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婚約破棄された悪女令嬢ですが、王太子と偽聖女の不正をすべて記録していました〜公開の場で暴露したら国ごと崩壊しました〜

作者: カルラ
掲載日:2026/04/23

 それはあまりにも突然だった。


「リリアーナ・エルフェルト。お前との婚約を破棄する」


 王宮の大広間。貴族たちが見守る中で、王太子アルベルトは高らかに宣言した。


 ざわめきが広がる。


 だが、その理由を聞いた瞬間、ざわめきは確信へと変わった。


「お前は聖女エミリアを虐げ、陥れようとした悪女だ」


 視線が一斉に私へ突き刺さる。


 ――ああ、そう来たか。


 内心で私はため息をついた。


 表向きはただ静かに、そしてわずかに驚いたように目を見開く。


「……そのような事実はございません」


「まだ白を切るか! 証人は揃っている!」


 アルベルトは勝ち誇ったように手を振る。


 前に進み出たのは、柔らかな微笑みを浮かべた少女――聖女エミリア。


「リリアーナ様は……私に『偽物の聖女のくせに』と……何度も……」


 震える声。潤んだ瞳。


 見事な演技だった。


 周囲の貴族たちは完全に彼女を信じている。


「なんて酷い……」

「噂は本当だったのか」

「やはりエルフェルト家は……」


 好き勝手な言葉が飛び交う。


 アルベルトは満足げに頷いた。


「これ以上の弁明は不要だ。リリアーナ、お前には追放を言い渡す」


 ――ここまでは予定通り。


 私はゆっくりと息を吐いた。


「……承知いたしました」


 驚きの声が上がる。


 抵抗すると思っていたのだろう。


 だが、私は頭を下げた。


 そして、顔を上げる。


「ただし、一つだけ。最後に申し上げたいことがございます」


「今さら何だ?」


 苛立ちを隠さない声。


 私は静かに微笑んだ。


「すべて、記録は残っております」


 その一言で、空気が変わった。


 私はエルフェルト家の令嬢。


 だが、それは表向きの顔に過ぎない。


 王国監査局――その実働員。それが私の本来の役目だ。


 貴族や王族の不正を調査し、証拠を収集する。


 王国の“裏の秩序”を守る者。


 アルベルトとの婚約も、その任務の一環だった。


 王太子周辺に不審な動きがあったからだ。


 そして調査の結果――


 予想以上に腐っていた。


「証拠、だと……?」


 アルベルトの声がわずかに揺れる。


「はい。王太子殿下と聖女様、そして一部の貴族による不正の記録です」


「ふざけるな!」


 怒声が響く。


 だが私は構わず続けた。


「まず、聖女エミリア様の奇跡について」


 視線が彼女に集まる。


「その力は本物ではありません。特殊な魔道具によるものです」


「な、何を――」


 エミリアの顔が初めて崩れた。


「証拠はこちらに」


 私は小さな水晶を取り出した。


 魔力記録装置。


 そこには、彼女が密かに魔道具を使用している様子が記録されている。


 ざわめきが広がる。


「さらに、この魔道具は王太子殿下の資金で用意されたものです」


「嘘だ!」


「いいえ、資金の流れもすべて記録済みです」


 私は淡々と続ける。


「加えて、王太子殿下は王国予算の横領、特定貴族との癒着を行っています」


 次々と証拠を提示する。


 会場の空気は完全に逆転していた。


「ば、馬鹿な……」


 アルベルトの顔から血の気が引く。


 エミリアは震え、言葉を失っている。


「そして――」


 私は最後の一枚を掲げた。


「これらの不正は、陛下も把握しておりました」


 静寂が落ちた。


 次の瞬間、会場は爆発した。


「な……!」

「陛下まで……?」

「国家ぐるみの不正だと……!?」


 王の顔が強張る。


 逃げ場はない。


 すべて、記録済みなのだから。


 その後の展開は速かった。


 聖女エミリアは詐欺の罪で拘束。


 王太子アルベルトは廃嫡。


 関与した貴族たちは次々と失脚した。


 そして――


 王は退位を余儀なくされた。


 王国は大混乱に陥る。


 だが、それは自業自得だ。


 私はその騒動の最中、静かに王都を後にした。


 任務は完了したのだから。


「――お見事でした」


 城門の外で待っていたのは、一人の男だった。


 隣国の使者。


「あなたの働き、我が国は高く評価しています」


「光栄です」


「ぜひ、我が国でその力を振るっていただきたい」


 差し出される手。


 私は一瞬だけ、振り返る。


 かつての王都。


 今はもう、崩れゆく場所。


 ――未練はない。


「喜んで」


 私はその手を取った。


 数ヶ月後。


 元王国は内乱状態に陥っていた。


 権力争い、経済の混乱、治安の悪化。


 かつての栄華は見る影もない。


 一方で私は――


「次の調査対象はこちらです」


 新たな任務を受けていた。


 場所は隣国の王宮。


 再び、不正の匂いがする。


 私は微笑む。


 ――どこにでもあるものだ。


 権力と腐敗は。


 だが。


「すべて、暴いてみせます」


 それが私の仕事なのだから。


 婚約破棄から始まった一件は、一つの王国を終わらせた。


 だが、それは終わりではない。


 むしろ――始まりだ。


 真実を暴く者の物語は、これからも続いていくのだから。







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