赤ちゃん
ルーアンダの真夜中に、教会がパッと一瞬だけ光った。
教会のドアが開いた、出てきたのは全身を黒で包みフードをかぶった女性で、手には毛布で包まれスヤスヤと眠っている赤ちゃんが居る。
赤ちゃんの首には、ロザリオがかけてある。
女性は、教会の前に赤ちゃんを置き言った。
「ごめんなさい、こうするしかあなたを守れないの、わかってちょうだい」
泣きながら女性は赤ちゃんのおでこにキスをし、ロザリオに
「神よ、この子をお守りください」
と祈り、何か分からない言葉をつぶやく。
そして、教会の中に入って行くとまたパっと一瞬だけ光り、それっきり中から誰も出てこなかった。
赤ちゃんはスヤスヤ眠っている。
それから30分位が経つと日が出て、隣の家から茶色の髪に真っ白いワンピースを着た女性が出てきた。
彼女の名前はトナ・ハウゼス。教会の牧師の娘だ。
きっと教会の周りを掃除しに来たのだろう。
トナは教会の前に何かがあると感じ、赤ちゃんが居るところまで走って行く。
赤ちゃんを見たトナは、驚いて周りをキョロキョロと見渡した。
それでも誰も居ないので、捨てられたんだ、と察し、赤ちゃんを抱いて家に戻って行った。
走った振動で驚いたのか、赤ちゃんは目を覚まし泣いている。
トナは、どうすればいいのか分からず困っている。
すると、泣き声で起きたのか2階から彼女のお母さんとお父さんが降りてきた。
「その子、どうしたの?」
お母さんが心配そうに聞いた。
「教会の前に居たのよ。私、可哀想だったからだって周りに誰も居ないのよ、捨てられたとしか考えられない」彼女は泣きそうな声で答える。
「ひどいことだ。こんなにかわいい子を捨てるなんて」お父さんが赤ちゃんを撫でながら呟いた。
「あなたの言うとおりだわ。この子は、私たちが育てましょう」お母さんは、愛しそうに赤ちゃんを見ながら言った。
その時、その言葉が合言葉かのように、赤ちゃんのロザリオが光った。
みんな驚いて、ロザリオを恐る恐る赤ちゃんの首から外した。
お父さんが原因を調べるためにロザリオを調べ始める。ロザリオの裏には、「ベラ」「4・16」と書いてある。お母さんが「この子の名前は、ベラっていうのね。こっちの数字は、誕生日かしら?」
と呟いた。