妖精と約束
い く つ か 矛 盾 を 発 見 し て し ま っ た !
東方wikiだけじゃなくて東方でwikiってみるべきだったと反省している。いくつか辻褄合わせで編集するかもしれませんが悪しからず。
あ~、課題とか死ねばいいのに~!!
永琳の仕事の手伝い(と書いて雑用と読む)を受け持つようになり、早くも一週間が経過しようとしている。仕事にはそれなりに慣れたが、この環境に慣れたかと言われればそれほどでもない。基本的に人と慣れ親しむわけにもいかない俺は屋敷内に引きこもり、もっぱら永琳と一緒にいる。ニートとか言うな。ちゃんと働いてる。
仕事は勿論、だが元々の目的は情報の交換だ。何気ない話から武器に関する話まで。因みにここが未来であるという根拠になりそうな情報はなかった。残念ながら。
薬師を名乗るだけあり、永琳は様々な薬の知識を持っている。恐らく俺の時代の物より進んでいるんじゃないかと半ばショックを受けた。風邪薬一つにしても次の日には問題がなくなるような代物だ。
俺もそれなりに里の外の話をした。だが俺は一体何をやって過ごしていたのかと聞かれ、答えに戸惑った挙句、友達の妖怪と遊んでいたことをうっかり零してしまった。あの時の永琳の睨むような顔は今も忘れられない。
そう、たまたま今は情報を交換し合う関係なだけで、本来の立場は敵同士なのだ。舞風としてはやはり人間と仲良くしていきたいので何とかしなければならない。
幸運にもその時はそれで済んだが、次ボロを出したりしたら意外と危ないかもしれない。
また、永琳の話を聞いてみると、彼女の父が言っていた他の里は確かに存在しており、この里と同じく結界で隠されているらしい。よく薬師として親子で行くそうだ。あのお父さんも薬師だったんですね。
各里に自分の生徒を持っているらしい。薬師って人気あるの? って聞いたらそうじゃなく、普通に先生みたいなことをこなしているらしい。豊姫や依姫やら名前が凄い生徒らしいがそれなりに真面目で自分の教えをよく吸収してくれると嬉しそうに語っていた。それを見ておばさんな担任を思いだしたが、すぐに変なことを考えていると見破られた。永琳怖い。
あの武器やらについては永琳にも詳しいことは分からないらしいが、唯一縮小化に成功した試作品などと語っており、別に巨大で持ち運びが出来ないものもあるらしい。威力は更に上だと言う。人類の英知が武器にだけ注ぎ込まれたらこうなるのだろうか……
そうして一週間にもなると俺はともかく永琳が俺に聞くことがなくなってしまう。そりゃそうだ。基本的に俺は遊んで暮らしているのだから。答えられることなどそもそもない。永琳も半ば予想はしていたのか、少しだけ呆れたように「密度がない人生ね」と言った。泣いた。
☆〇☆☆〇☆
「そろそろ潮時かしらね……」
「ん? 何が?」
それは一週間、ようするに七日目のことだった。いつものように薬品の調合やら運搬やらの雑用を手伝いがてら話をしていた時だった。突然永琳がいつものように考え込む様子を見せながら一言呟いたのだ。
「そろそろ出て行ってもらおうかしら?」
「ひどい! いきなり出て行けなんて! 用済みになったらすぐにポイなの!?」
「…………」
「と、言う冗談は置いといて、何で?」
冷ややかな目に耐えられず、逸らした話を元の軌道へと戻すと永琳は考えるまでもなく、ニコリと笑って口を開く。
「もう用済み」
その瞬間全俺が泣いた。この一週間でそれなりに築けたと思っていた友情は儚い幻想に過ぎなかったようだ。そうか、ならいい。実家に帰らせてもらいます。
「まぁ確かに俺が永琳に聞くことがあっても永琳が俺に聞くことはないもんな」
「これまで置いてあげただけでも感謝して欲しいわね。貴方、四日目から全部遊びの話かはぐらかしてばっかりだったじゃない」
「バレたか。しかし嘘はそんなに言ってない自信はある」
「『そんなに』ってことはあるのね、嘘が」
「それは永琳も同じだろ?」
騙し合いと言うか、上げ足取りと言うか。会話に緊張感を持ったのは……アレ? よく考えたら最近俺ろくな会話交わしてなくね? 主に蓮姫とか永琳とか蓮姫とか永琳とか。ほとんど胃に穴がレベルだよ。オゥシット!!
永琳はやや驚いた――って言ってもほとんど変わった様には見えない――様子で俺をジッと見た。それは初めて会ったときの観察する目に似てはいたが少し違って見えた。
「……ふふ」
「ははは」
不気味に笑いだけがこぼれる。しかもそれがどっちも子供って第三者から見たら絶対シュールだろ。
永琳の微笑の意味は分からない。どう言った感情を持って俺を見ていたのか分からなかったが、少なくとも嫌悪等のマイナス感情じゃない、と思いたい。
「貴方の力ならこの街の封印くらい簡単に破れるわよね。なら私の協力は必要ない、ここでさよならね」
「だな。でも分かるか? 入るのも多分自在だぜ?」
「……それで、貴方はどうしようと言うのかしら?」
「だからさよならじゃなくて、友達に対するまたねってことで」
永琳の目が少し、ほんの少しだけ大きく見開かれた。口元を抑えている。笑いでも堪えているのかもしれない。なんとなく馬鹿にされている気がしてムカつく。
「いつから私と貴方は友達になったのかしら」
「ってオイ! 出端を挫くなよ! ってかそれ何気に傷つく一言!」
「そう。貴方がそう言うならそうなのね」
永琳の目はやや穏やかになった気がする。今度こそあの嫌な目は消え去り、優しい目が俺の姿を映した。
「いつでもいらっしゃい。今度は監視じゃなく、遊びにね」
「……気付いてたんだ」
「妖怪と友人って時点でおかしいと思うわ。普通はね。私からもなんとか知性のある妖怪の退治だけでも自粛させるように言ってみる」
「……ありがとう。俺の方も、俺が信頼できる奴だけだけど、永琳の事話してみる。きっと、なんとかなるよな?」
「次会う時も。敵でないことを祈るわ」
「そうならないように頑張るんだ。お互い。約束だ」
『妖精』舞風は割り切った。でも、割り切らずに済んだ部分がこれを喜んだ。それが何故なのか、分かった気がする。
――そう、結局俺はまだ人間だったということだ。
永琳の家を飛び出し、人がいないのを見計らって結界を俺が通れるほどの隙間を開く。
勢いよく飛び出し、俺は封印を全て解放する。そうして、高く高く羽ばたいた。
嗚呼、今、俺は嬉しいんだ――
☆〇☆☆〇☆
研究室の中は一気に静まり返ってしまった。何故か、簡単だ。あの騒がしい妖精を追い出してしまったから。
「……友達、か」
不思議と口元に笑みが浮かんでいた。今の義父に八意の家にこうして連れられてきた時にはそんなものは全く縁のないものだと思い込んでいた。肉体は老化を遅延を促す薬を飲んでいるので見た目よりはずっと年齢は上だ。里の人に言えば気味悪がれるのは明白なので伏せているが。
そう、生きた年月だけを数えれば私は生まれてからまだ一年も経っていないらしいあの子より遥かに大人だ。
『友人』なんて存在は必要ないと、割り切っていたはずだ。割り切っているはずなのに――
「……喜んでいるの? 私が?」
拾われ、期待に添えられるよう努力して、そして私は里のために全ての知識を捧げてきた。
だが、彼といるのは、不思議と悪くない。
彼は妖怪とも友達だと言っていた。妖精がだ。普通なら並のことではない筈だ。だが、彼なら納得できる。
一週間、たったの一週間一緒にいただけだが、彼の人となりは理解できた。彼は誰に対しても同じように接することができるのだ。最初の演技だって、解いたらまるで長年の友人のようになっていた。
――彼は、信用できるかもしれない。
人全てが善でないように、妖怪や妖精も同じなのだ。だから、私には彼との約束を果たす理由と義務がある。
そうなると月夜見を説得する必要があるかもしれない。だが、理由を明かさないままの説得、できるだろうか……
私はいなくなってまで頭を悩ませる妖精に対して僅かながら苛立ちを禁じえなかった。
矛盾その一、と言うか明かされてなかったからセーフなんだけども。
実は永琳は月に移り住むプロジェクトを立ち上げた人物の中で最長齢ならしい。
その割には永琳って見た目若いよね、と思った結果の妥協案です。
蓬莱の薬は輝夜の能力を参考にして作ったらしいので、地上にいる内に作ったものではないでしょう。永琳の方が遥かに年上って話しだし。
長々と言い訳を並べてすいません。
あと更新が遅れてすいません。