妖精と再誕
おはようございます。こんにちは。こんばんわ。
本日は本作品をクリックいただき、誠にありがとうございます。
鼬と白雪に感化された結果です。
目に毒にならない程度にお楽しみください。
初めの方は随分文字数が少なく、読み応えが無いやもしれませんが、耐えろ! とは言いませぬ故。むしろ呼んでくれてありがとう。お前ら愛してる! と叫ぶ人種ですので。
質問等は聞きたいことがあったならバンバン寄せてください。
――目を覚ましたその時、広く、青い空を見上げていた。
ぷかぷかと、自分にかかる重力を感じないまま何処までも広がるそれを特筆するほど珍しいと感じることも無く「ああ、空だなぁ」くらいで考える。
その時はまだ寝ぼけ眼で目を擦っていた。日差しが眩しくて鬱陶しいと思いながらさぁ二度寝だと寝転がって、ようやく真下を見て、絶句した。
真下にあったのは湖。それもただの湖ではない。異常なまでに澄み切っており、尚且つ海と勘違いするほど広大な湖だ。口を開いたまま何も言えずにいたが、やがて現状に気付いて心から沸き立つ思いを抑え切れなかった。
「はぎゃあああああああああああ!! なんじゃこりゃあああああぁあああぁあああ!!」
……はて、俺の声はこんなにも高かっただろうか?
「――訳わかんねぇ」
そう、どうしようもないまま言葉を一つ漏らした。こめかみの辺りを掻きながらぷかぷかと空を浮かんでいる自分であるが、冷静になった結果いくつか気付いた事がある。
まず一つ、自分の背中に人ならざる羽が生えていたこと。翼ではない、羽だ。鳥が持つようなものではなく、むしろ虫か何かに近いものが生えていたのだ。だからと言って自分が虫になったかと聞かれれば違うと断的に首を振る。ちゃんと手足は二本ずつ、人間のものがあるからだ。
次に気付いたのはその手足、と言うより体全体の変化だった。前、と言うべきか……目覚める前の自分――と言ういい方は些か変かもしれないが――に比べて幼子のように若々しく、小さくなっているのだ。それに叫び声も合わせて若返っていると言う事に気づいた。
ついでに一糸纏わず、と言うか何も着ておらず、全裸で浮かんでい事に気付き、羞恥心から叫びそうになった。寒さで息子は縮こまっている。
「……いやいやいやいやいや。ない。マジないから」
さて、先程から自分の現状を分析してみるが、何故こうなったか、と言う事を考えようにも皆目検討がつかなかった。
機能までの日々におかしいことなど一つもなかった。この世に生れ落ちて19年、己が日本男子として生きてきたその記憶。母は自分を産んですぐに死んだ。父に関しては聞いたこともない。どうやら駆け落ちで両親はどちらも縁を切られたらしく、更に父と別れた母には身寄りが誰もいなかった。
そうして孤児になったらしく、自分はお世辞にも普通とは言えない人生を歩んでいたはずだった。
「……あ、大学のレポートの提出明日だった」
ふと思い出したのはここに来るまでに通っていた大学の事、半ば無理に体験入部させられたオカルトサークルの部員として昨日は電車に乗って妙に掃除もされていないボロけた神社に行ったのだ。名前だけはどうしても思い出せないが、もしかしたらそこで好き勝手に写真を取りまくった罰、なのかもしれない。
「んなあほな……とも言えないのか?」
やはり考えても確証は得られず、現状を打破することが最優先なようだった。
今はぷかぷかと浮かんでいられるがいつぼっちゃんと湖に落ちてしまうか分かったものではない。早い内に何とかする必要がある。
作戦その1、手足をじたばたしてみる。小さな手足が空気をかく。
……変化はなかった。ちょっと惨めな気分になる。
作戦その2、空を泳いでみる。クロールで。さっきと何も変わらない
作戦その3、背中の羽に頼ってみる。
これが一番なのだろう。それに慣れていたのならば、だが。生憎羽人人種第一日目――それどころかまだ数分――なのだ、羽の扱い方など知ったことではない。
こうなってしまっては感覚に頼るしかない。あの空を翔る鳥を思い……だ……せ?
「よく見るといっぱいいるーーーーっ!!」
見上げてみればいつの間にやら空を埋め尽くすかのように沢山の羽人が空を舞っているのだ。あるものは蝶のように。あるものは鳥のように。あるものはアクロバティックな動きを。お前らは天才児か。
だがそいつらを見ていて勇気が出たのは確かだ。と言うより悠々過ぎて自分でも出来るような気がしてくる。手足を放り出し、羽に意識を集中する。言うなれば背中に更に腕が二本あるような状態だ。どんな状態だ怖いわ。
とにかく羽を使用すれば飛ぶことが出来るはずなのだ。
具体的には手をグーパーする要領で。だが中々上手くいかず、それからもしばらくの間空を漂っていた。心なしか高度は下がってきている気がする。
「……よし、オーケイ? 俺は飛べる。I can fly.Yes! I can fly!!」
全身に力を込める。一工程を行う動作ではなく、言うなれば怒りを堪えるかのような感覚。
しかし、内心では飛べーーっ!! 飛べーーっ!! と引き絞る思いで目を硬く閉じている。若干知恵熱も沸いてきたかもしれない。そうしていて不思議と羽の感覚が冴えていく。
何と無くだが今なら飛べそうな気がする。さあ、羽を動かせ!! ……いや腕じゃなくて。
ようやく羽ばたく小さな羽。涼しげな風が頬を撫でるのを感じた。見た目は大分弱弱しいその羽は万有引力もなんのそのと言った感じに俺の体を天に押し上げていく。
空を縦横無尽に飛び回っている童達すら追い越して。次々と視線が俺に集中していく。
これは恥ずかしいぞ。これからの集団活動に影響を及ぼしたりしたらどうする。
そんな事を考えながらもだんだんと登っていく。そろそろ降りようかなと思ったとき、眩しさを感じた。それを感じる方向へと目を向ける。
――たった今、日が没するその瞬間だった。
高い高いその場所からは果てしない自然が広がっていた。森があり、山があり、海があった。
美しい、不覚にも、そして馬鹿らしくもそう思った。一瞬であったが、何もかもがどうでもよくなってしまうほどの光景がそこに存在していた。
ここは何処で、自分はどうなってしまったのか。やはり欠片も思い出せないし、全く検討もつかなかった。
だがあの時、あの神社でした唯一の願い事を思い出した。
出来るならば、可能ならば――
――全てをやり直したい、と
今この現状があの寺の神様のおかげなのか、それとも胡蝶の夢なのか。
どちらにしても、今この瞬間だけは、自らが『生きている』事を実感できた。
自分の友人達、孤児院の人たちがどうなってしまったのか。今となっては知る由はない。こうなってしまっては仕方ないと、言い訳じみて聞こえるのかもしれないが、今はこの世界で頑張っていこう。
そう、心に刻み込んだ。
「……それにしても、どうやって降りたらいいんだ?」
第1話の閲覧ありがとうございました。妙に短いかもしれませんが。
始まりはいつも突然に、まぁそれとなく始まりの雰囲気を作ってみました。
分かる人なら主人公の前世の立ち位置がなんとなくわかるんじゃないかと思います。
ともかく主人公にギャグ風味を付け加えたかった。反省はしていない。
ハーレムはないな。ある意味ハーレムって選ばれた人以外はBADENDですものね。。
最終的には主人公が超チートキャラになる可能性大です。注意してください。
追伸、20110421
妖精は基本的に群れないらしい。でもここは時代の違いで群れるようになっている。
……ええ、矛盾の理由付けです。もっと早くwikiを見ればよかった。