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家族で異世界冒険譚(ターン)!第1部 〜永井家異世界右往左往〜再構成改定版  作者: 武者小路参丸


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第5話 俺とクミコと、ムサシが家族になるまで

その夜。


クミコとジョロが既に寝静まった部屋。


ミサオは布団の中で独り想い返していた。


(・・・俺も毎日バタバタだけどさ。

でも、こうして家族と一緒に生きていられるのは、

最初の息子が導いてくれたおかげなんだよな……なぁ、ムサシ。)


目を閉じたまま、脳裏に浮かぶのは・・・。

まだ永井家と呼べるものが何一つ無かった、あの頃の記憶だった。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


現在。


世界的なパンデミックも収まり、世間は以前よりも、少しだけ活発に、でも前より気持ちに余裕が無いような・・・人々が毎日を過ごしている。


現代。


ミサオが、たまに帰ってきては、またいなくなる世界。

ミサオが消えると、時間が止まる世界。


その世界で、今から25年ほど前、2人の男女が出会った。


この話は、そんな2人と頼もしい一匹の・・・物語。


「おい、ミサオ! ワリぃんだけどよ、ちっとばかし手ぇ貸してくんねぇか?」


実家。親父、義母、腹違いの妹と弟。そして、親父の運転手兼・・・いわゆる部屋住みが1人。


親会社が変わり、雇用条件が変わることをきっかけに勤めていた新宿のパチンコ屋を辞め、実家のある神奈川県川崎市の臨海部に帰ってきた1人の男。


永井ミサオ、29歳。現在無職。


貯めていた少しの貯金と雀の涙の退職金で、ここ何日かスロットばかり打っている。


(か~、又レギュラーボーナスかよ?つまんね~な!)


何をしたらいいのか分からない、漠然とした不安。


しばしのダラダラとした毎日。


今日も朝からパチンコ屋に行こうかと起きたところに、父親の声。


スーツを着て、その横で部屋住みの若い衆が父親のネクタイを渡す準備をしている。


いわゆる反社と呼ばれる組織。その2次団体の総長代行。それがミサオの実父。


かといって、金稼ぎが上手いわけでもない。


優しい笑顔で、言葉を選んで相手から金を引っ張ってくる。


専門用語で(ガジる)のが上手いだけだ。


そのせいで、ミサオも保証人として名義を貸して、借金絶賛焦げ付き中だ。


「お前、今プラプラしてんだろ?


親分がさ、持ってる店。あそこ任してた人間、銭持って飛びやがってよ!


・・・だからよぉ、銭任せられるヤツ入れるまで、お前、スケて(助けて)くんないか?」


ミサオの言葉も待たずに話を進める親父。


(そりゃ、ガジるの上手ぇ訳だわ・・・。勝手に話進めやがって、人の反論とかお構い無し。堅気相手なら口挟む余地与えねぇんだろうなぁ・・・。)


妙に感心し、半ば諦めと共に、父親と一緒に高級外車の後部座席に乗り込み、組の事務所へ行くミサオ。



・・・店があったのは、風俗店がメインの通りの一角。父親の居る組織の縄張り・・・シマ内である。


毎月若い衆達が店を回り、金を徴収して歩く。


みかじめ料、守り代。面倒見。この辺りのヤクザは、「カスリを貰う」なんて言葉を使う。


時間の頃合いを見て、若い衆から店の鍵を預かり、ミサオは1人で向かう。


少しずつ、1人、また1人と、大人の社交場へと吸い込まれ出す夕方。


ミサオはドアの前に立って鍵を開け、店に入る。


(チリンチリン。)


ドアには、開けると音がするようにベルが付いている。


一番奥がカウンター。丸いスツールが3席。


少し縦長のフロアには、左に2つ、右手に2つのテーブル席。


2人掛けのソファーを対面にして構成されている。


そこまで大きい店じゃない。


(チリンチリン!)


振り向くと、ドアを開けて女性が入って来る。


ドレスまではいかないが、いかにもお店映えしそうな、半袖の黒のワンピース。


セミロング、少し茶色い髪。


(タッパ(身長)、小っさっ!)


後で知るのだが、身長150センチそこそこ。年齢がそのせいで読めない。


「あのぅ・・・。」


探るような目でこちらを見る女性。


「あ、どうも。あの、事務所の方から、なんか男の人いなくなっちゃったって聞いて、手伝え的な?」


詳しい話なんて聞いてないので、慌てて怪しくないアピールをするミサオ。


「はぁ・・・。」


女性の困った様なリアクション。


逆の立場なら、ミサオも困惑するだろう。


「ここって、何人でお店回してるんですか?」


取り敢えず場の空気を変えようとミサオが現状を確認すると、目の前の女性が答える。


「えっと、私とミキねえと、斎藤さんと・・・。ま、その斎藤さんは居なくなっちゃいましたけど。手が足りない時、ミキ姉のお友達がヘルプで手伝いに・・・あ、一応ミキ姉・・・ミキさんが、ここのママみたいな感じですかね?」


(チリンチリン!)


2人が話してる中、別の女性が現れる。


「あ~れ~? 代行、もう人寄越したの?相変わらず、堅気に優しいわよね~!

で、お兄さん、誰ん所の若い衆?」


いかにもな感じで、派手な化粧、派手なドレス。


夜の蝶と言われる感じそのままの、少し疲れた顔で、見た目はミサオより10は年齢を重ねている様に見える。


「いや、あの、若い衆とかじゃなくて・・・息子っス。あの人の。


とりあえず行けって言われて、得意だからあの人・・・。


何にも詳しい事、聞いてないんすよ。」


「結構テキト~だもんね~!ま、あの馬鹿男がドロンしたお陰で、こっちもいい迷惑だったからさ、助かるわ!」


笑いながら、カウンターの中に入り、手招きする女性・・・ミキ。


「じゃあさ、中の事説明するから!


あ、そんな難しい事ないから!


おつまみチャッチャッて出して、お会計やって、掃除して終わりってなもんよ!


あ、クミコちゃん、テーブル拭いたら外掃いといて!その間にこの若さん仕込んどくから!」


テキパキと話を進めるミキ。


(・・・あんのクソ親父、どこが銭預かりだよ!完全従業員扱いだろうがよ・・・。こうなる事わかってて、俺に振りやがったな!)


困惑するミサオを見て、最初の女性・・・クミコが少し笑った様に見える。


仕方なくその日から、ミサオはマスター代理で動くことになった。


そうして始まったミサオの新しい日々。


店を開けて開店準備をし、簡単なツマミの仕込みをして、ミサオはミキとクミコの出勤を迎える。


開店したら、客と2人の女性の騒がしい声の中でツマミやボトルのオーダーをこなして洗い物や会計。


店が終われば使ったものを洗って掃除。


慣れてみれば、仕事内容はそれ程でもないとミサオは感じていた。


女性2人ともすぐ打ち解けている。


商売をしている以上、トラブルもついて回る。


たが、特殊な環境で育ったミサオには、たまのタチの悪いヤカラ相手も、普通の人よりは楽だった。


「おうコラ、もう帰れってか? ふざけんじゃねぇぞ!酒もっと出せよ!


てめぇ、俺を誰だかわかってんのか! おらぁな!◯◯組の・・・。」


この町には土地柄なのか、やたらと組のカンバンを使うヤカラが多い。


「どっかのお身内さんで?


 それじゃあ逆に言わせて頂きますが・・・ここがどこのシマで誰が面倒見てるか、わかってやってんですか?


看板出しゃ、ヘタすりゃ間違い起きるって、わかってやってんスか?


・・・大きい声じゃ言わないっスけどこの店。・・・総長さんちょく面倒見めんどうみらしいですよ?」


大抵客は黙る。


それでも深酔いし過ぎてどうにもならないヤカラは、ミサオが裏路地まで連れて行ってしこたま制裁を加えた後に、父親の事務所に電話を入れて後の処理を押し付ける事もあったが。


そんなこんなで、気付けば月日が経ち・・・。


ある日、たまたま休みの昼間にミサオは店の前を通る。


店を出て左に一方通行の道。


進行方向に向かって左側。


店がある側の歩道を歩いていると、前方右側、こちらに向かって、犬を散歩させて歩いてくる女性。


ミサオが見覚えがある女性だとよく見ると、クミコである。


(化粧してないと、余計に幼い・・・。何か、気になるよなぁ。)


近づいてこようとするクミコの手から、リードが抜けるのがミサオに見えた。


「待って!」


叫ぶクミコに構わず、毛の白い、ちょっと茶色の毛が混ざったワンコは、ミサオに向かって一目散に・・・と言うより、トコトコと愛嬌のある歩き方で向かってくる。


しゃがんで両手を広げているミサオの懐に、躊躇なく飛び込んでくるワンコ。

見た目はシー・ズーっぽく見える。


「あ~しあしあしあし! なぁに! どしたの!

お兄ちゃん好きなの~! ありがとね~!」


抱き抱えながら、その身体の感触を堪能するミサオの元に、息をハァハァさせているクミコが駆け寄ってくる。


何故か息が整っても、こちらを不思議そうに見ている。


「・・・どしたんスか?」


「・・・この子ね、ムサシって言うんですけど、基本、男の人に懐かないんですよ!


下手すれば、何か感じるのがあるのか、噛みつこうとするぐらいで・・・。

初めてですよ、こんなの!」


心底驚いている様に見えるクミコ。


「へ~っ! そうなんすか! お前さん、人を見る目あんのかもな! 

ムサシ! お前さん、剣豪みたいに、強いんだな! カッコいいぜ!」


ミサオもそのワンコに認めて貰ったのが嬉しいのか、思わずワンコの身体を抱き締めている。


その場はそれで2人は別れたが、次の日の閉店後。


前日の話の流れから、初めて2人だけでご飯を食べに行く事が決まる。


動物好きなのに、一度も家で動物をお世話した経験の無いミサオが、クミコのワンコ自慢が楽しくて、その話の延長となっただけなのだが・・・ミサオは何故か、ドキドキしている。


(いや、何この感じ?ただ飯食ってワンコの話するだけだべ?そこまでウブじゃねぇぞ俺?今は彼女居ねぇけど、普通に慣れてねぇ訳でも無いだろうに!)


ミサオは自分自身でもこの感情が理解出来ない。


そうして店の営業も終わり・・・。


2人は24時間営業している近くの喫茶店へ。


出前もやってるこの店は、客層もこの町独特である。


いかにもなガラの悪い風貌の方々・風俗店のボーイ・そして風俗店のお姫様たち。普通に見えるお客が居たら、逆に浮いてしまう不思議な空間。


そんな店に入店し、ミサオとクミコは二人でテーブル席に座る。


「お疲れ様っスね。とりあえず飯、今いっときます? 


それとも、家帰って食うなら飲みもんだけで、おみやにしてもらいます?


あ!おみやにしても、ワンコって、食えるもんあるかな?」


ミサオは早口で話し始めながら、急いでパラパラとメニューをめくる。


「ミサオさん、何慌ててるんですか!」


ミサオ自身ではわからないのか、、少しテンション上がってしまった様子である。



「たまには良いですね、なんかこういうの。誰かと食事するのなんて。」


「そう・・・なんスか?客とアフターとかあるじゃないっスか。」


ミサオは首をひねる。


「プライベートの話!・・・ミサオさん。私ね、小さい頃はね、お嬢様だったの!」


「は?」


唐突に言ったクミコに、ミサオはポカンとしてしまう。


そのタイミングで従業員が注文を取りに来たので、ミサオとクミコは生ビール2人分とお土産用のサンドイッチを頼み、ミサオはクミコの話の続きを聞く。


「・・・うちのお父さん、実業家だったらしくてね。

家にお池があったの覚えてる。婆やも居たのよ!


でもね、お父さん、交通事故で死んじゃってね。」


お酒のせいなのか、プライベートの今日のクミコはミサオに対して普段より饒舌だった。


ミサオは頷きながら、話を促す。


「そしたらね、お父さんの親戚が集まって、なんやかんやと理由付けて、結局財産全部取られちゃって・・・。


ママと兄さんと私・・・住んでた家から追い出されちゃってね。」


「・・・。」


「そしたらママ、どうしたと思う?


仕事なんてしたことない箱入り娘で、駆け落ちして結婚したから実家にも帰れない。


・・・愛人さんになっちゃった。おめかけさん。2号さん。・・・政治家の。


私、お父さん大好きだったからさぁ。


家に居たく無くて、当時のアイドルの親衛隊入って、家帰んないで、ずっと追っかけやってた。


学校もサボり気味だったけど、テストの時だけはそれなり頑張ってね!


追っかけの時の周りのお姉さんたちが、みんな優しくてね・・・。家に帰るより、お姉さん達と過ごす時間の方が私には安らぐ場所だったのよ。」

 

話が止まった所で、頼んでいた生ビールが目の前に置かれる。


クミコの話を聞いていたミサオに、ある気持ちが生まれた。


凄く唐突に。


同情とか、共感とかでは無く。


(何かわかんないけど、この人と一緒に居たら、楽しそうだな・・・。)


そう思ったミサオは無意識に言葉を発していた。


「あのっ!」


「えっ?」


いきなり大きな声を発したミサオにクミコが少したじろぐ。


「そっ、その話、俺もっとゆっくり聞きたいっス!

 

ていうか、その、この話だけじゃなくて、あの、俺も話したいこと一杯あって、いや、話だけじゃなくて、何ていうか・・・あ~もう!


んと、クミコさん! 決まった人いないんなら、俺みたいなやつでも良ければ・・・お付き合い、して下さい!!!」


(やっちまったぁ~!いきなり、やっちまった!


相手は水商売やってて、男の下心なんて腐る程見てきてるだろうに!


俺だってそう見られるに決まってんだろうよ!ましてや家庭環境知られてりゃ、警戒されるに決まってる!


立ち上がって、言うだけ言って、頭下げて。怖い。すげぇ怖い。頭上げられない・・・。)


勢いに任せて発言したものの、ミサオは心の内で早くも後悔して、頭を下げたまま固まっている。


「・・・フフッ、とりあえず、座りません?」


顔を上げるとクスクス笑うクミコの顔がミサオに見える。



ミサオの顔が見る間に高熱を帯び、そのまま促されてとりあえず座る。


「・・・いきなり、なんですね。ビックリしました!」


ミサオからはクミコさんの顔も、ほんのりと赤みを帯びている・・・様に見える。


ビールを飲んでいるが、酒のせいではない・・・とミサオも思いたい。


「ミサオさん、ウチに来ません?」


「ブフォ!」


落ち着こうと飲みかけた生ビールを、ミサオは思わず詰まらせてしまう。


「え? なんて? な?」


「うちにはね、それはそれは厳しいナイトが居ますからね。


今まで私に告白して、面接合格した人、見たことないですから!

・・・それでも面接受ける勇気、あります?」


(告白した人、いたんだ。そりゃ、居るよなぁ・・・。なんか凹む。でも!)


「そういう事っスか。余りに展開早すぎて、置いてけぼりくらったみたいでビックリしたっスよ!


・・・てか、深夜に自宅って、いいんスか? 今更っすけど。」


ミサオも一応礼儀はわきまえている。しかも、下心無く気持ちがほとばしった手前、自分なりにその誘いに乗る事に罪悪感も感じている。


「でも、このままだと話の続き、出来る雰囲気じゃ無いと思うんですけど・・・。」


クミコの言葉に店の中を見回すと・・・どうやら他の客が2人の成り行きに聞き耳を立てて居る事に気付くミサオ。


「・・・何にせよ、ここは出なきゃ、落ち着かないっスね。」



用意出来た土産のサンドイッチを受け取り、そそくさと店を出る2人。


普段猥雑な感じの店内の空気が止まった、生暖かい客の視線。


この後、2人の会話がいい酒の肴になる事が容易に想像出来る。


ミサオは自分の行動に少し腹立たしさを覚えている。


クミコの後について歩くミサオは、店からほど近い、両隣が大人の社交場という中々な立地の6階建てのマンションにたどり着く。


エレベーターに乗って5階。


降りて左側の一番奥の部屋。


クミコが、部屋の鍵を開ける。


トテトテと、白いモフモフがクミコに向かって飛び込んでくる。


「あ~!ムッちょん!ゴメンね~! 

今日はね、お客様居るのよ!」


抱き抱えたワンコと、笑顔で振り向くクミコ。


その姿が、ミサオには素敵な1枚の絵画の様に見えた。


(ダメだ、降参!惚れた!)


少し見惚れていたミサオだったが、女性の一人暮らしの部屋の前にいつまでも立ち尽くす訳にもいかず、慌ててワンコに声を掛ける。



「よっ! 剣豪!毎日お勤めご苦労さま!今日はお土産・・・って、どうしたらいいっスか?」


「とりあえず、中入って! 

ムッちょん!今日はねぇ、動物病院の先生に怒られちゃうけど、少しだけ、ハムあげるね! 

でも、マヨネーズついてるから、マミがお口でチュパチュパしてからねぇ~!」


「チュ、チュパチュパ・・・何かお前さんが妙に羨ましいよ、剣豪・・・。」


「何か言いました?」


「言ってません!な~んも!」


「じゃ、狭いですけど、どうぞ。」


そう言いながら奥へと向かうクミコ。


ミサオは後ろから付いて歩き、クッションをあてがわれる。


横には、舌を出してものすごくいい笑顔に見える表情でお座りする剣豪。


(これは、俺なのか?俺に対してなのか?それとも、サンドイッチ目当てなのか?)


判断に悩むミサオ。


「はい。大したものないけどどうぞ。


・・・フフッ、こんなムッちょん、初めて見た。あの玄関から先は、1人もクリアした人いないの。」


お茶をテーブルに置きながら言うクミコ。


(なんか、なんかありがとう! 剣豪よ!)


思わずミサオはワンコをモフり倒す。


改めて前に座ったクミコと、ミサオは色んな事を話した。


お互いの生い立ち。環境。好きなTVや・・・ワンコのムサシの事。


元々、店の金を持ち逃げした斎藤が興味本位で飼い始めた犬。


だが、斎藤は犬の世話も大してしないし、出来もしない。


たまたま斎藤が店に連れてきた時にクミコと出会い、そこからムサシが離れようとしない。


以前から、斎藤の話振りから犬の事を不憫に思っていたクミコ。


見かねてクミコが引き取る事斎藤に宣言。


金銭の授受で斎藤はこれ幸いとすぐに承諾。


結局、クミコはわざわざペット可の物件ですぐ入れる所ということで、無理を言って余計な金を払って前の住居をすぐ引き払ってこのマンションを即決で借りたという事をミサオは知る。


・・・結局2人はムサシの事ばかり話している。


ふとミサオが気付くと、時計の針は朝9時を回っている。


「あ、ゴメンムッちょん! マミ、すぐ準備してくるからね!

ミサオさんごめんね、お散歩いくから、待って・・・。」


「いや、俺も行きま・・・行くって!


お客さん扱い、やだからさ。」


「わかった。じゃ、ちょっと着替えだけ、奥でしてくるね。」


そそくさと奥の部屋へ消えるクミコ。


その間に、ミサオは男としての自分なりのケジメをつけようと動く。


クッションを外し、正座をして居住まいを正すミサオ。


目の前には笑顔でお座りをするワンコ・・・ムサシ。


「いいか、男同士の約束な! 

もしも・・・この先さ、この先!その、あの人と一緒になれたらさ、けんご・・・。


いやムッちょん!


俺の息子に、俺の家族になってくれ!頼む!」


ミサオはムサシに土下座する。真剣だった。


「・・・ワフ! ワフ、ワフ!」


ムサシは目の前で、を見つめながら、お座りをして、シッポをグルングルン回している。


「あの、さ? ムッち・・・うわっ! いきなりっ!

いや、ペロペロ、いや、顔、いやそこ、息! 息出来な・・・!」



・・・過去。


現代世界の少し前の時。


まだ永井家は、始まってもいなかった。


過去。


時計の針は、まだその動きを、止める前だった











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