表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
火水風土  作者: 田中 椿
12/31

悪魔2

「それじゃ、始めるよ。エンジェル・ルリクルビが持ってた、丸い物を私に投げてきたの。それで逃げたんだけどそれが何か気になって触ろうとしたら、誰かの声が聞こえた、近づくな、って最初は誰だか分からなかった。でも、その声は私の頭のなかで響いてた。その声は私の中に居る、火って言う声だったの」

 そのときトナは何か言いかけて止めた。ベラが質問は後だと言ったからと明らかにマーヴェラの舌打ちが聞こえたからだ。

「助けてって言ったら、助けてくれた、私の体を貸す条件で。火事の一件は私のせいだけど私だけのせいじゃない。火は私の体を支配して、悪魔を塵にしていった。でも、悪魔が逃げたのよ。あとは一緒よ、殺して、火事になった」ほとんどを省略した。それは面倒臭いとかではなく、自分でもあれを説明するのは無理だからだ。

「いいよ、質問して」短く言うとマーヴェラが声を出した。

「ベラ、あんたの中に火がいるのね?」

「ええ」

「それならいいわ」安心したみたいだ。「後は何処か痛くない?」

「別にどこも、痛くないけど」どうしてそんなこと聞くのかわからないみたいに答える。

「そう」

「トナは何かある? さっき質問したかったみたいだけど」少しニヤニヤしながら聞く。

「いいえ、何もないわ」静かに言う。

 ベラは冷静なトナに驚いた。こんな話して、叫んで質問攻めにされるのではないかと考えていたからだ。

「まぁ、いいや」

「ねぇお腹すいたでしょ。冷えたもの温めてくるから待ってて」トナが立ち上がりながら言う。

「分かった」

 

 2~3分間の沈黙が続いた。マーヴェラは一切しゃべらない、もう寝てるのではないかと思ったが、違うことは分かっている。

 下からトナの鼻歌がチラチラと聞こえる。

 それは突然聞こえなくなり、トナはベラを呼んだ。

「ちょっと来て、ベラー」

 こんなに早くはできないだろうと思い、あぁまた火か、と呟いた。

「わかった!」

 トナに返事を返すと、マーヴェラに話しかける。

「マーヴェラ、待っててね。まぁ寝ててもいいんだけど」

「いや、起きとくよ。私も連れていってくれるかい?」

 少し意外だった。この部屋からは出ないと思っていたからだ。そう思ってしまったのは、どこかの物語でそういうものがあったからだ。物語とはそんな都合よく一緒じゃないよな、と心で呟いた。

「分かった、行こうか」ぎこちなく笑顔を作る。

 少し自分が嫌になった。

 自分が期待していたことを知ったからだ。

 

「あら、マーヴェラも連れてきたのね。ささっ早く火を付けて」手招きをしながら言う。手にはマッチ箱がグシャグシャになって握られている。今思えば、マッチが悪いのではなく、トナのすりかたが悪いのだ。

「もうマッチ買ってこなくていいよ」ため息混じりに言う。

「よかった、マッチ代が減らせるわ」ベラとは裏腹に元気に言う。

 ため息をはき、手を着火マンのようにし火を着ける。

「じゃあマーヴェラと話してるから」逃げるように部屋の中央にあるテーブの椅子に腰掛けた。本と向き合い、話しかけた。

 それから直ぐに温め終わった。

 食べ終わると同時に激しい眠気に襲われる。おぼつかない足取りで本を片付けるために書斎に行き、マーヴェラにおやすみを言う。そしてまた同じことを約束される。明日も来ること。

 そして直ぐにベットに入った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ