悪魔2
「それじゃ、始めるよ。エンジェル・ルリクルビが持ってた、丸い物を私に投げてきたの。それで逃げたんだけどそれが何か気になって触ろうとしたら、誰かの声が聞こえた、近づくな、って最初は誰だか分からなかった。でも、その声は私の頭のなかで響いてた。その声は私の中に居る、火って言う声だったの」
そのときトナは何か言いかけて止めた。ベラが質問は後だと言ったからと明らかにマーヴェラの舌打ちが聞こえたからだ。
「助けてって言ったら、助けてくれた、私の体を貸す条件で。火事の一件は私のせいだけど私だけのせいじゃない。火は私の体を支配して、悪魔を塵にしていった。でも、悪魔が逃げたのよ。あとは一緒よ、殺して、火事になった」ほとんどを省略した。それは面倒臭いとかではなく、自分でもあれを説明するのは無理だからだ。
「いいよ、質問して」短く言うとマーヴェラが声を出した。
「ベラ、あんたの中に火がいるのね?」
「ええ」
「それならいいわ」安心したみたいだ。「後は何処か痛くない?」
「別にどこも、痛くないけど」どうしてそんなこと聞くのかわからないみたいに答える。
「そう」
「トナは何かある? さっき質問したかったみたいだけど」少しニヤニヤしながら聞く。
「いいえ、何もないわ」静かに言う。
ベラは冷静なトナに驚いた。こんな話して、叫んで質問攻めにされるのではないかと考えていたからだ。
「まぁ、いいや」
「ねぇお腹すいたでしょ。冷えたもの温めてくるから待ってて」トナが立ち上がりながら言う。
「分かった」
2~3分間の沈黙が続いた。マーヴェラは一切しゃべらない、もう寝てるのではないかと思ったが、違うことは分かっている。
下からトナの鼻歌がチラチラと聞こえる。
それは突然聞こえなくなり、トナはベラを呼んだ。
「ちょっと来て、ベラー」
こんなに早くはできないだろうと思い、あぁまた火か、と呟いた。
「わかった!」
トナに返事を返すと、マーヴェラに話しかける。
「マーヴェラ、待っててね。まぁ寝ててもいいんだけど」
「いや、起きとくよ。私も連れていってくれるかい?」
少し意外だった。この部屋からは出ないと思っていたからだ。そう思ってしまったのは、どこかの物語でそういうものがあったからだ。物語とはそんな都合よく一緒じゃないよな、と心で呟いた。
「分かった、行こうか」ぎこちなく笑顔を作る。
少し自分が嫌になった。
自分が期待していたことを知ったからだ。
「あら、マーヴェラも連れてきたのね。ささっ早く火を付けて」手招きをしながら言う。手にはマッチ箱がグシャグシャになって握られている。今思えば、マッチが悪いのではなく、トナのすりかたが悪いのだ。
「もうマッチ買ってこなくていいよ」ため息混じりに言う。
「よかった、マッチ代が減らせるわ」ベラとは裏腹に元気に言う。
ため息をはき、手を着火マンのようにし火を着ける。
「じゃあマーヴェラと話してるから」逃げるように部屋の中央にあるテーブの椅子に腰掛けた。本と向き合い、話しかけた。
それから直ぐに温め終わった。
食べ終わると同時に激しい眠気に襲われる。おぼつかない足取りで本を片付けるために書斎に行き、マーヴェラにおやすみを言う。そしてまた同じことを約束される。明日も来ること。
そして直ぐにベットに入った。