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悪役令嬢だと思ったら伝説の悪役になりました~ラスボスはアイテムに入りますか?~  作者: 繭式織羽


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37話 水着回なのよー!

「そんでゆっきーは何でたそがれてんのさ?」


 まだ肌寒いながらも青い空。穏やかに打ち寄せる波。キラキラと陽を反射する海。双子社長が所有するプライベートビーチには、ロケの関係者以外は誰もいない。


 遠く海上で揺れる航路標識らしきものを、魂の抜け出そうな顔で眺めている黒葛(つづら)に、アイドルグループらぶちゅるちゅのここたまが声をかける。


 異世界ミラーではかぐわしい芳香でファンを魅了するドリアードに転生しているが、リアルでは10代の女子中学生だ。


 今は制服ではなく、ギャル系のデニムビキニでチョコ菓子をポリポリ食べている。


「……。……。(様子がおかしいですね。いつも水着撮影の時は凄くテンションが高いのに)」


 セイレーンかりょびーの転生者(プレイヤー)であるスレンダー女子もカラフルなフリンジビキニとラッシュガード姿で頷く。


 常人では聞き取れないぐらいの小声だが、黒葛含め、らぶちゅるちゅメンバーは転生先のスキル効果で聴覚機能が上昇しているのでしっかり聞き取れている。


「ゆー君、お腹痛いの? 忙しいのに、きゅーみーがお友達探してって言ったから疲れてる?」


 吸血鬼きゅーみーの転生者でリアルでは黒葛の姪にあたる小学生、桔梗(ききょう)羽美(うみ)もロリータ風のフリルたっぷりドレス水着で心配そうに顔をのぞき込む。


「……いや、大した事じゃねえよ。きゅーみーの大事なダチなんだろ。全然疲れてねえよ。腹も痛くないからダイジョウブ……ほら見ろ羽美、ブイがどんぶらこってこっちに流れてくるぞー……」


「おもろー、めっちゃ動揺してるじゃん。なになに、何があったー? 吐いたらラクになるぞー?」


 ここたまがチョコ菓子をマイク代わりに差し出すと、水平線を眺めながら黒葛は誘われるように口を開いた。精神的な動揺で、魅了耐性スキルがうまく働いていなかったのかもしれない。


「りゅおってぃが巨乳にプロポーズしてた……」


「ええーっ! マジでマジで!? 巨乳ってシロたんのこと!? えっ、それいつ!? どこで見たの!?」


「……!(あのりゅおってぃさんがついに!)」


「会社のエレベーター前で……」


 途端に、ここたまとかりょびーの興奮が冷めていく。


「いやそれ、絶対違うわ」


「……(そう思います)」


「だって指輪も渡してたんだぞ!?」


「尚更ないって。りゅおってぃだよ? そんなムードもへったくれもない事するわけないよ。いつも好きな子できたら外堀埋めるどころか築城する勢いで貢ぐ溺愛スパダリ化すんのに」


「……。……。……。(いつも愛が重量オーバーの過積載だってすぐフラれてるじゃないですか。不動産とか高級車とか投機目的の有名絵画とか贈るから。帰り道が心配だからって民間警備会社のボディガードを手配した事もありましたっけ)」


「そうそう、そんで相手がその警備員とくっついちゃったりしてフラれてさー」


「え、じゃあオレが見たのは……」


「ただの業務連絡じゃね? りゅおってぃがプロポーズで指輪渡すとなったら、めっちゃ景色のいいデートスポット貸し切って街中の花屋から薔薇買い占めて、そこら中に敷き詰めて片膝ついてやるって」


「……。……。……。(あと絶対指輪ひとつじゃ済まないですよね。外商さんみたいにスーツケース用意して相手に好みのブランドと宝石選ばせるぐらいしますよ。もしくは指輪プラス豪邸の新居とか豪華客船で婚前旅行とか)」


「言われてみれば……ま、まあ、ただの業務連絡じゃないかとオレも薄々思ってたけどな?」


 黒葛の顔色がどんどん明るくなっていく。気のせいか景色もどこか輝いて見える。すでに話がよく分からなくて飽きてしまったきゅーみーは波打ち際で砂のお城を作って遊んでいた。さっき見てたブイも波に揺られてくるくる回りながら入り江近くまで流されてきている。なんて平和的な光景なんだろう。


 心が浄化しかけた黒葛の肩に、ここたまが手を回して、にやりと笑った。


「だけど油断は禁物だぜ、ゆっきーのだんな」


「な、何だよ。なんの油断だよ。別にオレはりゅおっていがプロポーズしたんじゃないかって驚いただけで……」


「それだよ、それ。オレは何とも思ってない風を装ってると本当にりゅおってぃにかっさらわれるって」


「えっ?」


「本人気付いてないかもしんないけど、シロたんのことずっとシロたんって呼んでるじゃん」


「それはお前らもだろ?」


「ウチらはいいんだよ。友だちだし。でもりゅおってぃはシロたんの上司じゃん。会社で部下をあだ名呼びってコンプラ的にアウトになりやすいからって、普段絶対気を付けてるはずなのにさ」


 ここたまに指摘されて黒葛もハッとする。あれだけ普段からコンプラコンプラ言ってる本人が、確かに梛にはどことなく対応が親身過ぎる気がする。


「りゅおってぃが本気になったらどうする?」


「ど、どうするも何も、どうせ愛が重いってドン引きされるのがオチだろ」


「どうかなー。シロたん見た目はエロいけど、ばくおーと一緒の乙女なニオイがするんだよねー。りゅおってぃみたいな漫画に出てきそーな分かりやすいスパダリの押しに弱いんじゃない?」


 ここたまの言葉で黒葛の脳裏には、りゅおってぃと梛がいちゃこらしている姿が次々と浮かび上がってくる。会社でもプライベートでも所構わず人目もはばからず、「シーロたん」「りゅーおりん」等とバカップル丸出しの呼び方をして……!


「大体ゆっきーは諦められんの? あの見事な巨乳を!」


 ここたまがチョコ菓子で指し示す方向には、ちょうどロケバスから着替えとメイクを済ませた福籠(ふくごもり)(なぎ)が出てきていた。


「ぶ……ブラジリアンビキニ……!!」


 恐ろしく布面積の少ない蛇柄セクシービキニの女神が黒葛の前に降臨した!


 バスのステップから降りただけでプルプルと揺れる弾力あふれる大きな胸。日差しを受けて艶々と輝く豊満な丸みが悩める己を優しく受け止め導いてくれる気さえする。


 そして引き締まりながらも肉感的な腰のくびれから、一転してはちきれんばかりにむちむちとした張りのあるお尻は、疲れ切った心を鼓舞するようにきゅっと上を向いて励ましてくれる。


「て、天国か……っ」


 梛の肢体から溢れる問答無用なオーラに昇華されて、黒葛の好感度バーははるか上空まで限界突破した。成層圏まで突き抜けた好感度バーは今度は反転して地上へと急降下していく。


 時速300キロ以上のスピードで獲物を狙うハヤブサの如く、黒葛の好感度バーは梛の巨乳へと突撃した。


 せめてりゅおってぃより先に、オレの好感度よ、巨乳へ届け……!!


 ぺしっ。


「あれっ、何か反射的に叩いちゃったけど、この時期にもう蚊が出てる?」


 黒葛の好感度バーは、梛の平手であっさり霧散した。


 膝から崩れ落ちた黒葛には気付かず、梛は呼ばれてりゅおってぃの元へ行く。


「シロたん、紹介するわ。こっちがむぃまなの代役モデルさんな。グラビアアイドルとしても絶賛活躍中やでー」


「リーマンBLが大好物でっす!」


「俺をヨダレ垂らして見んのやめーや」


 りゅおってぃと一緒にいた眼帯ビキニの女性が笑顔で会釈する。サキュバスむぃまなの代役だけあって、公式スリーサイズ通りの見事なプロポーションだ。


「シロたん、ファンやし知ってると思うけど、リアルでらぶちゅるちゅの撮影する時は、俺ら転生者(プレイヤー)が幻覚スキル使って担当してるメンバーに変化するんや。今回代役をお願いしたのは、ばくおーはともかく俺とむぃまなは男やから、その分負担がかかるっていうのもあるねんけど、特にこういうファッション関係の撮影は、幻覚だけやとデザインの細かいとこのイメージがぶれて別モンになってしまうからやねん。そやから撮影の時は衣装を着なあかんねんけど、いくら幻覚でりゅおってぃになれるいうても、俺が女性水着着て色々はみ出してる格好とかしたらマズいしな。誰も見たないやろ。俺も見たないし……下ネタになってごめんやけど」


「幾ら拙者達の幻覚スキルがカンストしているとは言え、転生者(プレイヤー)の中にはそれを看破するスキルを持つ方もいるでござるからな。異世界に実際のらぶちゅるちゅがいるといえども、リアルでそのイメージを崩してしまってはファンの方々に申し訳ないでござるからなあ」


 いつの間にか航空眼鏡のマッチョ男子がいる。今日は書生姿ではなく鳥打帽に和服用外套の道行(みちゆき)角帯(かくおび)野半纏(のばんてん)といった、何故か鷹狩にでも行くような鷹匠ファッションをしたむぃまなだ。やはり航空眼鏡と衣装の情報過多で顔がよく分からない。


「そういや今までどこにいたん?」


「ばくおー殿の化粧を手伝っていたでござる。化粧係の方々が魅了スキルでのぼせてしまったゆえに」


「またかいな」


 ロケ車の近くで何人ものメイクスタッフが男女問わず赤面してダウンしている。


「恥ずかしがらんかったらスキルも暴走せんねんけどなあ」


「む、無理だよ。こんな格好させられてるのにっ」


 一見してたおやかな女性のように艶やかな体つきをした美青年が大いに恥じらいながらロケ車の陰から姿を現した。


 レザーのブーメランパンツに上半身もレザーの面積少な目なハイネックホルター。大事なところを手で隠しているので逆にエロティシズム漂うアヤシイ感じになってしまっている。


「ばくおー、シロたんを見習え。堂々としてた方がカッコええから」


「し、シロたん撮影今日が初めてなのに、何でそんなに落ち着いてるのぉ?」


 ばくおーに視線を逸らされながら言われて、ふと我に返る梛。


「ああ、確かに大胆なデザインですけど、多分昨日着てたのよりいかがわしくないっていうか」


「何着とったんや……」


 さすがにボンテージファッションとシースルーメイド服を着てましたとは、とても言えない。


 誤魔化すように視線を逸らした先に、キラキラと輝く海が見えた。近くにブイが浮いている。


 やたらと大きなブイが不意に盛り上がり、激しい飛沫を上げながら、それは姿を現した。


「巨大イカっ!?」

更新時間が遅れてしまって申し訳ございませんー!いつもお読み下さって本当に本当にありがとうございます! また一気読みして下さった方もいらっしゃるー!これからもコツコツ頑張りますー!

先日の大きな地震がありましたが、皆様ご無事でしょうか。一日でも早く落ち着いた日々に戻りますようお祈りしております。

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