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家族で異世界冒険譚(ターン)!第1部 〜永井家異世界右往左往〜再構成改定版  作者: 武者小路参丸


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第11話 永井家、異世界本格移住!

少し歩調を早めたミサオは、そこまで時間を掛けずに冒険者ギルドにたどり着く。


ギルドの中に入ると、この異世界で最初に出会った女性、受付職員のメリッサがミサオに気付く。席から立ち上がったメリッサは深々とミサオに一礼し、無言で奥の部屋へと先導する。


(トントン。)


「C級冒険者、ミサオ・ナガイ様がお見えになられました!」


ドアをノックし、中へと来訪を伝えるメリッサ。


「どうぞ。」


ドアを開けたメリッサがミサオを中へといざない、自分はドアを閉めて消える。


「お忙しい所、こちらの都合で呼びつけてしまう形となり、申し訳ございません。」


この冒険者ギルドの女性ギルドマスター・・・ハイネスが、大きな執務用の机からこちらにミサオの方へ歩いてくる。


少し手前で立ち止まって深々と頭を下げるハイネス。


「どうぞ、こちらのソファーにお座り下さい。」


ミサオを招いて、自らはその対面へと座る。


「このような形は私としても心苦しいのですが・・・。


どうしてもミサオさんと話し合いたい事がありまして。」


ハイネスの様子は、いつになく真剣だった。


「ギルマス・・・いや、ハイネスさん。


特別な依頼じゃないって事は、よっぽどですよね?」


敢えて。


立場よりも人として、口調を改めるミサオ。


ハイネスは静かに頷く。


「実は、依頼というより・・・お願いなのです。しかも、私1人の考えでは無く、この世界の冒険者ギルドの総意として。」


ハイネスのお願いとは、相当に重い内容だとミサオも心の中で構え直す。


「最近、闇憑きの討伐依頼が増えてきているのは、 ミサオさんもご存知でしょう?」


「はい。他の冒険者達の間でも、 目撃証言があちこちで増えていると聞いています。」


ハイネスは目を伏せ、話を続けた。


「こうなってくると、 冒険者達の実力底上げや、新人確保が急務です。


ですが、一朝一夕にはいきません。


各国の騎士団や軍隊などとの連携も、その国の政情等の問題ですぐには動かせないのが実情です。


そこで、冒険者ギルドという組織としては・・・。


闇憑きの脅威に専門対応する人材を確保する事を決定致しました。」


ハイネスはミサオの瞳を真っ直ぐに見つめている。


「そして、ミサオさん。


本部から、あなたに白羽の矢が立ったのです。


専任となることで、 毎月、討伐とは別に報酬が支払われます。


これは他の依頼を能動的に受けられなくなる事に対しての補償ですね。


また、これも当たり前の事ですが、国や地域を超えてギルド全体の支援が受けられ、緊急時においてはギルマスと同等の指揮権限を持つことになります。」


そこまで話すと、ハイネスはテーブルのハーブティーを一気に飲み干した。


「本来自由であるべき冒険者のミサオに対して、大変ご迷惑な話だとは重々承知しています。


でも、多くの人命に関わることでして・・・。


冒険者としての矜持を曲げてでも、どうかこのお願いを・・・。」


悲痛な表情で言葉を紡ぐハイネスの被せるように、ミサオはあっけらかんと回答を出す。


「わかりました。お引き受けします!」


「こんなお願い、すぐに答えを出すのは・・・へっ?ひき、引き受け、へっ?」


あっさり即答したミサオに、 ハイネスは目を白黒させてオロオロしている


ミサオにとっては当然だった。


闇憑き討伐は、課長(カ=チオ)さんとの最初の契約でもある。


スマホによる即転移もあり、 広域活動も実際日帰り感覚だ。


ミサオに取って問題は、店と家族。


後は現代世界との兼ね合いをどうするか。


その判断だけだった。


「ハイネスさん。お引き受けするに当たって、条件付ける訳じゃないんですけど、こちらからのお願いも聞いて貰えませんか?」


今度はミサオが頭を下げる。


「勿論です。」


ハイネスは先程までと一転、優しい表情へと変わっている。


「まず、準備期間を一週間頂く事。」


「当然の事です。」


ハイネスは頷く。


「そして何より・・・。」


一度ミサオは言葉を切り、真剣な眼差しで続けた。


「家族の同行許可。


冒険者でも無い妻と息子を常に同行させるなんて、本来であれば許されない事なのは理解しています。


ですが、この一点。


俺に取っては譲れない事なんです。


これがなければ、お引き受け出来かねます。」


その言葉に、ハイネスは、 何度も何度も力強く頷く。


「その件に関しては、私の権限以上の話ですが、今この場で確約させて頂きます。テリオス冒険者ギルド、ギルドマスターであるこのハイネスの名にかけて!」


「・・・では、早速家族に話をして、準備に入ります。」


「ありがとうございます。ミサオさん。」


2人は立ち上がり、固い握手を交わした。


ギルド執務室から出る間際。


ハイネスから銀のペンダントを手渡されたミサオ。


ギルドの紋章に重ねて刻まれた――大きな「S」の文字。


「今回の冒険者ギルドの要請の受諾に際し、特別措置としてFからAまでのギルドランクシステムから外れた存在・・・冒険者ギルドという組織全体の中で唯一のSランク認定となります。


そのペンダントがあかしです。


指揮権限も、全ギルドに周知されます。


・・・くれぐれも、無理はなさらず、命を大事に。」


ハイネスの温かい言葉を胸に刻み、 ミサオはペンダントを首にかけた。


ギルドを後にして(ジョロの宝箱)の2階、住居スペースに戻ったミサオは、ハイネスからの要請と独断での受諾をクミコとジョロに伝え、2人に頭を下げた。


「同行許可・・・ねぇ。この分だと、色々起きるわよね?絶対。」


ミサオの予想に反し、クミコは怒る事は無かった。


もしかしたら何か思う所があったのかも知れない。


コジ丸・・・ジョロはお出かけ位の感覚で、素直に喜んでいる。


これで一つ話がついた。


ミサオは次の問題に取り掛かる。


長期不在に備え、お店の在庫確保の段取り。


これは先だって課長(カ=チオ)さんと話したネット通販で何とかなる。


週1回の在庫確認で今なら事足りる。転移して確認など造作も無い。


家族揃って戻ればそのタイミングでクミコとジョロも家のベットで休ませられる。


だが、お客様の対応はどうにもならない。


この件に関して、家族総意でリュミアちゃん、まさかの店長昇格決定となる。


やはり現場には責任者が必要だとの判断である。


また、リュミアちゃん1人に負担をかける訳にはいかないのて、ミサオはすぐに商人ギルド経由で求人募集をかける。


ミサオとズブズブのギルマス、ダイナによってその願いはすぐ叶えられる。


新たなアルバイト、兄妹である兄ポポン(14歳)、妹ピピン(13歳)も入店してくれた。


後はそれとなく冒険者ギルド及び商人ギルドの両組織で、それとなく店の3人を気にしておいて貰える様にお願いをしておいたミサオ。


これで拠点の体制は万全となる。


そして・・・。


ミサオは家族を伴い、現代世界へ一時帰還。


ずっと考えていた事・・・。


本業からの退職。


現代世界の、家に関わる諸々の毎月の支払いも全て引き落としに変更をかける。


町内のゴミ置き場の掃除当番も業者委託手配。


郵便物確認のため、月1~2回だけ帰る予定。


などとは言いながらも、異世界イグナシアに行けば、課長(カ=チオ)さんの暫定措置が解除されない限り、俺から見れば現代世界の時間は動かない筈だから、あくまで保険である。


最後に、ダミー拠点のマンションも軽く掃除し、 車のバッテリー配線を外して完全休眠体制。


これで永井家のプライベート周りの事は済んだ。


後は残りの一つ


ミサオは、退職届を胸に会社へ。


退職届を出して即日退社など、社会通念上も社内手続き上も許されないのは百も承知。 営業所での所長との面談で、黙って帯封付き100万円をポンとテーブルの上に置く。


「これで諸々の精算と手続きをお願い致します。書類関係は自宅に送って下されば、確認出来次第すぐに返送致しますので。すぐに他所の国に出てしまうもので。それと、もしもその金から返金が出る様でしたら・・・返金の必要は全くございませんので、所長個人の判断で、処理して下さい。・・・くれぐれも、所長個人でお願い致します。」


「・・・わかった。今日付で退職。こちらで後は全て処理しよう。今日までお疲れさん。」


この世知辛い現代日本において

金は大部分で正義に変わる。


翌日。


帽子で耳を、上着でしっぽを隠したジョロとクミコを連れて、 タクシーを使って最後の買い物も済ませる。


と言っても大した買い物などは無い。


どうせなら獣人となった本来のジョロにもこの元々の世界を味わって欲しかったミサオである。


自宅に戻った永井家の3人は、

全ての戸締まりを確認し、3人それぞれが、虹の橋のたもとで待つであろう、3人の息子達の遺灰と写真を持つ。


長男ムサシはクミコの手に。


次男コジローはミサオの手に。


そして三男サンシローはコジ丸・・・ジョロの手に。


「これで永井家全員、異世界本格移住の準備、完了だ!」


ミサオが家の玄関の前で宣言する。


「移住かぁ。でも安住はまだまだ出来ない感じだけどねぇ?」


ミサオの顔を覗き込むクミコ。


「早く向こうのおウチ行って、リュミアおねぇちやん達とみんなでウマウマする~!」


既に気持ちは異世界に向いているジョロ。


今のミサオの現代世界での肩書は、「無職のおっさん。」


だが異世界イグナシアでは、 唯一無二の専任S級冒険者。


副業から始まった出来事は、今やイグナシア全体を巻き込む大きなうねりへと向かっている。


それでもミサオは、前を向く。


自分と、家族の笑顔のために。


ミサオは、二人に向かって言った。


「忘れ物ないか?準備いいか?深呼吸して!はい、吸って~、吐いて~!・・・じゃあ行くぞ!ファミリー・ポチッとな!」


そして永井家の物語は、これから又始まってゆく。



◇◆◇◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

これは、異世界本格移住前日のコジ丸・・・ジョロの心の独り言。


(あしたは、おひっこしかぁ・・・。



あのね、ぼく、なんだかねれないの。



パピとマミは、いそがししそうだったから、ねちゃったみたい。



こんどはね、(くさ)とか(き)とかが、い~っぱいあるところなんだ。


おさんぽもたのしそうだよね!



にーにーたちも、みんなでおさんぽしてるのかなぁ・・・。



あのね、ぼく、ムッちょんにーにーと、コジョにーにー、あったことないけど、


マミとパピと、サンくんにーにーに、いっつもおはなしきいてた。


ムッちょんにーにーは、いっつもマミをまもってて。


コジョにーにーは、おっきいからだで、いつもニコニコしてて・・・。


ふたりとも、やさしくて。



サンくんにーにーも、ムッちょんにーにーには、あったことないっていってたけどね!



まいにち、パピとマミは、おしゃしんみて、にーにーたちにはなしかけてるよ。


きこえてるかな?



「いつか、必ず会えるから、それまでちゃんと笑顔で生きような!」



パピはそういってたけど、たまに、おしゃしんみてなっきしてるよ?


おかしいね。



ぼくもね、サンくんにーにーがねんねして、おっきしなくて、


それから、ちゃんとおはなししてないけど・・・げんきかな?



「今は、ムッちょんとコジョの所で一緒に暮らしてるから大丈夫!」



って、マミがいってた。



はやく、にーにーたちに、あいたいなぁ・・・。



あれ?なんか、ねむくなってきちゃった。



あしたはおひっこし。


マミとパピ、おふとんのまんなかにぼくはいるから、いれてね!



また・・・にーにーたちに、おはなしするから、きいてね!)



「おやすみ、ムッちょんにーにー、コジョにーにー、サンくんにーに・・・。」



第1部 完結


家族で異世界冒険譚ターン! 第2部 〜永井家異世界東奔西走〜へと続く。


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