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東方大精霊  作者: ティーレ
1.目覚メレバ幻トナッテ存在セリ
10/55

妖精と薬師


執筆が遅れた。ああ~、レポートなんか~、死ねばいいのに~。


さて、今回の話は題のとおり、あのお方が出てきます。


俺だけは……俺だけは他と違う出し方にしようって決めてたのに……何も浮かばないかった!!?





舞風です。なんと私は衝撃的な事実に気付きました。


なんとここは異世界ではなく、未来だったのです!! ででーん!


と、思い込んだ私でございますが、いざ考えると矛盾が出るわ出るわ。あくまで最も有力、と言うのが正しいですかね。


さて、抱えられて妙に発達した街に連れてこられた俺ですが、物珍しそうに見ているとまた妙な目で見られてしまったので今は無関心を装ってます。たまにチラ見はするよ。家の外装とか。


どれもこれも和風を取り入れ洋風を足したような家になっております。言うならば屋敷にエアコン取り付けたような感覚。分かりにくいか。


そこかしこから出てくる街の人に戦績を自慢しております。それの反応は暖温かな賞賛。妖怪殺してほめられるって今の俺には違和感でしかない。


やがて進んでいくと大きな屋敷がいくつか並んでいる場所に着いた。少なくとも五つくらいはあるだろうか。恐らく街の長みたいなのががいるのだろう。俺は緊張の趣で入り口を潜った。



「おお、戻ったか。ん? その子供は?」



迎え入れたのは初老の男性。顔色が少しばかり悪いように見えたが、それを思わせないためか笑顔で迎えた。だが俺を見ると銀色の眉を持ち上げて尋ねた。早くに俺に目が行くのは、まぁ服がボロボロで元の形状すら分からない状態なのだから仕方ないだろう。



「この子は妖怪に襲われていた子です。恐らくこの里の子かと思って連れ帰ったのですが……」

「ふむ。しかし見たことがないな。別の里の子ではないか?」



別の里なんてあるのか? いや、だが今はそういうことにしなきゃやばそうかもしれない。



「どうも恐慌状態のようでして。名前くらいしか情報はありませんでした。虫の妖怪に追い回されているところを保護しました」

「その割にはかすり傷一つないようだが……」



男性は銀の髭を撫でるようにして訝しげに俺を見た。俺のスーパー回避スキルが仇になった瞬間。こんなことなら切り傷の一つでももらっておけばよかった。でも痛いか。うん、悩む。



「……まぁ人間であることに間違いはないだろう。その子はわたしの娘に預けて報告を聞こう」

「呼びましたかお父様」



ふすまを開き、現れたのはその父と呼んだ男性と同じ銀の髪の美少女がいた。年齢は俺の今の体よりいくつか上に見える。



「おお、ちょうどいい。その子と少しばかり遊んでいてくれないか? 報告を聞き終わるまでの間でいい」

「……はい。分かりました。おいで」



大柄の男性の肩から下ろされ、手招きされるままその少女の方に向かった。その瞬間感じられる怖気。


少女の目が射抜くようにこちらを見ていた。顔は満面の笑みなのに、目が笑っていないとはこういうものなのだろうか?


若干躊躇ったが、少女の手が俺の腕を掴み、やや強引に俺を引っ張っていった。入り組んだ屋敷の中を左に右に、やがてたどり着いた場所はまるで研究所、のように思えた。現代科学――とは言っても今はもうないが――に似た雰囲気を感じた。


それに目を囚われ、手を引かれるでもなくその部屋に入った俺は後ろから聞こえたドアの閉まる音に気付き、振り返った。少女がこちらを見ている。今度はその顔に笑顔はなく。その目は訝しげに、細められていた。



「――私は永琳。八意永琳やごころえいりん



少女は名乗り、そして俺を見た。


その目は得体の知れない物を見るようであり。

その目はこちらの価値を見るようであり。

その目はモルモットを見ているようにも見えた。




「貴方は『何』?」



少女、永琳がそう言った時、俺は今日か緊張かよく分からないもので体がビクリと震えた。


バレている、少なくとも人間ではないことは。


打開策はない。全くを以ってない。ここは密室。逃げ場はない。出ようにも恐らくあの良く分からない結界のような物が邪魔するだろう。


俺は観念し、息を一つ吐いた。



「俺は舞風。大妖精舞風だ。しかし、それを暴いてどうする人間?」

「大妖精……? そんなの聞いた事がないわ」

「俺が初だ。そう名乗るのは、だがな」



永琳が考え込むようにして顎に手を置いた、だがその目線は相変わらず俺から外れていない。やがて何か疑問に思ったのかその口を開いた。



「貴方から妖の気配を感じないのは何故?」

「……何故そんなことを聞く?」

「貴方に口答えをする権利はないわ」

「こちらも命令される筋合いはない」

「この状況でよく言えた物ね」



確かに。普通ならそれもそうだろう。閉じ込められた者と閉じ込めた者、どちらの立場が上かなんて普通考えるまでもない。そう、普通なら。



「侮るなよ永琳。今ここで力を使えばお前を殺すくらい出来る。確かにさっきの奴らは来るかもしれないけどな」

「そうなったら貴方は終わりよ。それでもそうするの?」

「そう簡単には死なないさ。そのくらいの力はある」



俺はそこで言葉を切り、向こうの出方を見る。我ながら口だけは回る、と呆れながら思った。封鎖されたここでは俺は再生に力を回せない。つまりはったりだ。もしも戦闘になったら俺が圧倒的に不利になってしまう。だがそれは思わせないように。


やがて永琳は顎に置いた手を下ろし、息を一つついた。



「そう。ならお願いにしようかしら」

「……?」

「命令ではなくお願い。それなら貴方は答えてくれるでしょう?」



何をバカな。そう思ったが永林の目は本気だった。その顔は笑っていたが。相手の意図を察して俺はフッと笑った。



「ならば俺もお願いするか。俺の聞きたいことを貴女は教えてくれるんだろう?」

「お願いなら仕方ないわね」



言葉遊びに見えて交渉。やられたことはやりかえせる。お互いの立場が同じなら。お互い殺し殺される立場にある。思いもしない考えをするものだと驚いた。



「お前は俺に殺されないか心配じゃないのか?」

「貴方、口では殺すとか言ってても殺気がないんだもの。今まで人を殺したこともないんでしょう?」



バレてた。俺の精神を子供だと知って引っ掛けた言葉。正しく俺は未だ人一人妖怪一匹殺してない。頭の出来ではこの永琳と言う少女に叶いそうにない。












☆〇☆☆〇☆












「『封を操る程度の能力』。そう、それで貴方は力を封印しているのね」

「如何にも。本当なら下級妖怪など相手じゃないが施した封印が思いのほか強くてな。手間取った」

「貴方、結構馬鹿でしょ?」



いきなりだな、と俺は肩を竦めた。妖怪に追われていた事から話したが、我ながら大失敗だったから否定の仕様がない。話し始めてようやくお互いの警戒は薄れてきた気がする。だが俺の様子を見て口元に笑みを作った永琳を見て眉をひそめた。



「? 何がおかしい」

「貴方、その口調似合ってないわよ。気にしないからいつも通りに戻しなさいな」

「……貴女には叶わないよ永琳。じゃあいつも通りいかせてもらおうか」



幾分か口調を戻し、俺は永琳を見た。先程までの居心地の悪い目は少しマシになっている。



「じゃあ俺も聞かせてもらおうか。この部屋はなんだ?」

「それこそ貴方が聞いてもどうしようもないでしょうに……ここは私の研究室よ」

「永琳の研究室? 何を作っているんだ?」

「クスリ、よ。『あらゆる薬を作る程度の能力』と言うのが私の能力。この街の医療の大半はわたしが受け持っているわ」

「それはまた複雑な能力だな」



『あらゆる薬を作る程度の能力』。聞くだけ聞くと正にとんでもない物に聞こえる。言ってしまえば治せない病はないと言っているものだし、異例極まりない能力だろう。自分の能力をしょぼくれた物とは思った事はないがそれでもまだ出来ることに限界が見える。これを言ったら限界がないと言った蓮姫は怒るかもしれないが。


しかしなるほど。少女が見た目の割りに大人びている理由が何と無く分かった。歳若くも他人とビジネス的に触れ合う経験が多くなればこうもなるだろう。俺を人間じゃないと見破ったのもこの観察眼があればのことか。



「じゃあ次、貴方はなんでわざわざ自分に封印を施して人間を偽装したの?」

「……特に理由はない、かな。あわよくば入れればと思っただけだ」



我ながら苦しい言い訳だ。だがそもそも俺にメリットがないと思うのが当然だ。妖精は嫌われ者だし、俺が唯一の会話が出来る個体だから徒党を組んでの攻撃はありえない。普通なら妖怪と組むなんて考えは除外するだろうが、いかんせん永琳は頭がいい。可能性の一つとして頭に浮かべているかもしれない。


これだから頭のいい奴との腹の探りあいは苦手なんだ、と泣き言を零しそうになったが神妙な顔をして考えている永琳にする質問を考えなければならない。


と、今の今まで閉められていた戸が開く。入ってきたのは先程永琳がお父様と呼んだ男性であり、やはり顔色の悪いながらも笑みを浮かべていた。



「話は終わったよ。彼らはその子の親を探しにいくそうだ。君、お父さんの名前を教えてくれるかな」

「……えと」



なんて間の悪い。それは永琳も思っていたようでやや残念そうに嘆息した。俺はこの状況をなんとかしてもらえるように永琳に視線を送る。数秒見つめ合っていたがやがて一つ小さなため息をついて自分の父親を見上げた。



「父さん。彼、両親がいないみたいよ」

「……そうだったのか。悪いことを聞いたね」

「それで、彼を私の助手として住まわせたいのだけど、いいかしら?」



なにやら色々とツッコミどころのあるような事を言ってくれている。確かに嘘は言ってない。それ以上に必要な事も言ってないが。だがその辺りは俺のためだろう。申し訳なさそうに瞳を伏せるこの人に内心謝りながら頷いた。


八意永琳がそうしたいなら、と彼はそれだけ言って部屋から出て行った。何故父親なのにフルネームで呼んだのだろう? だがその辺りは家庭の事情だろうし深くは入らないようにした。



「じゃあ早速、そこの薬剤を持ってきてくれないかしら」

「……口実じゃなかったの?」

「誰がそんなこと言ったかしら?」



きたない流石永琳きたない。俺の予想の二手三手先を行く。

仕方ないから雑用に励もうと思う。ごめん真可、おみやげは持って帰れそうにない――












と、これで初の原作キャラ登場になります。


それにしても、永琳が地上にいたのって現代と比べて何年くらい差があるんでしょうね。そもそもそこらへんがはっきりしてないからオリジナルでやるしかない。



次から執筆速度が遅くなるお知らせ。とは言っても大学の勉強次第で変化するので結局は不明。



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