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火水風土  作者: 田中 椿
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ケンカ

 次の朝

 ドアをノックする音が聞こえる。まだ七時頃なのにサニーニャが遊びに来たらしい。トナが起きたばっかりなので、寝巻きにボサボサの髪でドアを開ける。

「ベラいる?」

 普通に家に入ると聞いた。

「いるわよ、でもまだ寝てるね」トナがあくびをする。

「じゃあ起こして来まーす」サニーニャは階段をうるさく上がった。すぐ隣りのベラの部屋に入ると耳元で、

「ベラ起きて」と大声で言った。そうしないと起きないことが分かっているからだ。それでベラは起きる。

「うるっさい、私は寝てる!」

 鬱陶しそうに手を振る。

「うるさいじゃない、起きろ!」サニーニャはまた大声で言うと布団を取った。

「うるさいうるさいうるさい、疲れてんのわかんないの?」

 布団を奪い返すと、またベッドへ戻る。

「わかるわけないでしょ、それにね、疲れってもんは寝れば治るの!」

 そこから無視し続けるが、ひとりで勝手に喚いていてうるさいので眠れない。

「わかったから。降参だよ、すぐ行く」さぁ出てけと言うように手を振る。

「本当だね、ちゃんと来るんだよ。来なきゃまた来て喚くよ」

「はいはい」

 それから10分たった。

「来ない!」

 またサニーニャは、階段をうるさく上がった。

 ベラの部屋に入るとベラは仰向けで寝ている。予想はしてたが、本当にするとは思ってなかった。ベラはあれからすぐに寝ていた。

「ベラおきて」いい加減にしてよ、とでも言うような声だ。

「はいはい、起きてるよーこの通り」ベラは寝ながら右手を上げどうだ、というように言った。

「もういい、帰る! じゃあね」

「はいはい、うるさいのが居なくて一日ずっと眠れるよ! バイバイ!」

 その日は言ったように、一日中寝てる予定だった。だが、思うようにはいかずサニーニャが帰った後、すぐにトナが来て起こされた。遊んできなさい、と言われたがあの後にすぐに行くのは恥ずかしいし、意地ってものがあったので行けない。ベラは、朝の七時何かに来て、疲れてる友達を無理矢理起こそうとして、ちょっと寝てただけで怒って帰るんだからあっちが悪い、と考えていた。それにサニーニャは怒ると根に持つので、会ったら嫌みを言うだろう、当分はこんな些細なことでも遊んでくれない。だけど、目も覚めてしまったのに外に出れなくて気分が悪いうえに暇なので、マーヴェラのところへ行くことにした。

「あぁ、来てくれたんだね」本気で喜んでる感じではない。

「まぁ、うん。暇だったから」頭を撫でながら言う。

「さっき、サニーニャって子と喧嘩したろ」面白そうに言うとベラが驚きの顔を見せた。そしてあぁ、わかったと頷き、こう言った。

「そういや、予言者って言ってたものね。知ってたのに言わなかったんだ。おかげで当分遊べないわ、時間がないのに……」寂しげに下を向く。

「関係ないね。私は聞かれたことしか話さない主義なの、嘘だけど」ベラとは裏腹に気楽に言う。

「ふざけんじゃないわよ……。でもしょうがないわ、起きちゃたんだから。そういえば、この本の持ち主だったって言ったね、あんた予言者でしょ、なんで、だった、なのよ。わかるはずでしょ」手を広げて分からないときよくやるポーズをやらながら言う。

「あぁ、あれはわからなかったからね。予言はすきなときにできるんだよ、長い間あそこにいたから期待する気もなくなってね、それに毎日予言するわけにはいかないしね。占いみたいなものよ」

「じゃあ、私を占って」命令してるような表情で言う。

「その顔じゃ、嫌だって言っても聞かないでしょうね」ため息をついて、これ疲れるのよ、と呟くと「今からやるから静かにしてて」そこから沈黙が始まった。何分か経つと手をたたくような音で沈黙が破られる。そして忠告するような声で、

「明日、お前悪魔に襲われる」と言った。

「はぁ? 悪魔? 分かってると思うけどそれは子供を怖がらせるためと、悪い行いを押し付けるためにあるものよ。いわば、サンタクロースのようなものなの」真剣に待ってって損をしたとでも言うように食いかかる。

「よく知ってるわね、もうサンタクロースは信じてないのかい。まぁその悪魔と格好は似てるね、角が生えてて尻尾がついてる黒い奴よ。でも、私が言ったのはお前が言った理由のなまっちょろいもんじゃない、現実にいるしそいつらより強い」脅すように話す。

「だから? 十字架持って教会にでもこもって神に祈る?」

 ベラは冗談じゃないとはなを鳴らし言う。

「駄目だよ! そんな事しちゃあ、今の時代では教会は祈ることだろうけど昔は違ったんだから、この世界パスノア・リス異界プリーヂモを結ぶ扉なのよ」真剣に説明をする。話の内容はおかしいが説得力がある。だが、話の内容がおかしいのには変わりない。もう付き合ってられないと、とうとうベラの我慢が切れた。

「ちょっと待て、《パスノア・リス》? 《プリーヂモ》? 教会は扉? なんだそれ? からかうのもいい加減にしなっ、私はそんなこと信じるような馬鹿じゃない。第一、悪魔がいたとしても私には関係ない! 何故か? 私は襲われるようなことした覚えがない!」

 ベラは怒鳴りつけた。

「ふははははっ、そうかい、信じないんだね。でも当然のことか。まぁいいさ、別に明日死ぬわけでもないんだし、ただ痛い目は見るかもね。あぁ、そういえば……明日誕生日だねぇ、4月16日」

「えっ」ベラは丸っきり忘れていた。首にかけてあるロザリオ、いつも見るのに忘れていたのだ。

「忘れてたね? 明日の誕生日は最悪だね、ふははははっ」

 それからマーヴェラは何も言わなくなった。

「勝手な奴!」

 力を込めて本を閉じると、雑に本棚へ戻した。

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