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家族で異世界冒険譚(ターン)!第1部 〜永井家異世界右往左往〜再構成改定版  作者: 武者小路参丸


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第8話 家族、異世界デビュー

「ほら、クミコマミがあそこにいるぞ!ジョロの今の姿見たら腰抜かすんじゃ・・・って、飛び降りたら危ない!ほら、走らない!ジョロ!」


「ん!マァ~ミィ~ッ!」


獣人化の影響もあってか、永井コジ丸・・・愛称ジョロはいきなりの二足歩行にも適応し、その上すばしっこくなっている。


ミサオが追い付く前に 既にクミコの懐に飛び込んでいた。


「あらあら。ジョロ、こっちに来たらおっきくなったのね?

やっぱり自然って大事よねぇ・・・。異世界の空気ってやっぱり違うのかしら?」


(マミ・・・順応し過ぎだよ。まずジョロの姿見て驚くトコからだよね?受け入れスムーズ過ぎて逆に怖いよ俺・・・。)


思わず地面に膝をついたミサオだったが、やはりジョロの素っ裸はマズい。


「マミ!ジョロ!集合!えっと、このままだとジョロが色々大変だとパピは思います!マミ、今だけカーディガン、ジョロにかけて上げてくれる?なので!ここで一発、家族みんなの服を買いにいこうと思います!反対意見はあっても却下!ほら、パピにくっついて!行くよ?ファミリー、ポチッとな!」


スマホのアプリでマイアの町の中に素早く転移する。


「ちょっと2人とも待っててな!ジョロの着れそうな服だけ急いで買ってくる。んで、改めて町の外から入ってこような?手間だけど、人の出入りはチェックされてるから、顔見知りの俺でもペナルティ食らったりするんだよ。手間だけど我慢してな!マミとパピは改めて入ってから吟味するべ!んじゃ!」


ミサオは走って服屋へ飛び込む。


新品は仕立てしか無いので中古の服だが、逆に子供服はすぐ着れなくなるおかげか数は沢山ある。麻のシャツと半ズボンだけ手に入れてすぐに戻るミサオ。


「さ、ジョロこれ着て!って、まだ1人じゃ難しいか・・・はい、パピに捕まって!はい、足上げて・・・こっちも!んでボタン閉めて・・・紐結んで。後はシャツを・・・おし!オッケー!んじゃ町の外に出るよ!ポチッとな!」


永井家は人目に付かない町の外、城壁傍に転移し直す。


そして入り口の人の列の最後尾へと慣れた感じで溶け込・・・もうとしたが、ミサオもクミコも現代世界の服のまま。


目立っている。


ミサオはいい加減こちらの世界の服で活動しても良いはずなのだが、副業気分が抜けずにいた為に、服に気を使う余裕もミサオ自身がなかったせいで町の人々にも(おかしな格好の冒険者)として認知されていた。


特に騒がれもしていなかったから、特に気にもしていなかったのだ。


しかしクミコの服は目立つ。


普通のアイボリーのニットのカーディガンに、茶色のワンピースを着て、ローヒールの茶系のパンプスを履いているだけなのだが、ここいらでは絶対に見ない。いや、他の土地でもあり得ない違和感。


ミサオの作業着も大概だったが、霞んでしまっていた。


そんな中でも順番が回ってくる。


ミサオと門番達はすっかり顔なじみだ。


右の門番がアーニオ、左の門番がンーニオ。

まさかの双子だった。


「よーミサオ、今日は連れがいるのか? いよいよパーティー組むのか?・・・でいうか、どこぞの貴族お姫様でも捕まえて来たのかよ!その割にはそっちのおチビさんは普通の・・・って、こっちはモフモフさんかよ!ここらじゃ珍しいなぁおい!ミサオ、こりゃどういうこたっ!」


「いや、アーニオ。今日は嫁さんと息子を連れてきた。

世話になってるテリオスの町のみんなに、ちゃんと挨拶しようと思ってな!」


クミコも丁寧に一礼して挨拶する。


「はじめまして、ミサオの妻のクミコと申します。

主人がいつもお世話になっております。

これからも主人をよろしくお願いいたします」


門番たちは、まるで貴族に頭を下げられたかのように衝撃を受け、 アーニオは真っ赤な顔で硬直。


ンーニオは・・・。


「あ~その、こ、こちちりららこそ!」


と、訳の分からないことを口走りつつ頭を下げていた。


クミコのすぐ横で手をつないで立っていた モフモフの化身・ジョロも一生懸命に初めての挨拶を試みる。


「ナ~ガ~イ~ッ!ジョロ、じゃなくて、コジマルでぇっすっ!パピとマミはジョロって呼んでます!

よろし、くおねがいし、し、しますっ!」


(初めてのご挨拶、良くやったな!パピは・・・パピは今猛烈に感動しているっ!)


クミコは満面の笑みを浮かべ、

ミサオは感涙にむせんだ。


門をくぐり、改めて服屋に入った永井家親子は、取り敢えず夫婦2人の分の、こちらで違和感の無い服を手に入れる。仕立ての服を作る資金が無いわけではなかったが、それは次の機会という事で落ち着いた。


それよりも次のミサオの目的地。

挨拶すると入り口でも言った手前。


クミコとジョロに本当の仕事振りを示す為。


目指すのは冒険者ギルド。


建物の前に着き、3人でその姿を眺める。


「ここがパピの副業の仕事を請け負う場所であり、仕事の始まりと終わりに顔を出す場所のテリオス冒険者ギルドだ。二人には見せておきたくてさ。さ、中に入るぞ!」


ギルドのドアを開けると、 依頼書を眺めるベテラン冒険者達・新人講習を受けるルーキー冒険者で賑わっていた。


「お、ミサオさんチイッす!

この前の格闘訓練、めちゃくちゃ為になりました!

今度三段蹴り、教えてください!」


「お、ポールか!

確かにお前、攻撃センス抜群だけど、防御が甘いな。

俺の裏拳と後ろ回し蹴りをしのげたら、三段蹴り教えてやるよ!」


軽口を叩くミサオ。


その横では・・・。


クミコが受付嬢や酒場のマスター、 気付いたらギルマスにまでご挨拶を済ませ、 すでに楽しそうに談笑していた。


さらにその隣では・・・。


「ナ~ガ~イ~ッ!ジョ、コジマルでいっす!」


コジ丸=ジョロが必死に自己紹介している。


その2人の姿に、ミサオはまたしても涙をそっとぬぐった。


家族そろって、異世界デビュー。


不安も少しは減った気がしたミサオである。


ギルドでの挨拶を終えた永井家。


ミサオ、クミコ、そしてジョロの3人は、 その足で町の不動産屋に向かった。


「不動産屋なんてこっちの世界にもあるのね・・・。で、なんでそんな所に行くの?」


「マミの疑問はわかる。一応理由は幾つも説明出来るんだけど・・・まずはどんなもんだか見に行ってみようや。俺も初めてなんだよ。」


ミサオ一人なら、宿屋暮らしでも十分だった。


だが、今は家族が一緒にいる。


妻と息子が安心できる環境が、どうしても必要だった。


これからは2人がこちらの世界にいる時間も増える前提で。


また、ミサオの構想の一つ、商人ギルドに登録する為には きちんとした住所が必要らしい。


宿屋暮らしは信用が薄いと聞いていた。


「お?あの家のマーク!ここが不動産屋か。流石に物件外に張り出したりはしてねぇよな。紙も高いしコピーもPCもスキャナーも無いからな。さて、御免下さ~い!」


ミサオは現代のノリで建物の中に先頭で入ってゆく。


中に入ると、人の良さそうな恰幅の良い初老の男性が居て、ミサオの要望をある程度聞くと三軒の物件を提示してきた。


一つ目は、町の外壁に近いそこそこの一軒家。


木造。


だが、ベッドが二つしか置けない位のいわゆる1DKの作り。


家族で暮らすには、明らかに手狭だった。


ちなみに日本の様な6畳や4畳半などの発想は勿論無い。


二つ目は、いわゆる豪邸。


家賃は、ミサオが頑張れば払えるレベル。


都内高級賃貸位だろうか?


ただ、部屋数が多すぎて、


管理も掃除も人を雇わねばならず、貴族でもない永井家には現実的ではなかった。


そして、三軒目。


一階が店舗兼倉庫として使える設計。


キッチンとダイニングも1階と2階にあり、


2階は寝室、応接室、個人スペースに使える程の広さがあった。


耐久性や防犯についても、 魔法や魔道具で対応出来るという。


(こりゃ、3番目一択だべ!あ!商売の話、マミ知らねぇんだ!)


肝心の話をやっとクミコにこの場で伝え、一悶着あったのだが

クミコとしっかり話し合った結果。


三軒目を賃貸・・・では無くローンで購入することに決めた。


「パピの話聞いてると、私はダラダラ借りて住むより、今回に限って言えば、買えるなら買って良いと思うけど?」


クミコの鶴の一声。


支払いは、 冒険者ギルドにある程度預けていた達成報酬から。


毎月決まった金額を届ける契約となる。


保証人制度とかは曖昧な所だが、ここでC級冒険者というのが生きた。


やはり信用度が違うのだ。


本来なら一括払いも出来たが、現代世界での生活費も考慮し、無理はしない。


ミサオは珍しく大人な判断を下した。


「話聞くだけの筈だったんだけど・・・良かったのか?マミ。」


「さて、どうなんでしょ?・・・私も混乱してるからよくわからない。」


イタズラっ子の様な顔でミサオに微笑むクミコ。


(・・・やっぱマミは最高の奥さんだな!今更だけど。)


こうして、怒涛の展開の中、単なる通いの冒険者だったミサオも、もう一歩踏み込んでこのイグナシアと呼ばれる世界に、生活基盤を増やす段取りをする形となった。


家族のための異世界の拠点。


ミサオ・クミコ・ジョロの3人は横並びで手を繋ぎながら購入予定の建物へとプラプラ歩く。そして・・・。


「・・・思ったよりも傷んでないな。」


「そうねぇ。パピの言ってたお店?これなら何やるにしても何とかなりそうだし。この右側の倉庫スペースもそこそこあるわよね?まず、角地っていうのも目立つわよね。」


「午後の時間で人通りもそこそこ。馬車を止める道幅もあるしな。これ掘り出しもんかも!マミの嗅覚半端ねぇな!」


「私、こういう時、冴えるのよねぇ・・・。」


「ま、男を見る目はあるのは知ってるよ?」


「・・・どの口が言ってるのかしらね?ジョロ、ここもう一つのおウチになるよ?どうする?」


「ん?おウチ?パプパプのオモチャある?」


「今はまだだけど、パプパプもちゃんとある様にするから大丈夫!ね、パピ?」


「お、おぅ!任しとけ!」


新たな拠点を前に、ミサオは改めて思う。


(毎日飢える事無く、腹一杯飯食えて。怪我も無く、病気もトラブルも無く・・・毎日みんなが笑顔で暮らせる。日本だろうと、ここテリオスだろうと、それが出来れば関係ねぇか。)


ここでミサオは本来の目的を思い出す。


次の目標は・・・。


「この勢いて、商人ギルドへの正式登録だ!」


ミサオは叫んだ。

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