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火水風土  作者: 田中 椿
10/31

能力

 火はベラの体を操り、悪魔の方に向きをかえ、久しぶりに自由になったかのように伸びをすると嬉しそうにニッと笑い、周りを火の海に変えた。木は勢いに負けて倒れた。一番近くにいた悪魔は全て塵になり、綺麗な砂浜を汚くしていった。上の悪魔は火を蛇のようにくねくねと上に登らせて焼き払っていく。火を怖がり町へ逃げ出す悪魔も居たが容赦無く、手で火の丸い玉を作りそれを投げて倒していく。でも2、3匹悪魔が町へ逃げだした。

 それをベラは気がついたが、火は気づいていないようだ、ベラは声が出ないので火に言う事が出来ない。

 ベラは気づいた。

(火は興奮してる、分かりやすい事も見逃してる)と。

(どうしよう! 火は私の声が聞こえない。だから止められない、これじゃ町の人が危ない)

 ベラが考えてる間、火は近くに居るすべての悪魔を殺し終えていた。

「おい、ベラ終ったぞ」満足気に言う。

(あんた、興奮してたから分からなかったでしょ! 町に悪魔が逃げた)

「うそだろ、なんで言わない」

(言えなかったから! 話してないで町に行くよ。走って!)

 町に着くとベラは息をのんだ。町の人は普通にいつも通りに笑い、喋り、買い物をしている。近くに悪魔がいても反応しない。無視しているようには見えない、それにここの人だったら悲鳴を上げて逃げ回っている。

(うそっ! みんな見えて……ないの)ゴクリとつばを飲む。

「そうみたいだな。でも、見えようが見えまいが殺す事に変わりは無い!」

 また嬉しそうにニッと笑う。

 火をを出すと、周りの人が悲鳴を上げた。近くに化け物がいるのに気がつかないくせに、とベラと火は思った。ベラ達には今にも襲おうとしている悪魔達から人々を救っているのだが、人々からはベラがおかしくなった、としか目に映らない。ベラにも感謝されたい気持ちはあるのだが、この町でベラは悪魔として通っている、それを考えると無理だ。思うだけ無駄で価値がない。

 火の方はそんなことを無視して上にいた悪魔と同じ手で殺していく。すると、悪魔の後ろにある家に火が移ってしまった。やっぱり、これは人がうじゃうじゃいると使い勝手が悪いな、と思いながらも、気にせずにどんどん悪魔を殺して、どんどん火事にしていく。殺すにつれ、ベラがある事に気がついた。

(数が増えてる。私が見た限りで逃げた悪魔は2、3匹くらい。まだ見れてない悪魔がいるかもしれないけど、火が殺し終わったのが何分もしないうち、もしかしたらどこからか増えてる? そういえばマーヴェラが言ってたな。教会はこの世界と異界を結ぶ扉って、じゃあ悪魔はそこから増えてるのかも)

 考えている間に火は一番遠いところに最後の一匹が残っている。だが、その近くにはサニーニャがいる。普通なら火事だから逃げるのだが、気づいてないのか鼻歌を歌いながら前へ進む。火はサニーニャを知らない。気にせずに走って悪魔のもとへ行く、サニーニャがベラに気付く。笑顔で手を振っているが、ベラが近づくにつれてサニーニャの目が丸くなっていく。でも、怖がりもせず、手を打つと、

「それマジックでしょ」と能天気に笑い。感心していた。

 それを見計らい悪魔がサニーニャの胸を前から槍で刺した、ちょうど心臓のところだ。

 ベラは絶叫した。でも、声は相変わらずでない。

 サニーニャは痛っ、と軽い反応で、絶叫したのが恥ずかしい。それを見て火は安心してサニーニャを傷つけないように一瞬で悪魔に火をつける、悪魔が苦しそうに悶えている、それに火力が強すぎてかサニーニャが見えなくなった。悪魔が死ぬとサニーニャがいない。見えないうちに逃げたかと思った。

(心臓貫いたのになんでまだ生きてるの? 死んで欲しいというわけじゃないけど、気になるなぁ。まぁ逃げてくれたからいいか)

「まだ、居た」舌打ちをすると一番手っ取り早い火の玉で倒す。その悪魔がいたのはここから然程遠くない、目でも見えるくらいで何故見逃したかわからないほどだ。

 謎が増えるばかりだとベラは思う。

(いくらなんでも不自然すぎるでしょ。どこかへ逃げたとかで人が減ってるのは納得がいく、でもあんなに増えるのか?)

 それを遮り火が、

「体、返すぜ」と言ってきた。

 ベラはホッとした。あんなに楽しそうに戦っていたから返してもらえないかもしれない、と密かに思っていたからだ。ただ服は綺麗ではない。どこで切ったのか切り傷もあり、体中が痛い。少し疲れを取るために座り、休むと、すぐに火事の後始末にまわった。

 やはりここの人が嫌いでも罪の意識からは逃れらられない。人一倍は頑張った。人はベラを恐れて近寄らないので、ベラはそこらじゅうを走り回り、水をまき、燃え移らないように隣の家を壊したり、人が協力してる中全て一人でやった。

 家を壊してる時は酷かった、最終手段だったので、宣言しないで壊したときは罵声を浴びせられ酷い人は石を投げてきた。でも詳し遠くから説明するとみんな納得してくれたようで、自分からやるようになった。そのおかげで教会や自分の家にいかなかった。全て終わると静かに家へ帰っていった。

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