最悪の誕生日
ベラの誕生日。
彼女は朝早くに家をでて教会に遠い海に来た。
マーヴェラが言ったことはあまり信じてないが、説得力のあるあの声に動かされていた。
何時間も一人で遊んだ。それに飽きたところで白い砂浜に座り、
「はっ! 悪魔も人一人もこないじゃない」と、悪態をつきながら、帰ってマーヴェラに文句を言おうと思う。それでも、少し不安で今来るんじゃないかとしばらく座ったままでいた。そして、吹っ切れて本当に帰ろうと思ったとき、
「キキキキキッ」
「ククククククッ」
「きゃきゃきゃきゃっ」
どこからか不気味な笑い声がした。
ベラは辺りを見合わせた、笑い声がするのはベラが来た道からだ。
それは、悪魔としか言いようがない。顔は眼がない奴や口が無い奴ばかりで、色は真っ黒でしっぽも角もあるし槍もある、槍の先は3つに尖っていて何でも串刺しに出来そうだ。空にもいる。その悪魔は真っ白で鳥の翼を持ち、顔は下にいる悪魔と違って眼や口もある、でもしっぽや角は無い、けれど、手には丸い何かを持っている、その何かは黒くて爆弾のようだ。
それをベラに向かって投げた。ドスっと鈍い音が聞こえた。
「うわっ! 何これ?」
その丸い何かに触ろうと手を伸ばすと、
(近づくなっ)どこからか低い男の声が響き、手を引っ込める。
「へっ、誰?」阿保みたいな声をだし、またベラは周りをみる。だが人は誰もいない。
悪魔はだんだんと近づいてくる。何も戦う方法がないので、走って逃げる。
「こんな時に空耳? いやこんな時だからなのか?」
と、自問自答する。すると、また丸いものを投げてくる。
(馬鹿め、こんな時に空耳なんて聞こえるわけだろ)一人ごとのように話しかける。その声は頭に響いている。それに気づき始めているが、こんな質問をする。
「あんた誰? どこにいるの? 見てるなら助けてよ」
(俺はお前の中にいるんだ。お前は火が使えるだろう、それだよ俺は)
「あんたは私のなかにいる……? まぁ信じよう。居ないと思ってた悪魔が私を今、追いかけてるんだから」自分を納得させるように話す。そして、後ろを見る。黒い悪魔は足が遅いのか遠い、上の白い悪魔は今にも襲ってきそうだ。なのに襲ってこない。
(そりゃ良かったぜ、信じてくれなきゃ助けられないしな)
助けると聞いて飛び上がった、期待が体中に広がる。
「あんた私を助けてくれるの! 早く助けて! 逃げる方法でもいいから!」
(まぁ落ち着け、あいつらから逃げる方法はない! これは断言できる。あいつらはお前がこの世界の裏側に逃げても、追いかけてくる。そういう命令を多分されてるからな)
「なんで? 私、襲われるようなことしてない」昨日、マーヴェラに言ったことをそのまま言った。
(そんなこと関係ないんだよ、あいつらには。関係あるのは命令遂行とお前の血肉を貪れるかどうかだけだ)
ベラは背筋が凍った。自分の死を想像したのだ。
「で、でも命令する人はなんで私を殺したいのよ。絶対にここの人じゃないわ、命令したのは。そうだったらもっと前から襲えるもの」
(あぁ正解だ。それにあいつらはここの世界の奴らじゃないしな。それに悪いのはお前の行動とかじゃなくて存在だ。お前は俺を、火を操れるだろう)
「あんた、私に死ねって言ってるの?」
声が険しくなる。火はそれに焦り、すぐに弁解する。
(いやいや、違う。あっちにはそれが好都合だがこっちとしてはとても不都合だ)
「そう、じゃあ助けて! じゃないと殺されるわ」脅しがかった声でいう。
さっきまで遠くにいた黒い悪魔が近づいて来てる。ベラが疲れて走る速度が遅くなっているのだ。それに、もうすぐで砂浜が終わり海に入らなくていけない、ベラは泳げるがそんなに早くない、入ったら白い悪魔の爆弾のようなものを投げられ、終わりだ。
(分かった。でも体貸してもらうぞ)
「いいわよ。死ななければ……」
(そうか、傷は負うかもしれないからな)
その忠告に、えっ、と反応したが口から声として出なかった。火にもう体は支配されていたからだ。
ベラの体は熱くなり、茶色の髪と目は真っ赤に変わった。