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火水風土  作者: 田中 椿
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 ベラは必死に走った。森を走りながら見る町は今日見た綺麗な風景とは、反対だった。白いかった建物が黒くなっている。何よりも道に大きな溝が出来ている。さっきのものが落ちる音はこれだったらしい、周りには動いてるものがある、人に、ベラにだけ見える黒い物体、空には白い物体。人はパニック状態で叫びまわっている。

 町につくと、見ることを覚悟していた死体ないことに驚いた。あの溝を作るくらいの玉が人に当てない方が難しい。

「夢と同じだわ」サナは自分に聞こえる声で呟いた。

「早く行ってトナを助けないと」

 それに答え、サナは頷く。

 町の前に来ると信じられない程の悪魔の数。ベラはこの前見た夢に似ていて吐き気を覚えた。


 空は白、地面は黒。


 ベラは怖かった。足がすくんで動けない。逃げ出したかった。すぐに木の影に隠れた、見つけられないように。サニーニャがここで自分を呪うのではないかと思えてきた。懺悔の言葉しか出てこなかった。

 そんな彼女を正気に戻らせたのはサナの言葉だった。

「なにこれ……夢よりも酷い」驚愕を隠せずに言う。

「あんた、見えるの?」

 異常な自分しか見えないと思っていた悪魔が、普通の人にも見えている。ベラには喜ばしいことだった。

「えっ、はっきり見えるわよ。あんた、もしかして見えないの?」

「見えるよ。でも、一般人には見えない」

「じゃあ、しょうがないわね。見えない敵と戦うなんて、普通の人ならできないわ」悲しい声で言う。

「そうだね……。これ、どうする?」

「ベラは、こんなの構ってないでトナを助けに行って、ここは私がなんとかするから、夢通りだったらトナは家にいるから」サナは早口で的確な指示をして、ベラをトナの元へと急がせる。

「どうにかするって、どうやるの? こいつらは、そこらへんに転がってる石やなんかで倒せる相手じゃない。私がやるから、助けに行って」

 ベラが必死に説得しようとするには訳がある。もちろん、倒せないからというのも入っている、だが、怖いという思いのほうが強い。膝がベラの知らない間に笑っている。それに気づいたサナは、

「ここで言い合ってたら、助けるものも助けられない。私がここで足止めするから、倒し方は考えてあるから」背中をおして、町にはいらせる。ベラは拒む。

「何が怖いの?」

 サナが睨む。

 ベラも睨む。

「今のこの街が怖いの? それとも……」一瞬ためらって「前の街のことでも思いだした?」

 なんで、わかるの? とベラの顔が不安で埋まる。

 そしてまた、サナが背中を押す。

「早く行って、さっきも言ったでしょ。あなたに助けて欲しいのよ」真剣な顔で訴える。その顔、言葉に勇気をもらい、家へと駆け出した、見つからないように市場の中を通って。

 やっと行った、と安堵のため息をもらし、さぁどうするかと考えをめぐらせた。考えはあるのだが、出来れば違うのがいい、あの力はもう一生使いたくない。だけど友達のため、唯一の友達のため、そう思って町に入る。一瞬にして悪魔が振り返り、走ってくる。

 近くの水溜りを横目で見て、水を鞭のようにくねらせる。地面をビシビシと叩き、悪魔を近づけさせない。だが、水溜まりの鞭はその程度で、悪魔を攻撃しても倒せないことはわかっていた。きっとそのうちに、悪魔は気づいてしまうだろう。鞭を打ちながら、悪魔に背を向け、近くにある井戸まで走る。井戸の水を全てだし、勢い良く悪魔にかける。全滅までとはいかないが、ほとんどは倒せたはずだ。

 悪魔は、恐れて逃げていった。さっきまで使っていた水が全てサナに吸収されていく。

 サナはすぐにベラの後を追いかける。さっき逃げたであろう、悪魔しか行く道にはいない。ベラが倒したのか、普通の人でも倒せるのね。後で聞いておこう。

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