げられたが、流石にこれは気持ちが悪い。寝惚けると意識が混濁したようになって口調が定まらない。昔からの癖なので断念しているが、このままでは何を口走るか分かったものではない。



「あ、あ、あ、うん、うん。よし、待たせた。これは俺の能力さ。言うなれば外と自分とを遮断している状態。かと言っても元々妖力はそんなに大きくないけどね」

「……それが貴方の素の喋り方かしら。良く分からない妖怪ね。貴方はなぜ封印されてたの?」

「ん。それに関しては秘密って事で。別に悪いことして封印されたわけじゃないから無問題」

「無害な妖怪が封印……まぁ無いわけじゃないけれど、この結界の規模は異常よ。山一つを覆うほどの結界なんて人間に作れる者でもない……貴方、一体何に封印されたの?」

「……封印を解いてもらったからには答えるのが道理かもしれないけれど、ごめん、言えないわ」



少女の指すような視線が突き刺さる。しかし言うものか、と意地でどや顔をしたら更に抉られるかのように睨まれた。



「……確かに今更ね。それが人間ならばもう生きてはいないだろうし、今は貴方のことが聞きたいわ」

「守秘義務」

「却下、よ。貴方は封印を解いてくれた恩人に仇だけを返すの?」

「あいやや。それを言われると痛い。しかし、答えられぬこともあるということは、ご存知でな」



不満そうなその顔だけは見なかった事にさせてもらう。



「……まずは私も自己紹介をするべきね。私の名は八雲紫。境界の妖怪よ」

「教会の妖怪? 洋風? 十字架とか持ってるの?」

「どうしてそんな間違いが犯せるのか不思議ね。貴方博識そうに見えてあんまりなのかしら?」

「いやいやはやはや、軽い冗談にございまする。しかし境界の妖怪……聞いたことが無いね」

「言っておくけど私しかいなくてよ。そういう力を持って存在しているのだから」

「……成る程。能力か。さしずめ『境界を操る程度の能力』、とでもいったところかな?」

「ええ。それで、貴方の力は何かしら?」

「守秘義務……冗談にございます」



流石にこうも睨まれてばかりでは辛い。そう言うのはキツイ目線が好きな奴にだけやってほしい。因みに俺はそんな性癖は無い。



「『封を操る程度の能力』、それがこの舞風の能力さ」

「……名前を聞く限り結界を操るように聞こえるけど、貴方封印されてたのよね?」

「あい。ソレが?」

「……いえ、なんでもないわ。なんだか貴方と話してると調子が狂わされる」



失礼な。とは心の中で呟くだけにしておく。言ったところでまた冷たい目線に晒されるだけだろう。



「時に、俺も聞きたいことがあるのですが?」

「それは構わないけど、貴方、さきほどから口調が固定されて無いわよ?」

「これに関しては癖でして、お構いなく。さて、今のお歳……おおっと、暦を、教えていたいただけるかな? お嬢さん・・・・?」

「貴方、わざとでしょ?」



言うまでも無く愚問だ。



「……7世紀、だったかしら」

「なんだよー、分かんねーのかよー。使えねーなー」

「この剣で封印し直してあげようかしら?」

「スイマセン」



そうか、7世紀か……7世紀? 7世紀とはもしや日本の旧暦の時代のことか? いやいや、それはややおかしいのではないか? その計算をすると俺は過去を遡った事に……いや、待てよ? そもそも今までが過去だったのか? 俺は過去に生まれ直していたのか?



「――ちょっと、いきなり黙らないでもらえるかしら?」

「んあ? ああごめんごめん。そういえば八雲はなんでこんな辺境の山に? 用もなく立ち寄るとも思えないんだけど」

「暇つぶし、のつもりだったわ。私はね、叶えたい夢があり、その為に動いているのよ」

「……聞かないって言っても言うんだろう?」

「勿論。私の夢はね。人と妖怪が生きる理想郷を築くことよ」

「!! ……それはまた」



昔の俺のようなことを、なんて思ってしまった。



「それの完成には協力者が足りないわ。その為に私は各地を回って実力者達に協力を申し込んでいるのよ」

「成る程。一人で出来なきゃ皆で渡ろうってことか」

「そう。そして舞風、貴方にも協力を申し込むわ」

「は? 俺? 俺ですかい? ただのしがない妖怪って言ったじゃないですかい」



俺は嘆息する。それも見るからに呆れるように。しかし八雲はそんな事を気にも留めず、歩み寄り、剣を差し出した。



「貴方ほどの異分子を放置するのもそれなりに危険なのよ。能力持ちは貴重であるし、嫌だと言うならこの剣は貴方の胸に吸い込まれていくかもしれないわね」

「……アンタ、よく性格が悪いって言われるだろ?」

「あら、そんなことはないわよ?」



あるよバカたれ。と言う悪態を吐きたくもなったがまぁ自分の異様さは残念ながら自分が最も理解している。つまりおかしいとは思いながらも納得する気持ちもあるのだ。



「で、協力と言って実際に何をやらせるつもりだ?」

「そうね……ちょうど手伝いが欲しかったし、式にでもなってもらおうかしら」

「……式?」



式とはもしや式神のことだろうか? 聞いたことがある(と言ってもかなりうろ覚えだが)、陰陽師が使役する神、もしくは妖怪だっただろうか? どちらにせよただの雑用ではないか。



「八雲、確かにお前に恩はあるがそこまで俺を好き勝手させるわけにもいかないんだよ。なんだ? 俺はお手伝いさんか?」

「なら、実力行使がいいかしら? 戦って無理矢理することも出来るのよ?」

「どうかな。俺の体の耐久度はぶっちゃけ人間並みだ。お前が触れるだけで砕けるぞ」

「……この上ない自虐ね。ならさっさと式に――」

「しかし、ここは俺の独壇場フィールド。境界の妖怪よ。魂の力が封じられるこの場で、俺に勝てるかな?」

「――ッ!!」



突如その場の空気が変化する。だがそれは強者による圧力などと言うものではない。俺の封印術を駆使した擬似的な結界。出ることは自由。変わりに入ることは不可能な不可思議な結界。その意味合いは略すなら「今なら見逃してやる」といったところだ。



「……しがない妖怪なんて法螺など良く吹けたものね」

「自分で言うのは自由さ。他人になんと言われようが、ね。


……さて八雲紫よ、ホントにやりあうつもりかい?」



俺の擬似的圧力発動結界(仮称)で咄嗟に身構えた八雲は俺の事を数秒ジッと見つめていたがやがて構えを解いた。



「……確かに、こちらだけ能力を封じられた場所で戦うなんて不利ね。貴方、最初の結界もそのつもりで張っていたの?」

「いんや、アレはずっと前にこの山に組み込んだ物だ。魂の力と妖力だけを封印する結界さ。この山を妖怪に荒らされたくなくてね」

「さっきも言ったけど、なに? 魂の力って」

「『能力と霊力は魂に内包される』。俺の持論さ。この山にいる限り能力と霊力、そして妖力は封印される。俺と言う術者だけを残してね」



さて、随分喋ってしまったが、まだ八雲のその口から答えを聞いていない。別に俺は協力しないとは言ってない。縛り付けられるのと雑用同然に使われるのが嫌なだけだ。



「……貴方は今自分が術者だと言ったわね」

「それが? 当然だろう。張ったのは俺――」

「いえ。先程調べた時確かにこの山の結界を無効にする例外が記されていたわ。でもそこにあったのは妖怪ではなかった。貴方は――」

「それまでだ。それ以上は踏み込んでいいことと悪いことの分別をつけろ」



成る程。境界の妖怪と名乗るだけあって結界には詳しいらしい。だがそれを外に漏らすわけにはいかない。主に俺の平穏な暮らしのために。



「お前の式は断る。だがたまにお前の手伝いをするくらいなら構わない。変わりに、それを漏らすな。決してだ」

「……いいでしょう。別に誰に話すことでも無いわ。貴方の正体なんて。契約は、それで成立ね」



そうして真夜中の会談は終わりを告げた。














☆〇☆☆〇☆















おかしな存在だった。少なくともそれだけは言えた。


既に封印されていた山から去っていってしまった舞風。アレはあまりにも不透明すぎるモノだった。


封を、ようするに封印を操る能力を持っているのに封印されるなんてまるでおかしな話だ。


自らの持つ力を全て遮断し、体内に閉じこめているのは勿論のこと、加えてあの両腕のものは枷としての術式がこめられていた。


妖怪としての能力を持っていることは間違いでも無いだろう。でなければハッタリにもならない。しかし、彼は妖怪ではない。それは結界に記述された暗号から読み取れた。


普通なら術者によって暗号、所謂術式であるが、それに記述された例外対象、そこにはこう書かれていた。



曰く『大精霊』、と。



そんなものは今までにも聞いた事は無い。そもそも精霊の上位種は妖精だ。大精霊など、一体どんな存在なのか理解が出来ない。彼が妖精に及ばない存在には見えない。そして精霊程度にも見えない。


大精霊、そして、舞風。これは少しばかり調べてみる必要があるかもしれない。彼が例外のうちに入ると言うことはそれに該当することを示しているのだから。



「……また面倒なことになりそうね」



誰にとでも言うわけでもなく呟いた。呟かなければこの思考はどこまでも終わらない気がしたからだ。















☆〇☆☆〇☆














「全く八雲め。変なもの付けやがって」



山を飛び出て未だ数分、服の端に貼り付けられた妙な紙切れをつまみながら俺は悪態をついていた。


式の仮契約、要するに式のお試し期間みたいな感じなんだろう。だが気が変わって式になろうなんて思ったわけでは決して無い。


八雲曰く、これは印であるとの事だ。俺の存在は稀薄で探し出すのが非常に困難だということでほぼ無理矢理つけられたのだ。勝手に式にしたら許さない等言うとそんなはずないとにやにや。アレは言わなかったら付けていたに違いない。


これがあればとりあえず場所の把握は容易になるとのことで、、俺は渋々(付けられた後に)承諾したのだ。なんだかマーキングされた気分。



――さて、それはさておき、これからどうするかも問題であるだろう。



せっかく封印から目覚めたのだ。やりたいことは沢山ある。それに、ここが俺の前世、前に生きた世のおおよそ1300年前だと言うなら、行ってみたいところも沢山ある。


数えるのが馬鹿馬鹿しいほど昔から、今こうして居れるというのはそれだけで幸運なんだろう。



「さて、まずは久しぶりに旨い物が食いたいな」



日は昇り始めていた。うん、やはり始まりは日が昇る方向。こればっかりは譲れない。


これから自分は何処に行くんだろう? 何処に向かっているんだろう?


しかし不安はない。むしろ期待だけで埋められている。


だって、もう立ち止まる必要などないのだから――










「私の式になってくれないかしら?」


「だ が こ と わ る ! !」


そんなのになったら働かなきゃいけないじゃないか。働いたら負けだと思ってる。


しかし例え能力を封じられようとゆかりんなら即殺できると思います。


さてさて、古代から旧暦へ。再び旅立ち。




おっと、ゆかりんはとんでもない過ちを犯していきました。



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